本日公開!音楽と名演が織りなす至極のハーモニー。映画「マエストロ!」作品レビュー

マエストロ!


音楽映画の金字塔になるべくして生まれた作品


第12回文化庁メディア芸術祭マンガ部門にて優秀賞を受賞、第13回手塚治虫文化賞にもノミネートされた、さそうあきら氏が原作の映画「マエストロ!」
さそうあきら原作といえば、映画化された「神童」などがある。クラッシック音楽をベースに描かれる人間模様は、読むものに目から音を響かせてくれる。

その原作を「毎日かあさん」のヒットも記憶に新しい小林聖太郎監督が映画化したのが映画「マエストロ!」だ。小林聖太郎監督は井筒和幸監督の「ゲロッパ!」や、山下敦弘監督の「リンダリンダリンダ」など、音楽をベースにした作品で助監督として経験を積み重ねてきた人物。

まさに2人の音楽をベースにした作品作りの才能がコラボした作品。そしてさらに、『八日目の蝉』で第35回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した奥寺佐渡子氏が脚本をつとめ、まさしく音楽映画の金字塔になるべくして生まれた作品といっても過言ではないだろう。

若手、大御所、それぞれが織りなす珠玉のハーモニー


本作では、異端な指揮者・天道徹三郎役を西田敏行氏、亡き父の面影を追いかける才能あふれるバイオリニスト・香坂真一役を松坂桃李氏、そして映画初出演となる天才フルート奏者・橘あまね役をミュージシャンのmiwa氏が演じている。

脇を固める役者陣も、嶋田久作、佐藤暁、松重豊、モロ諸岡、濱田マリ、池田鉄洋、村杉蝉之介、小林且弥、大石吾朗、古舘寛治、河合青葉、中村倫也と、それぞれ味のある役者が揃い踏みだ。
まさに若手と大御所、そして名脇役たちが織りなす至極のハーモニーをスクリーンに閉じ込めた作品だ。

物語は、まるで交響曲のように静かに、そして荘厳に。


マエストロ!



物語の詳細は、実際に映画をご覧になっていただきたいと思うが、まず何よりも印象的だったのが、その作品の見事なまでの再現性だ。

漫画原作である場合、どうしても実写化で表現しきれないところがある。今作でもクラッシックオーケストラの奏者や指揮者の動きといった、プロの動きがベースになっているため、役者陣の所作によっては観るものを冷めさせてしまうことも多い。

クラッシック奏者ではないが、筆者もかつては音楽家を目指していた時期がある。そのため、音楽をベースにした映画を観る時はどうしても、そのひとつひとつが気になることも少なくない。
しかし、今作では全ての役者が長期間に渡って演奏の指南を受け、見事なまでに自然な動きを演じきっている。
また、冒頭ではどうしようもない楽団員だった1人1人が、徐々に変わっていく姿は、過度な演出をせずに非常にリアルに表現している。

これほどまでに音楽愛があふれる作品は、久しぶりと言ってもいいかもしれない。

駅のホームでのシーンに感涙


ネタバレになるため、細かい描写は避けるが、筆者が物語の中で一番涙腺が緩んだシーンのひとつがある。
西田敏行氏が演じる天道徹三郎と、大石吾朗氏が演じるヴァイオリニスト・村上伊佐夫が駅のホームで対峙する場面だ。

音楽の道を志していた筆者にとって、あのシーンは特に胸を打った。芸術の世界というものは時に残酷で、周りから見ればあまりに些細なことにしか見えないことも、絶命を選択してしまいたくなるほどの気持ちになることは何度となくある。
才能という大きな壁に直面した時、自分の存在価値はこの世のどこにもないと涙した夜は、音楽のみならず様々な世界でも同じ気持ちを抱いたものがいるだろう。
駅のホームのシーンでは、言葉ではなく響き渡るバイオリンの音、そしてその後に訪れる奇跡に、筆者の心は大きく動かされた。

それぞれの名演が光る最高の音楽物語


今回映画初出演となったmiwa氏。作品を通して感じたのは、この役はまさしく彼女で正解だったということ。感情的にフォルテシモになる松坂桃李氏演じる香坂と対称的に、天真爛漫にふるまうmiwa氏演じる橘あまね。この2つの旋律が、他の役者陣の包まれた時のハーモニーは、まさしく交響曲だ。

作品の随所に流れるクラッシック音楽。そして物語のクライマックスを飾るオーケストラによる演奏、そして俳優陣の名演。そのどれが欠けてもこの作品の響きは変わってしまっただろう。

冒頭からラストまで、気づけば自分の感情が全て映画に持って行かれてしまうこと間違いなしの作品だ。

2015年1月31日、本日より全国ロードショー


冒頭でもお伝えした通り、本日2015年1月31日より映画「マエストロ!」は全国ロードショーとなっている。
もしあなたの心のどこかにポッカリとあいた空間があるのなら、この作品を観て美しい響きを注いで欲しい。

映画「マエストロ!」公式サイト

コンマスとは?映画「マエストロ!」を更に楽しめる「教えて!マエストロ!」

(文・常時系

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