『サマーウォーズ』の素晴らしさ徹底解説!ポイントは“責任”と“肯定”

©2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

本日8月18日(金)、大ヒットを遂げた『サマーウォーズ』が地上波放送されます。本作がなぜこれほどの支持を集め、多くの方の感動を呼んだのか。その理由を分析し、以下に記していきます。

※以下は『サマーウォーズ』本編のネタバレに触れています。まだ映画を観ていないという方は、鑑賞後に読むことをおすすめします。

1:田舎の親戚たちを描いた理由はこれだ!アニメでありながら“実在感”がある!

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細田守監督が、本作で田舎の親戚一同を物語の中心に置いたのは、“結婚”がきっかけだったのだそうです。自身は親戚を呼ばずに地味な結婚式をしていたのですが、その後に妻の実家に食事に呼ばれると、そこには親戚一同が集まっていて、半ばサプライズのような形で“披露宴”が行われたのだとか。

この時の細田監督の驚きと戸惑いと(嬉しさ)は、主人公の健二がヒロインの夏希に連れてこられて、いきなりたくさんの家族に囲まれた時の心情とシンクロしています。いわば、健二は細守監督自身でもあるんですね。

その実体験を踏まえたからでこそ、序盤の大家族に囲まれての食事風景や、“親戚”というコミュニティにいきなり放り込まれてしまった健二の心情をリアルに描けたのでしょう。

しかもキャラクターの表情は喜怒哀楽がコロコロと変わり、日常的なちょっとしたしぐさまでも“再現”し、たくさんの親戚たちの個性も豊かです。

現実にあり得ない出来事だって描けてしまうアニメーションという手法でありながら、そのような“実在感”があるというのも『サマーウォーズ』の大きな魅力と言っていいでしょう。

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なお、映画の舞台の長野県上田市には、実際に細田守監督の妻の実家があるそうです。“伊勢山”というバス停は実在していますし、駅弁もほぼ現実そのままの見た目で描かれたのだとか。朝日が登る美しい風景も、実際の写真を元に描かれていました。

上田市に訪れて、映画と同じ風景を探してみるのも楽しいかもしれませんね。

2:“特別でない人の特別なところ”を肯定してくれる物語だった

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細田監督が田舎の家族を描いた理由は他にもあります。それは「普通の人でも世界を救えるのではないか」、「いちばん普通っぽいのは田舎の親戚(家族)ではないか?」という考えによるものだったのだとか。

ヒーローと呼ばれる者が世界を救ったり、問題を解決するのはある意味で当たり前で驚きがない。そうした特別じゃない、普通で身近な人の“特別でない人の特別なところ”が好きであるから、田舎の家族の人々が世界を救う物語にしようと思った、と細田守監督は語っているのです。

本編を観れば言うまでもなく、陣内家は普通の人ばかりです。だけど、格闘ゲームの世界チャンピオンであったり、陸上自衛隊に所属していたり、漁港で働いているといった、その“普通の人”の“特別”こそが大いに役に立ち、世界を救うのですから。

『サマーウォーズ』で紡がれているのは、そうして人を最大限に“肯定”してくれる物語なのです。

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本作の気持ちよさ、爽やかさ、カッコよさは、ここに理由があるのでしょう。

普通の人でも、自身の“特別”な力を使って、家族のように一丸となって戦えば、世界を救うヒーローになれる……絵空事のようでもあるけれど、それは世界中のあらゆる問題や出来事にも、当てはまることなのかもしれません。

3:“アナログ”と“デジタル”両方の良さを描いていた

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バーチャル空間での戦いを描きながら、ネットやコンピューターがない時代の“アナログ”な世代のコミュニケーションにもリスペクトを捧げていることも大好きでした。

栄(さかえ)おばあちゃんは元教師であり、そのために幅広い人脈を持っており、電話で「これはあんたにしかできない」「あんたならできる」といろいろな人を励ましたことが、世界を救う一助になりました。

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13歳のカズマは格闘ゲームのおかげで世界中にファンを持っており、そのこともまた世界を救う大きなきっかけになります。カズマはぶっきらぼうで愛想のないようにも見えましたが、ネット世代のカリスマ(コミュニケーション)という強力な武器を持っているのです。

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しかも、ラストの戦いで使われたのは、ネット世代の格闘ゲームでなく、“花札”という、栄おばあちゃんも遊んでいたものでした。『サマーウォーズ』で描かれたのは、ネット世代とアナログ世界が融合した戦いでもあるのですね。

4:責任の所在を問う物語だった

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『サマーウォーズ』で迫りくる危機が、すべてが外的から来た問題ではなく、“身から出たサビ”のようなところがあるのも重要です。

夏希が健二の素性を偽ってまで田舎に連れてこさせたこと、健二が送られてきた暗号を解いてしまったこと、侘助おじさんが栄おばあちゃんの資産を持ち逃げして人工知能を作り上げたこと、それこそが世界の危機の発端になっているのですから。

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しかも、侘助は自身が人工知能を作り上げたことを「俺は作っただけだ」と悪びれもせず、「(持ち逃げした)金のおかげで独自開発ができたよ」と言ったことで、薙刀を突きつけられるほど栄を怒らせてしまいます。侘助は、この時は完全に“責任逃れ”をしているのです。

