「名探偵コナン・純黒の悪夢(ナイトメア)」が大ヒットしたのはなぜか?

名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア) 劇場版
(C)2016 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

オープニング興収12億円超!!

先輩 どーも。ごぶさたしております、長老。

爺 長老って呼ぶな!!

先輩 では「超老」とでもしておきますか。このゴールデン・ウィークの映画興行は邦画、洋画ともに話題作が揃っていますが、4月16日から公開された、東宝配給のアニメ映画「名探偵コナン・純黒の悪夢(ナイトメア)」が、オープニング2日間で興行収入12億915万8900円を上げたのには驚きました。

爺 オープニング興収12億円ということは、今年に入ってからの記録じゃないか?

先輩 正月映画になりますが「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」が3日間合計で16億1934万円、「妖怪ウォッチ/エンマ大王と5つの物語だニャン!」が10億5780万8800円。つまり「名探偵コナン・・」は、この2作品の中間にあたる成績で、おっしゃるように今年の公開作品としては最高にあたります。

爺 相変わらず数字を並べるのが好きだのお(笑)。しかし、なんでこんな大ヒットになったんだ?

先輩 実はそれについて、色々な人に見解を聞いたのですが、これが面白いんです。諸説ありまして。

爺 ほお。

先輩 まず「映画そのものが、最初からテンションが上がる展開で出来が良い」との意見があります。

爺 それは当然というか、やはり良質な、面白い作品はヒットしてしかるべきだのお。

先輩 いやいや、必ずしもそうは行かないことは、ご隠居だってご存じのはずじゃないですか。お客さんが映画に見に来るのは、俳優さんが目当てだったり、原作のファンだったり、色んな動機付けがあるわけです。

爺 ご隠居って呼ぶな!!

先輩 僕はこの映画を見ていませんが、毎年「名探偵コナン」シリーズを見る知り合いによると、「今年も出来が良い」とのことですから、作品の質の高さには定評があり、そのことが蓄積されて広範囲に広まったということでしょうね。

爺 なるほど。映画のヒットの仕方としては、理想的じゃないか。作品そのものの面白さで、お客さんを集めたのだから。

先輩 長くシリーズを続けてきたからこそ、こういうことが起きるのでしょう。同じ東宝のゴールデン・ウィーク番組「クレヨンしんちゃん」シリーズにも、同じような傾向が見られます。

爺 「名探偵コナン」シリーズと「クレヨンしんちゃん」シリーズ。どちらも長いシリーズだが、ここ数年成績がアップしていると聞いているよ。はい、数字出して。

先輩 では。2013年の段階で「名探偵コナン」のオープニング成績は6億7200万円でした。これが2014年には7億8900万円になり、2015年は8億7500万円と増えていったんです。最終興収は、2013年36億3000万円、2014年41億1000万円、2015年44億8000万円。

爺 確かにアップしている。そして今年はこのオープニングならば、興収50億円は突破することだろうな。

先輩 55億円とか60億円とかの声も聞こえてきます。そうなったら凄いですね。スタートから20年目のアニメ・シリーズが。

爺 「クレヨンしんちゃん」シリーズは?

先輩 2013年のオープニングが2億2500万円で、最終13億円。2014年が3億3900万円で最終18億3000万円。2015年は3億9000万円で最終22億9000万円。今年のオープニング成績は4億51万9100円と4億円をオーバーしましたから、昨年と同様最終20億円台に乗るのは間違いないと思います。

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(C)2016 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

黒の組織の暗躍を中心にし、ポスターもすべて黒

爺 「名探偵コナン」シリーズに話を戻すけど、作品の出来が良いとの評判は分かるが、さて作品のどこが受けているのかな?

