スクリーンで花開く芸人魂!演技で魅せた意外な才能たち―笑いのプロが魅せる“本気の芝居”3選

金曜映画ナビ

芸人がスクリーンで真価を発揮する時、そこには“笑い”だけでなく、“人間”が浮かび上がる。

近年、バラエティ番組や舞台で活躍するお笑い芸人たちが、映画の世界でも確かな存在感を放ち、観客の心を動かすケースが増えている。

笑いのセンス、間合い、表情の巧みさ――それらは俳優としての武器となり、時にプロの俳優をも凌ぐほどの説得力を持つ。

今回の「金曜映画ナビ」では、“演技が光るお笑い芸人”に焦点を当て、3本の映画を紹介。

笑わせてきた彼らが、なぜ私たちを泣かせるのか。

観る者の胸を打つ、彼らの“芝居力”を堪能してほしい。


『岸和田少年愚連隊』(1996年)

(C)1996 松竹株式会社・吉本興業株式会社

出演:ナインティナイン(矢部浩之・岡村隆史)

井筒和幸監督が、お笑いコンビ・ナインティナインを主演に抜擢した青春不良映画の金字塔。

舞台は1970年代の大阪・岸和田。

ケンカに明け暮れる中学生チュンバ(矢部浩之)と小鉄(岡村隆史)が、家族や仲間との日々の中で揺れ動きながらも、大人へと向かっていく様子を描いた青春グラフィティだ。

(C)1996 松竹株式会社・吉本興業株式会社

当時、テレビでブレイク直後だったナイナイが映画初主演ながらも、その存在感は圧巻。

矢部はクールで情に厚い不良少年を熱演し、岡村は小柄ながらも怒りと哀しみを抱える小鉄を、持ち前の身体能力と表情でコミカルかつリアルに演じている。

「笑い」と「ヤンチャ」が地続きである岸和田の空気感。

ナイナイの演技は決して“コント”に陥らず、どこか懐かしいリアルな青春として胸を打つ。

(C)1996 松竹株式会社・吉本興業株式会社


『ある男』(2022年)

(C)2022「ある男」製作委員会」製作委員会

出演:小籔千豊

芥川賞作家・平野啓一郎の同名小説を、『蜜蜂と遠雷』の石川慶監督が映像化した感動のヒューマンミステリー。

ある日、亡くなった夫が“別人”だったと知った女性(安藤サクラ)が、弁護士(妻夫木聡)にその真相を依頼するところから始まる物語。

その中で、小籔千豊は調査に関わる人物のひとりとして登場する。

小籔の持ち味といえば、毒舌と理詰めの話術だが、本作で見せるのはまったく別の顔。

低く抑えたトーン、わずかな間合い、静かな眼差し――“語らない演技”で、観客に強い印象を残す。

芸人ならではの表情の緩急が、作品に“人間味”を与えている。

お笑い芸人としての華やかさではなく、あくまで役者としての“引き算”の美学が光る演技。

まさに「芸人が演じる」ではなく、「役者として立つ」小籔の姿がそこにある。

(C)2022「ある男」製作委員会」製作委員会


『お母さんが一緒』(2024年)

(C)2024松竹ブロードキャスティング

出演:青山フォール勝ち(ネルソンズ)

橋口亮輔監督による9年ぶりの長編作は、温泉宿を舞台に“母娘”の機微を描いたホームドラマ。

江口のりこ、内田慈、古川琴音が演じる三姉妹が、母親の誕生日祝いに温泉旅行へ。

しかし、積年の不満が爆発し、祝福の場がいつしか修羅場と化していく。

そこに現れるのが、三女・清美の恋人タカヒロ――演じるのが、芸人・青山フォール勝ちだ。

(C)2024松竹ブロードキャスティング

物語の緊張感を和らげる“異物”として、絶妙なタイミングで現れるタカヒロ。

そのチャーミングさ、不器用さ、そして場を乱す滑稽さに、観客は「この人、何者!?」と目を奪われる。

フォール勝ちの演技は、コミカルでありながら、なぜか切なくもある。

家族という“笑って泣ける”世界観の中で、彼の存在が作品全体の温度を絶妙に調整しているのだ。

バラエティとは違う、“台本を生きる”芸人の真価がここにある。

(C)2024松竹ブロードキャスティング


芝居と笑いは、きっとつながっている。

お笑い芸人の演技は、時に観客の予想をはるかに超えてくる。

それは、日々「観客の反応」と対話し続けてきたからこそ、タイミングや“間”に鋭く、感情の“緩急”に長けているからだ。

ナインティナインの青春、青山フォール勝ちの家族劇、小籔千豊の静かなる存在感。

それぞれの芸人が、自らのキャリアとは別の次元で、スクリーン上に“生きる人間”を立ち上げている。

今や芸人の“芝居力”は、映画界にとっても欠かせないエッセンスとなっている。

「芸人の映画出演」という枠を超えた、“演技の力”を、ぜひ体感してほしい。

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『岸和田少年愚連隊』(1996年)
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『ある男』(2022年)
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『お母さんが一緒』(2024年)
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