この夏のオモシロ三大海外アニメ映画!

アニメ

■「キネマニア共和国」

2015年夏の映画界は『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』『ターミネーター:新機動/ジェニシス』『ジュラシック・ワールド』など、いつも以上にハリウッド・スペクタクル超大作が勢揃いしていますが、アニメーションも既に『バケモノの子』が文字通りバケモノ的大ヒットを記録。加えて『ポケモン・ザ・ムービーXY』などの定番ファミリーものや『ラブライブ!The School Idol Movie』もファンの底力で大ヒットするなど、なかなかの活況を呈していますが、実はこの夏、洋画アニメーション映画も大健闘しています。

というわけで、今回からこのコーナー・タイトルでいかせていただきます。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.1》

(タイトルの原点がわかるかたは、きっと70~80年代のAM深夜ラジオ好き!?)

妙味なクレイアニメ『ひつじのショーン』

まず、7月4日に公開された『映画ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~』は、『ウォレスとグルミット』シリーズ(85~)などのクレイ(粘土)アニメ制作で知られるアードマン・アニメーションズが製作した同名TVシリーズ(07~)の劇場版。もともと『ウォレスとグルミット』シリーズに出演していた羊のショーンを主役に据えたスピンオフもので、日頃牧場で暮らしているショーンら動物たちが、ふと自由を得ようと町へやってきたことから始まる騒動を描いていきます。

クレイアニメで表現される動物たちのコケテイッシュな動きや豊かな表情など、セル・ルックのアニメでは醸し出せない妙味が子どもだけでなく大人にも好評で、現に公開2日間の観客動員は何と9万人。興行収入も1.1億円を超えるというクリーン・ヒットとなりました(何と『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』『ラブライブ!The School Idol Movie』に続く第3位!)。

ここでは羊をはじめ、すべての動物(何と人間まで!)が言葉にならない音を台詞として発するのも特徴で、いわば字幕いらずの85分。小さい子どもでも安心して見せられるものです。ただし、それゆえに途中の演出的メリハリにもう一工夫あればといった不満も個人的にないわけでもないのですが、おおむね観客には好評。改めてアードマン・アニメの魅力を広く世に知らしめる結果となったようです。

https://www.youtube.com/watch?t=25&v=bqZ7vH_OC10
© 2014 Aardman Animations Limited and Studiocanal S.A.

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–{『インサイド・ヘッド』}–

日本語吹替え版もナイスな『インサイド・ヘッド』

7月18日から公開された『インサイド・ヘッド』は、おなじみディズニー&ピクサーの最新作で、少女ライリーの頭の中の司令部として彼女の思考をつかさどる「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」といった5つの感情キャラが織り成すドタバタ騒動の中から「ヨロコビ」と「カナシミ」に焦点が絞られていき、どちらも人間の感情を形成していく上で欠かせない要素であることを感動的に示唆してくれます。

先ごろ日本映画でもOLの脳内を描いた人気コミック『脳内ポイズンベリー』が実写映画化されたばかりですが、こちらもなかなかのもの(それにしても、これらを見ていると、人間って結局は脳によって動かされるロボットみたいな存在なのかなといった不思議な気分にもさせられます)であるとともに、それを裏づけする豊かな演出や映像技術も讃えられて然るべきものがあります。

私は2D日本語吹替え版で鑑賞しましたが、ディズニー・アニメの3Dは技術的にも丁寧かつダイナミックに楽しめるものが多いので、今回も期待して3D上映している劇場に足を向けてみようと思っています。

日本語吹替え版の竹内結子「ヨロコビ」と大竹しのぶ「カナシミ」のキャスティングも大成功でした。これが声優初挑戦の前者は曇りの一点もない明るい声質がキャラとマッチ。後者は作りに作りこんだ陰鬱な声が、次第に愛しく思えてきます。余談ですが、大竹しのぶはスタジオジブリ制作の『借りぐらしのアリエッティ』(10)や『風立ちぬ』(13)にも出演していますが、個人的には若き日に初めて声をあてた東映動画作品『森は生きている』(80)のヒロイン、アーニャの初々しさが忘れられないものがあり、今回はおよそ35年の月日を経てのベテランの貫禄を思い知らされた気分でもありました。

同時上映の短編『南の島のラブソング』も大いにイケています。まさか火山同士のラブストーリーとは、前代未聞の面白さでした。


©Disney

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–{『ミニオンズ』}–

ナンセンスなドタバタ・ギャグ満載の『ミニオンズ』

7月31日より公開される『ミニオンズ』は、『怪盗グルーの月泥棒』(10)『怪盗グルーのミニオン危機一発』(13)で人気を得た正体不明の生物ミニオンたちが、人類が生まれる前のはるか昔の時代から、最凶最悪のボスを探し求めていくお話。ご存知のとおりミニオンたちの台詞は解読不能の字幕いらずですが、人間側はノーマル発声というあたりは『ひつじのショーン』と異なるところで、この点に関しては『ミニオンズ』のほうがむしろ接しやすいかなとも個人的には思いました。少なくとも今回女性大悪党スカーレット・オーバーキルの声を担当するサンドラ・ブロックはドンピシャリの貫禄。日本語吹替え版は天海祐希ですが、こちらもかなりイけてる感じが濃厚です。

可愛いキャラに似合わず、徹底したナンセンスかつシニカルなドタバタ・ギャグの応酬は『怪盗グルー』シリーズならではの持ち味ですが、今回は何とエリザベス女王まで登場させてオバカ・ギャグに巻き込ませていくあたり、英国王室の懐の深さ(?)を思い知らされます。

私は3D字幕版で鑑賞しましたが、立体視の効果も十分で、ミニオンズたちの愛らしい躍動感なども巧みに表現されてていました。お小遣いに余裕のあるかたは、ぜひとも3Dをお勧めします。


(C) 2015Universal Studios.

それぞれメジャー感を抱きつつ、どこかマニアックなテイストまで併せ持つ3作品。大いに楽しんで見ていただければと思います。

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(文:増當竜也)

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