『ザ・タワー 超高層ビル大火災』、『愛の不時着』のソン・イェジンらが火災と闘う「3つ」の魅力!

第21回:『ザ・タワー 超高層ビル大火災

今回ご紹介するのは、連日続く酷暑の中で観ると更に臨場感が増す、2013年日本公開の韓国製パニック映画『ザ・タワー 超高層ビル大火災』です。

ソウルに建設された地上108階建ての超高層ビルが、設計上のミスと思わぬアクシデントにより大規模な火災に包まれるという、あの名作『タワーリング・インフェルノ』を思わせる内容に加え、『愛の不時着』のソン・イェジンを始めとする豪華キャスト陣の共演も話題となった本作。

気になるその内容と出来は、果たしてどのようなものなのでしょうか?

ストーリー

ソウルに建設された、地上108階建ての超高層複合ビル”タワースカイ”。クリスマスイブをここで迎えようとする大勢の客をもてなすため、フードモール・マネージャーのユニ(ソン・イェジン)は準備を進めていたが、思わぬ厨房のボヤ発生で発覚した、不十分なビルの換気設備に不安を抱く。
施設管理チーフのデホ(キム・サンギョン)とイブを過ごすためにやって来た一人娘ハナ(チョ・ミナ)は、シングルファーザーのデホがユニに恋していると知り、急務に追われる父の代わりにユニに遊び相手になってもらう。
タワースカイのオーナーであるチョ会長(チャ・インピョ)は、タワー周囲を旋回する10機のヘリコプターから粉雪を降らせる演出を、周囲の反対を押し切って敢行するが、上昇気流にあおられた1機がビルに激突! 爆発炎上を起こしたことで、タワースカイは一瞬にして火炎地獄へと変貌してしまう。
“伝説の消防士”と呼ばれる汝矣島署のカン・ヨンギ隊長(ソル・ギョング)と新人消防士ソヌ(ト・ジハン)は、署長(アン・ソンギ)と共に地獄と化したタワースカイへと向かうのだが…。

見どころ1:豪華キャストの中には、意外なあの人も!

映画の冒頭でビル内のマンション入居者に説明される通り、A棟とB棟の二つのビルによって構成され、1700世帯、約5700名が居住する地上108階建ての韓国最大の住商複合ビル、それが本作の舞台となる超高層ビル”タワースカイ”です。

突然の事故で炎に包まれた”タワースカイ”のA棟内に取り残された人々と、命を賭けて消火・救助に向かう消防隊が繰り広げる人間ドラマが描かれるだけに、『シルミド』のソル・ギョング、『愛の不時着』のソン・イェジン、更に『ディヴァイン・フューリー/使者』のアン・ソンギを始めとする実力派キャストの共演は、本作成功の大きな要因となっています。

更に、デホの娘ハナ役のチョ・ミナや、エレベーターの中でプロポーズしようとした瞬間、火災のために恋人と中に閉じ込められてしまう和食部門のシェフを演じるキム・ソンオの存在など、脇役たちの素晴らしい演技もドラマの展開を盛り上げてくれるのです。

中でも注目なのは、以前ご紹介した『シークレット・ジョブ』でも触れたように、キム・ソンオが本来得意とするコメディ演技が存分に楽しめる点でしょう。

特に、調理場でボヤ騒ぎを起こしてしまうシーンでの騒ぎっぷりは必見! 緊張感溢れる場面に絶妙のタイミングで登場して、場の空気を笑いに変えてくれるのです。

加えて、エレベーター内に閉じ込められた二人を助けようとする人物の設定には、極限状態で自分よりも他者の命を救おうとする、人間の善の部分が見事に描かれていると感じた、この『ザ・タワー 超高層ビル大火災』。

この他にも、タワーの中でクリスマスを祝おうとしていた宗教団体の描写など、極限状況に置かれた人々のドラマに笑いやユーモアを忘れない演出が素晴らしい作品なので、ぜひご鑑賞頂ければと思います。

見どころ2:生存者と消防隊の濃密な人間ドラマ!

クリスマスイブに行われる”タワースカイ”のオープン記念セレモニーで、ビルのオーナーであるチョ会長が用意したクリスマスならではのイベントが、ある突発的な事故によって大火災を招いてしまう本作。

火災の発生後は、ラストまで緊張感とサスペンスが途切れない展開が用意されているのですが、序盤の30分で登場人物たちの日常や背景が丹念に描かれることで、その後のサバイバルドラマに観客が感情移入しやすくなる点も、実に上手いのです。

例えば、シングルファーザーであるデホと娘のハナの親子愛や、デホとユニの恋の行方、更には清掃員の女性と息子とのドラマや高齢のカップルの存在など、多彩な生存者たちの濃密な人間ドラマが、救助活動に当たる消防士たちの行動と平行して描かれることで、観客も彼らと一緒に災害現場にいる気分になれるのは見事!

