アンソニー・ホプキンスのファン感涙必至!文句なしに感動の『ブレイン・ゲーム』!

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アンソニー・ホプキンスといえば、もちろん『羊たちの沈黙』(91)『ハンニバル』(01)『レッド・ドラゴン』(02)のハンニバル・レクター博士役があまりにも有名な名優中の名優ではありますが、そのインパクトが強すぎてどうしてもサイコパスなイメージで彼を捉えてしまう映画ファンも多いかとは思われます。

が、よくよく彼のキャリアを振り返ると、慈愛深いヒューマニックな役柄からジェントルマンまで多彩な顔を持つ真の名優であることに気づかされます。

そして今回ご紹介する『ブレイン・ゲーム』もまた……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街336》

アンソニー・ホプキンスのファンなら感涙すること必至のヒューマニズムあふれるダーク・ファンタジック・サスペンス映画なのでした!

予知能力を持つ
博士と犯罪者の頭脳戦!

『ブレイン・ゲーム』のストーリーは、まず不可思議なダイイングメッセージが残された残虐連続猟奇殺人事件の捜査に行き詰ったFBI特別捜査官ジョー(ジェフリー・ディーン・モーガン)とその相棒キャサリン(アビー・コーニッシュ)が、引退した元同僚のアナリスト兼医師のジョン・クランシー博士(アンソニー・ホプキンス)に助勢を求めます。

このクランシー博士、触った対象者の未来を読み解く特殊能力を持っているのですが、愛娘の死をきっかけに隠遁生活を送っていましたが、今回の事件の特殊性を察知して調査を開始します。

その特殊性とは、博士同様、いや彼以上の予知能力を持つ男が犯人ではないかということで、やがてひとりの容疑者チャールズ・アンブローズ(コリン・ファレル)を追跡することになっていきますが、予知能力を持つチャールズも当然クランシー博士たちの行動を察知していて……。

本作は予知能力を持つ者同士の息詰まる頭脳戦をクライマックスに置きながら、未来を察知できることの哀しみや苦悩などマイナスの部分にスポットをあてながら、人間の心の闇を時に神々しいまでの崇高で静謐な趣で描きあげた秀作です。

もともとショーン・ベイリー&テッド・グリフィンが記した脚本は、実は設定を変えて『セブン』の続編として動いていた時期もあったとのことですが、その企画は頓挫し、その後たまたまこの脚本を読んだアンソニー・ホプキンスが惚れ込み、自ら製作総指揮を買って出てオリジナルのスタイルで企画を蘇らせたという、数奇な運命を経て成立した作品でもあります。

監督は『トゥー・ラビッツ』(12)で注目されたブラジル出身のアフォンソ・ポイアルチ。ちなみに現在、本作の後に撮ったブラジルの格闘家ジョゼ・アルドの人生を描いた『世界よりも強く』がNetflixで配信中です。

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アンソニー・ホプキンスの
演技者としての集大成か?

ここでのアンソニー・ホプキンスは、同じ博士でもレクターとは似て非ざるジョン・クランシーの人生の哀しみを巧みに醸し出しながらヒューマニズムとサスペンスを両立させたエンタテインメントとしての主人公像を見事に確立させています。

まず、彼のスリラー演技といえば『羊たちの沈黙』に始まるレクター博士シリーズ以前に、死んだ愛娘の蘇りを信じる男を演じたロバート・ワイズ監督のオカルト・サスペンス法廷映画『オードリー・ローズ』(77)があります。

続くリチャード・アッテンボロー監督の『マジック』(78)はひとりの女性をめぐって腹話術師と腹話術の人形、ふたつの人格が争うという、おぞましくも悲しい愛の末路を描いた知る人ぞ知る傑作で、そこには『雨の午後の降霊祭』など英国スリラー映画の個性派俳優から監督に転身したリチャード・アッテンボローのジャンル映画へのオマージュが大いに感じられますが、一方でアッテンボローはそんな自身の代弁者としてアンソニー・ホプキンスを見出したのではないか? そう思える節がこの前後の作品からもさりげなくも見え隠れしているのです。

『遠すぎた橋』(77)では戦場にタキシードを持っていく英国軍人フロスト中佐役を通して、良くも悪くもそれが英国紳士なのだと訴えているようでした。

『チャーリー』(92)では喜劇王チャールズ・チャップリンに取材するインタビュアー役で、それは即ちアッテンボローそのものの立ち位置でもあります。

そして私自身アッテンボローの最高傑作と信じて疑わない『永遠の愛に生きて』(93)では、後に映画化もされたファンタジーの名作『ナルニア国ものがたり』を記したC・S・ルイスに扮し、信仰に生き、それゆえのファンタジーを紡いできた初老の男が、初めて真実の愛を知るという感動作でした。

少し横道にそれ気味ですが、要はこのC・S・ルイスと『ブレイン・ゲーム』のジョン・クランシー博士にはどこか似た要素を感じさせてならないのです。

さらにホプキンスは両作の間に、敬虔であるがゆえに悪魔に取り憑かれてしまう神父を『ザ・ライト エクソシストの真実』(11)で演じ、信仰の闇をも体現。

こういったキャリアに加えて若き日は『八点鐘が鳴るとき』(71)などのサスペンス・アクションや、『エレファントマン』(80)を見つけて研究する外科医、テレビ映画『ヒトラー最期の日』(81)や『ケロッグ博士』(94)『ニクソン』(95)『サバイビング・ピカソ』(96)『ヒッチコック』(12)などの本物さながらの演技を披露したかと思えば、一転して『地上最速のインディアン』(05)では1000cc以下のオートバイの地上最速記録保持者となった粋なバイク親父バート・マンローを好演。かと思うと『日の名残り』(93)では女主人への愛を抑えながらストイックに尽くし続ける執事を演じるなど、役者として実に多彩な役柄を演じてきています。

さすがに最近の『マイティ・ソー』シリーズ(11・13・17~)や『トランスフォーマー/最後の騎士王』(17)などは貫禄を乞われての出演といった感はありますが、それだけに今回の『ブレイン・ゲーム』には彼の並々ならぬ意欲がうかがえるのでした。

さほど大きくはなく、むしろ地味な作品ではありますが、それゆえにアンソニー・ホプキンスの映画をずっと見続けてきた側としては、やはり彼のファンで良かったと改めて思わせ、感涙&感泣させてくれるものがあるのでした。

ある意味、アンソニー・ホプキンスの集大成的な作品ともいえるかもしれません。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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