『スウィート17モンスター』が30代の私に教えた3つのこと

ゴールデングローブ賞にノミネートされ、欧米の映画批評No.1サイト「ロッテントマト」で絶賛されている『スウィート17モンスター』が、とうとう日本の映画館にも到着しました。
スウィート17モンスター 場面写真

(C) MMXVI STX Productions, LLC. All Rights Reserved.

大人たちも100%共感できると言われている映画ですが、すべての人がこの映画を楽しめると言ったら嘘になります。

というのは、イケてる思春期を過ごした人は(もしそのような人がいるとしたら)、『スウィート17モンスター』の主人公ネイディーンの悲喜劇に対して、笑うことも感動することもできないでしょう。逆に、今でも中高時代の自分が恥ずかしくてしかたない人はこの傑作を見逃してはいけません!

ストーリー
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17歳の少女・ネイディーンは、学校人気者の兄・ダリアンと常に彼の味方である母を嫌い、彼氏もなければ、友だちもほとんどいない、まったくイケてない少女。

そんなネイディーンは、たった一人の親友クリスタと天敵の兄が恋に落ちたことを知り、自ら命を絶ちたくなるほどショックを受け、絶望のピークを迎えます。しかし、その衝撃をきっかけにネイディーンの人生に大きな変化が訪れるのです…

思春期が人生で最高の時期って、ただの妄想!

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歳を取ってから中高時代を思い出してみると、思春期が人生で最高の時期だと思う人が少なからずいると思います。しかし、ほとんどの場合、それはメランコリーから来るただの妄想なのです。

客観的に見ると、思春期は誰にとっても苦しむ時期でしょう。『スウィート17モンスター』はそういう観点を提供するからこそ共感率が高い作品といえます。

友だちを作りたいけど、なかなかうまくいかない。好きな人に告白したいけど、その勇気はもっていない。やっとのこと告白ができたら、死ぬほど恥ずかしくてたちが悪い。初体験はきっと素敵だろうと思ったら、実は頭から消したいほど最悪の記憶になる。

思春期は、身体も精神も激しく変化している時期だけあって、常に新たな困難に直面しないといけないのです。その意味では、『スウィート17モンスター』は「思春期って最高の時期だな」と思わせるのではなく、「思春期が終わってよかった」と思い出させるストレートな作品です。

自分の最強の敵は自分自身です!

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『スウィート17モンスター』を観たら、悪役の不在に気づかない人はいないでしょう。ネイディーンのまわりには悪い人物が誰一人もいないのです。

彼女が嫌悪する兄も母も、それぞれの問題を抱えているものの八つ当たりはしません。ネイディーンの友情を裏切ったクリスタもダリアンと恋に落ちたことについて必要以上に謝ります。最初はネイディーンをからかう教師ブルーナーも、文句を言いつつも彼女の悩みに耳を傾け、自分の家に入れるまでネイディーンに力を貸します。

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嫌な人物といったら、実はネイディーンしかいないのです。彼女に興味を示している少年に対しても、クリスタに対しても、そして兄と母に対しても、ネイディーンは利己的な態度を隠しませんし、彼女の発言は相手の気持ちを考えたものとはとても言えません。

物語が進行するにつれてネイディーン自身もその事実に気づきます。つまり、被害者意識が強い人物の殻から抜き出すために、ネイディーンは自分の天敵が兄でもなく、母でもなく、自分自身だったことに悟る必要があるのです。

勝ち組の人が悩まないのではなく、悩みを上手に隠しているだけ

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最初はイケてる思春期を過ごした人は、『スウィート17モンスター』を楽しめないと書きましたが、一体このような人が存在するのでしょうか? たとえ、イケメン・イケジョで学校の人気者だった人も、どこかに悩みを潜んでいたのではないでしょうか?

『スウィート17モンスター』は、悩む人と悩まない人という対照的な描き方から逸脱し、自らの苦痛を隠すことができるかどうかによって、勝ち組と負け組の相違を際立たせる作品です。

大人になってから『スウィート17モンスター』を観てよかった!

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もし17歳の私が『スウィート17モンスター』を観たとしたら、どんな気持ちになっていたのでしょうか? 主人公ともちろん共感できていただろうけど、あまりにも近すぎて当時の絶望から私を救ってくれたのでしょうか?

逆に30代になってから観たほうがよかったかもしれません。筆者のように、自分だけが不幸だと、世界の終わりにいるような気分になってしまいがちの大人なら、思春期から抜け出た今こそ、距離を保ちつつ17歳のネイディーンの人生から学べるのではないかと思います。

(文:グアリーニ・ レティツィア)

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    ライタープロフィール

    グアリーニ・ レティツィア

    グアリーニ・ レティツィア

    南イタリアのバジリカータ州出身。大学院で日本現代文学を研究しながらライターとして活躍しています。中学生の時から小説を読むことと映画(特にインディーズ・ムービー)を見ることが好きで、誰もがそうではないことを知った時のショックは一生忘れません。最近ドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ダウントン・アビー』にはまっています。

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