加えて、警備員が子供や女性を押しのけて先にエレベーターに乗り込んだり、火元である63階付近の人々を優先して救助しようとする消防署長に対して、指令本部に到着した消防局長が、最上階の住人や国会議員を優先的に救助するように命じるなど、前述した人間の”善”の部分とは真逆に、緊急事態の人命救助に格差が存在するという残酷な現実を突きつける点も、荒唐無稽なストーリーに説得力を与えてくれているのです。

上層階の生存者は、70階で二つのビルを繋いでいる連絡通路からB棟の屋上に誘導、50階以下の人々は階段を通じて救助を行うことになるのですが、ビルのオーナーであるチョ会長が、周囲の反対を押し切って独断で防火シャッターを下ろしてしまったため、ユニやハナたちが避難している65階のレストラン街は完全に外界から孤立してしまうことに!

負傷者や妊婦のいる65階の生存者を、どうやって救出し無事に避難させるのか?

生きるために必至の努力を続ける人々の行動に、思わず声援を送りたくなるその展開は、ぜひ本編でご確認を!

見どころ3:実は、敵は大火災だけじゃなかった!

注:以下は若干のネタバレを含みます。鑑賞後にお読み頂くか、本編を未見の方はご注意の上でお読み下さい。

オープン前日から非常灯やモニターが故障するなど、不穏な空気を高める描写が序盤から登場する本作ですが、60階から上の水道の配管をビルの外壁に沿わせて配置した関係で配管内の水が凍り付き、60~80階のスプリンクラーが作動しないことがイベント直前に判明するなど、後の被害拡大を予見させる不安要素が次々と明らかになっていきます。

加えて配電盤がショートしたり、小さな火災が徐々に燃え広がって大火災に発展する! という過去の類似作品のような展開ではなく、ヘリコプターがビルに衝突しパーティー会場が一気に地獄と化す! というスピーディな展開も、パニックと危機感を高める上で実に効果的と言えるのです。

超高層ビル火災を描いた作品では、どうやってこの火災を消すか? その方法が最大の見せ場となるのですが、残念ながら屋上にある貯水タンクを爆破して大量の水で消火する! という方法が多くなってしまうのも事実。

確かに、本作でも貯水タンク爆破が登場するのですが、ここにも独自のアレンジが用意されている上に、火災が鎮火してからも次々に生存者を危機が襲う展開が用意されているのは見事!

ビルを包み込む大火災だけでなく、炎の熱で膨張・変形した鉄骨によって壁や天井が崩落するなど、超高層ビルそのものが生存者に向かって牙をむくという、観客の予想の更に上をいく迫力満点の見せ場が用意されているのです。

そう、実はこの『ザ・タワー 超高層ビル大火災』最大の見どころとは、前半の一時間で大火災によるパニックを、後半は崩れ落ちるビルからの脱出を描くという、サービス満点の展開にあります。

例えば、物語の舞台となるタワースカイは、A棟とB棟二つの高層ビルが70階の連絡通路で繋がっているという構造になっているため、事故によって火災が発生したA棟から、ガラス貼りの連絡通路を通ってB棟へ移動しようとする人々を襲う危機の連続は必見!

更に、このままA棟が燃え続ければB棟に倒れ掛かって、最終的に二つのビル全体が倒壊するとの予測を専門家が立てたことで、A棟のビルを強制倒壊させて被害を最小限に防ぐ方法が決定されることに。

これ以上の犠牲を防ぐため、65階に生存者が残っているにも関わらずビルを爆破しようとする指令本部と、倒壊するまでの時間を引き伸ばし、その間に外部への脱出を図ろうとする消防隊の隊員たち。

65階の生存者救出に向かった消防隊を中に残したまま、ビル爆破のための準備は着々と進んでいくのですが、果たしてこの絶望的な状況から脱出する方法はあるのか?

ここから更に二転三転する見事な展開は、ぜひご自分で体験して頂ければと思います。

最後に

本家の『タワーリング・インフェルノ』と同様、次々に襲いかかる火災や大惨事の中で必死に脱出への道を探す生存者の姿や、命を賭けて火災を食い止めようとする消防士たちの勇気ある行動など、まさに第一級のサバイバルドラマが展開する、この『ザ・タワー 超高層ビル大火災』。

中でも、影の主役である高層ビルをツインタワーに設定したアイディアは素晴らしく、上下に逃げることの多かった従来の高層ビル火災映画に対して、横への移動という選択肢や方向性を示した点は見事!

加えて、火災発生の原因を手抜き工事や配線のショートといったビル内の出来事に限定せず、突発的な上昇気流による事故との二段構えにしている点も、人々が逃げる間もなく事故に巻き込まれるスピーディな展開を実現させているのです。

しかし、多くの方がレビューや感想で指摘されている通り、事故の原因となったイベントを無理やり決行したり、自己判断で防火シャッターを下ろして生存者を孤立させてしまったチョ会長が、いつのまにかビルを脱出して外の指令本部にいる! という描写には、正直かなりの驚きを感じたのも事実。

せめてこの事故を教訓に人間として成長したり、社会から責任を追及されるという展開が用意されていれば、そう思わずにはいられませんでした。

とはいえ、生存者の前に次々と立ちはだかる危機的状況や、離ればなれになってしまった親子の運命、更に炎が消えてから本格的に襲ってくる危機の連続など、すでに繰り返し製作されてきたこの”超高層ビル火災パニック”というジャンルに、新たなアイディアや見せ場を盛り込もうとした努力は、一見の価値あり!

酷暑の中で観ると更に臨場感が増す作品なので、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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