『一度死んでみた』レビュー:こんな広瀬すずを見たかった!『なつぞら』ファンにも嬉しい作品に!

実はさりげなくも
オールスター映画!

広瀬すず初の本格ドタバタ・ナンセンス(&ヒューマニズムも少しあり)コメディへの挑戦は、結論から先に申せば実に大成功! と言えるでしょう。

髪をピンクにカラーリングしてパンチの利いたデスメタル曲を熱唱する彼女の姿はこれまでお目にかかったことのないハードなものですが、一方では“DEATH DEATH DEATH DEATH”と彼女が熱唱すればするほど、それは“デスデスデスデス”→“ですですですです”とお行儀のよい響きのようにも聞こえてくるのが、本来お嬢様として育てられたヒロインの品の良さを醸し出すと同時に、広瀬すずならではの好もしい個性を堪能できる仕組みにも成り得ています。

20歳を越えての反抗期こじらせ女子っぷりも意外にはまっていて(!?)、特に父親の臭いに過敏に反応しては消臭スプレーをぶっかけるさまは、世のお父さんを一気に悲しい想いにさせてしまうこと必至!?

その消臭スプレーをかけられまくるお父さん役の堤真一のコメディ演技も堂に入ったもので、特に今回は化学オタクぶりを前面に出した飄々とした雰囲気が功を奏しています。

また今回、広瀬すずの相手役が吉沢亮ということで、『なつぞら』ロスに陥って久しかったファンには嬉しいものがあると同時に、そもそも二枚目で影が薄いなどとは思えない彼ですが、ここでは見事なまでに存在感の薄い“ゴースト”そのものを体現してくれています。

実はこの作品、さりげなくオールスター映画で、先に挙げたキャスト陣の他にも霊界への案内人役のリリー・フランキーや妻夫木聡、大友康平、さらには竹中直人や佐藤健、池田エライザ、西野七瀬、志尊淳、古田新太などなど日本映画ファン垂涎の面々が次から次へと登場してきます。

この手のゲスト出演多数のものは時折映画そのものの流れを阻害することも多々ありますが、本作は全編ドタバタ・タッチなので、逆にこうした多彩な顔ぶれの登場はにぎやかな雰囲気を増幅させる結果になっています。

脚本はソフトバンク「白戸家」シリーズの澤本嘉光、監督はKDDI/au「三太郎」シリーズの浜崎慎治と、ともにCMクリエイターによる映画参戦ではありますが、双方ともにパンチの利いたノリノリの勢いで、細かいことなどお構いなしに(しかし脚本などかなり伏線を利かせている!)とにもかくにもかっ飛ばしていく疾走感は、今の時代にも見合ったものとして心地よく波に乗ることができます。

なかなか世知辛い閉塞的状況が続く今日この頃ですが、こういった作品で憂さ晴らし(?)するのも大いにありではないでしょうか?
(少なくともこちらは久々にストレス解消できました!)

そして広瀬すずには、これからも定期的にコメディエンヌとしての個性を発揮していただきたいものです。

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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