しかし、栄おばあちゃんの死を聞いた侘助は……それが仮想空間OZの混乱、ひいては自分の作った人工知能のせいである、とやっと責任を感じたのでしょう。クルマをボロボロにぶつけるという“自分の身を顧みない”ことをしてまで、陣内家に戻ってきて、そして戦うのですから。

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思えば、細田守監督作品において、この“責任”というテーマは一貫しています。『時をかける少女』では主人公があまりに自分本意にタイムリープの力を使ったこと、『おおかみこどもの雨と雪』では2人の子どもを育てる母親、『バケモノの子』では父親という形で……そうした“責任”を負った登場人物が、自らの力で、問題に立ち向かうのです。

いわゆる“セカイ系”(主人公たちの周囲だけで世界を救う物語)と称される作品は、主人公の今までの生活やたちとは関係のない、外的な要因が物語の発端になることもままあります。

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しかし、『サマーウォーズ』を初めとした細田守監督の作品には、世界を揺るがすほどの問題に、必ずと言っていいほどに“内的”な要因がある……“自分との戦い”だからでこそ、登場人物が真剣に問題に取り組む姿を応援でき、そして感動できるのではないでしょうか。

5:細田守監督が描き続けているのは“家族の関係性”だった

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細田守監督が『サマーウォーズ』で田舎にいる普通の人々を描いたのは、前述した通り自身の結婚がきっかけでした。実は、続く2作もまた細田守監督の(周りの)“家族の環境の変化”が、着想の大元になっていています。

『おおかみこどもと雨と雪』では、周りで子どもができた夫婦が増えてきて、母親というものがカッコよく見えてきたから、母親の役割を通した女性の物語を作りたくなった、と細田監督は語っていました。

そこには、自身になかなか子どもができなかったことからの子育てへのあこがれや、自身の母が亡くなってしまい「自分がどれだけ母の幸せに貢献できたか」という切羽詰まった気持ちもあったのだそうです。

『バケモノの子』では、細田監督自身に息子が生まれたことから、子どもがたくさんの人から影響を受けて成長していく様を、映画を通して考えていきたい、という想いがあったのだそうです。

この映画に出てくる“熊徹”というキャラはちょっと“ダメな父親”なですが、そんな彼の近くに子どもを大切に想ってくれる“悪友”がいるというのも、細田監督からの「こういう家族の形があってもいいんじゃないか」という提言のようにも思えてきます。

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つまり『サマーウォーズ』以降、細田監督は、親戚、母と子、父と子と……自身の経験や、「まだできていないけど、これからしてみたいこと」を通した、“家族の関係性”を描き続けているのです。どの作品でも、家族という大切な人への想いが見え、現実で生きるためのヒントがもらえるということも、細田作品の素晴らしいところです。

なお、2018年5月に完成予定であり、同年夏の公開を目標にしている細田監督の最新作は、自身の2人の子どもを見てきたことに着想を得た、“きょうだい”をテーマにした作品になるのだとか。またしても、細田監督の“家族の(一員の)素晴らしさを描く”という作家性がありありと表れた作品になりそうですね。

おまけ:細田守監督も絶賛!『サマーウォーズ』ファンにおすすめの2つのアニメ映画はこれだ!

最後に、『サマーウォーズ』が好きな人におすすめしたい、細田守監督も絶賛した2つのアニメ映画を紹介します。

1:『銀河鉄道の夜』

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宮沢賢治の童話のアニメ映画化作品です。幻想的な情景が静かに、そして美しく描かれている名作で、細田守監督は「一瞬も気が緩まないほどの緊張感がある」、「ネコの登場人物が何を考えているのかを考えさせてくれる」などと、その魅力を語っていました。

筆者は子どものころ、アニメはただただ“楽しい”ものだと思っていたのですが、この『銀河鉄道の夜』は違いました。じっとりとした“不安”をかき立てる描写は本当に恐ろしく、観終わった時の複雑な感情は今でもはっきりと覚えています。良い意味で淡々とエピソードが展開していき、じわじわと孤独感や寂しさが浮き上がってくる……他のアニメ映画にはない魅力に満ち満ちているのは間違いありません。ぜひ一度、観てほしいです。

2:『ユンカース・カム・ヒア』

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どこにでもいそうな小学6年生の女の子と、しゃべる犬のユンカースがほのぼのとした日常を過ごすという内容です(しかし、その日常を脅かす、女の子にとっては深刻な問題も浮上します)。

細田守監督は、アニメーションの面白さの1つを「この人は生きているに違いない!」と思った時だと語っており、この『ユンカース・カム・ヒア』については「アニメという手段でひとりの女の子の“実在感”を実写作品以上に強く浮き上がらせた!」と絶賛していました。アニメでありながら、キャラクターの表情や“しぐさ”にこだわったおかげで実在感があるというのは、細田作品にも共通していますね。

個人的にも、“お母さんがソファで手をのばす”や、“女の子がテニスのラケットを手にひらに立てて、倒れないようにバランスを取る”といった何気ない動作に、「アニメなのに、確かにこのキャラは生きている!」という実在感を得ることができました。アニメでしかできない演出も素晴らしく、クライマックスのとある展開には涙腺が決壊しました。もっと多くの方に知られてほしい傑作です。

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(文:ヒナタカ)

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