金子映画の真骨頂ともいえる快作『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』

金子修介監督は、面白い映画を作り続けるという点において私が最も信頼する監督のひとりですが、そんな金子監督の最新作……

キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.128

スキャナー 記憶のカケラをよむ男
(C)2016 『スキャナー』製作委員会

『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』もまた、映画ファン必見の快作に仕上がっています!

ヒトの残留思念を読み取る男と
その相棒のバディ・ムービー

『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』は、さまざまな物質に触れるだけで、そこに宿る人間の記憶=残留思念を読み取ることのできる男・仙石(野村萬斎)とその相棒・丸山(宮迫博之)が活躍するファンタジック・ミステリ・サスペンス映画です。

ふたりは、かつて仙石の超能力を利用したネタで一世を風靡し……ようとするも、さほど売れなかった漫才コンビで、今は実質上解散して久しかったところにひとりの少女(杉崎花)が現れ、彼らに行方不明のピアノ教師(木村文乃)の行方を捜してほしいと依頼されます……。

本作は『探偵はBARにいる』などで知られる古沢良太のオリジナル脚本を金子修介監督のメガホンで映画化したものです。

主演の野村萬斎は、何とこれが現代劇映画初主演で、狂言師としての個性を活かした、どこか現代にはそぐわないヲタクチックなキャラクターを楽しそうに演じています。

相棒役の宮迫博之は“雨上がり決死隊”でおなじみお笑い芸人であり、俳優として数々の映画出演でも知られる存在です。

こうしたふたりが織りなすドタバタかつシリアスな捜査劇は、いわゆるバディ・ムービーの装いでサスペンスやミステリの情緒を増大させつつ、お笑いコンビという点でのユーモアもそこはかとなく交えながら、次第に金子映画ならではのエッセンスがじわじわと、そして確実に画面を浸透していくスグレモノとなっています。

ファンタジックな情緒と
少女にこだわる金子映画

金子監督といえば平成『ガメラ』3部作(95・96・99)や『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(01)といった怪獣映画の傑作群や、『クロスファイア』(00)『デスノート』2部作(06)などのダーク・ファンタジーなどで大いに知られる存在ですが、それ以外にも彼の作品は常にどこかファンタジックな情緒を漂わせています。

中でも寄宿舎でひと夏をミステリアスにすごす4人の少年たちをすべて少女に演じさせた『1999年の夏休み』(88)はその筆頭ともいえるもので、今なおこの作品を愛してやまない映画ファンは多数います。

そう、金子映画といえば、やはり何といっても少女! いかに少女を美しく捉え、それを映画的に昇華させていきながら作品そのもののテーマを明確に打ち出していくのが金子映画の大きな特徴であり、そもそもは人気スポ根漫画『エースをねらえ!』をパロディにした日活(にっかつ)ロマンポルノの快作『宇能鴻一郎の濡れて打つ』(84)で監督デビューを果たし、一般映画に進出してからも『どっちにするの。』(89)で中山美穂と宮沢りえ、『香港パラダイス』(90)で斉藤由貴など、90年代前後はアイドル映画に才を発揮。

『恐怖のヤッちゃん』(87)『山田村ワルツ』(88)『咬みつきたい』(91)『卒業旅行 ニホンから来ました』(93)『恋に唄えば♪』(02)などのコメディにも定評があります。

『毎日が夏休み』(94)では佐伯日菜子、『ガメラ』3部作で中山忍と藤谷文子、『プライド』(10)では満島ひかりなどなど女優を発掘しステップアップさせる力は、日本映画のファンなら誰でもご承知のところでしょう。

最近では学園デスゲーム映画の傑作『生贄のジレンマ』3部作(13)で、竹富聖花や清野菜名などの若手女優たちを大挙起用し(もちろん男優も)、それぞれ大きくステップアップさせてくれています。

あたかもクラゲがたゆたうように二人の少女の愛憎を繊細なタッチで描いた『ジェリー・フィッシュ』(13)も最近のスグレモノの1本。

時間と記憶をテーマにしたファンタジック・ストーリー『百年の時計』(12)では、主演の木南晴夏のみならず、中村ゆりや往年の名女優・水野久美の美しさまで見事に映し出しています。

『少女は異世界で戦った』(14)に至っては、往年の志保美悦子主演映画のようなヒロイン・アクション映画を目指し、花井瑠美『ジェリー・フィッシュ』、清野菜名&加弥野『生贄のジレンマ』、そして金子映画初見参の武田梨奈の4人を主演に壮絶なバトル・アクションを展開させつつ、その奥から東日本大震災以降の日本のありように警鐘を鳴らす作品としても機能させています。

そういえば森星主演の『青いソラ白い雲』(12)も、東日本大震災後の日本を風刺した、見事なコメディ映画として屹立していました。

どこから斬っても金子印の
面白ムービー!

まだまだ金子作品に関しては書きたいことが山ほどあるほど魅力に満ちているのですが、こうした彼の映画世界の中に『スキャナー』も見事に染まっています。

ここでは野村萬斎&宮迫博之の絶妙のコンビネーションに加え、杉崎花のおきゃんな元気良さがドラマのリズムを快活にさせてくれています。

また、本作には謎の少女が登場します。どうやら事件のカギを握っているようですが、これもネタバレになるからこれ以上は書けません。

そして行方不明のピアノ教師に扮する木村文乃の存在感は、とても文字にすることはできないので、ぜひとも劇場の大画面で確認していただければと思います。

いずれにしましても、本作の真の面白さは事件の謎が解けてから始まる真のクライマックスにあります。
そこで展開されていく情緒こそは金子映画の真骨頂ともいえるでしょう。

往年のプログラムピクチュア的な味わいや『相棒』もかくやの探偵風バディ・ミステリ劇、そして女優たちの存在感と、どこから斬っても金子印の面白ムービーです。

あとでDVDレンタルで、などとけち臭いことは言わず、ぜひともこれは劇場でご覧ください!

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(文:増當竜也

    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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