先輩 黒の組織という謎の集団が登場し、彼らはコナンが小さくなった謎を握っているキャラクターで、シリーズの根本的な部分にも関わっているようですね。

爺 なるほど。それでタイトルもポスターも、みんな黒ずくめなのか。

先輩 加えてTVシリーズで、この黒の組織が登場するエピソードを劇場公開前に集中放映するなど、20年20作品のメモリアル感を盛り上げたというわけです。

WEB用_名探偵コナン 純黒の悪夢_サブ02【3月7日追加】

(C)2016 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

客層はローティーンが昨年の6%から10.7%に

爺 例年より興収がアップしたいということは、当然ながら観客の数も増えたわけだが、客層としてはどの層が増えたんだろう?

先輩 東宝の発表によると、今回はローティーンの割合が高いとのことです。オープニング段階の調査では、男女比36対64と女性層が多く、年齢構成では20代が38.1%、16〜19歳27.6%、13〜15歳10.7%、40〜59歳が12.1%となっています。

爺 昨年の場合は、どんな客層だったのかいな?

先輩 昨年も男女比は36対64で、年齢構成は20代37.5%、16〜19歳28.7%、40〜59歳12.8%、6〜12歳6.9%、13〜15歳は6.0%ですから、確かに今年は10代前半の観客がぐっと増えています。

爺 それもまた、作品の内容に追従してのことなのかな?

先輩 実はこういう指摘もありまして。今年「コナン」シリーズで、初めて入場者特典をつけたというんです。

爺 ほお。それはどんなもの?

先輩 これまでの19作品の中から、どれでも1本無料で視聴できるシリアルコードがついた、原作者・青山剛昌からのメッセージ入りのカードで、名付けて「青山剛昌から純黒の感謝状」。

爺 これもまた黒いのか。

先輩 しかもカードには原作者の描き下ろしイラストやレギュラー声優陣のサイン入りメッセージも入っていて、これを全国で400万枚、映画館で限定配布したそうですから、この力が大きかったのかもしれません。

爺 面白い仕掛けがしてあるじゃないか。「シン・ゴジラ」の前売り特典もこういうのにすれば良いのに(笑)。

先輩 東宝としてもこの種のアイテムを特典にするのは初めてとのことです。



女性に強い「コナン」。最終回はOLがメイン

爺 そうなると、「コナン」のようなファミリー・アニメは・・。

先輩 いや、それ、違います。「名探偵コナン」はファミリー・ターゲットにしたアニメ映画シリーズではありません。以前制作関係の人にそう言ったら「うちの場合はファミリーではありません。最も多い観客は20代の女性ですから」と言われて、僕も認識を改めました。

爺 それは先ほどの観客構成にも現れているなあ。

先輩 だから最終回も観客が多くて、OLがメインだそうです。

爺 そこに今年はローティーンが加わったというわけか。

先輩 先日も池袋に行った際、サンシャイン通りに寄ったら、「名探偵コナン」を待つ観客が凄い行列を映画館の周囲に作っているんです。ああいう光景を久々に見ましたよ。

爺 池袋が全国で一番成績が良いらしいからな。「名探偵コナン」シリーズの場合。

先輩 そこに今回は池袋西武でポップアップストアを展開し、これが映画館と販促協力をしているそうで。渋谷にオープンしてコナン・カフェも好調のようですよ。

WEB用_名探偵コナン 純黒の悪夢_サブ06【3月7日追加】(PC壁紙画像・携帯待受画像には使用できません)
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ヒットのコアになったのは、作品の質の高さに対する信頼

爺 とにかくこの連休は、大きな稼働になりそうじゃな。

先輩 2週目に入っても週末興収は6億7920万円と、洋画の新作を尻目にトップを入っていますし、9日間の累計興収は、早くも25億円を突破しました。

爺 結局「名探偵コナン・純黒の悪夢」の大ヒットの要因は、入場者特典やショップの展開やTVシリーズの集中リピートなど色々あるけれど、その大元になったのは作品だ。質の高い作品を毎年作ってきた、その信用の蓄積がコアにあるという風に捉えたいね。


先輩 まさしく、ご老体の言われたように、映画のヒットの仕方としては理想的なパターンと言えますね。

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(企画・文:斉藤守彦

    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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