オマー・シャリフの死から連想していく 日本映画に出演した海外スターたち


ジョージ・ケネディとの思い出



私自身は東映ビデオのオリジナルビデオ路線の中でワールドワイドな方針を打ち出したVアメリカ(今にして思うとすごいネーミングですが……)第1弾『復讐は俺がやる』(92/村川透監督・菅原文太主演)に出演したジョージ・ケネディがプロモで来日した際、取材させていただいたことがありました。
その日は9媒体取材のビリッケツ。控え室で時間待ちしていたところ、宣伝と通訳の人が現われて、ジョージ・ケネディが非常に不機嫌になっているから、質問は気をつけてほしいとの要請。聞くと、どの媒体のインタビュアーも彼がアカデミー賞助演男優賞を受賞した『暴力脱獄』(67)の質問しかしてこないことにうんざりし、腹を立てているのだと。
確かに私もその質問はしたいところでしたが、彼には『大空港』(70)に始まるエアポート・シリーズもあれば、『狼たちの影』(75)『ゴースト 血のシャワー』(80)などの主演映画もありますし、『サンダーボルト』(74)『アイガー・サンクション』(75)といったクリント・イーストウッドとの仕事もあります。そして何よりも、彼は『人間の証明』(77)『復活の日』(80)と、日本映画にも出演しているのです。これを聞かない手はないでしょう。
取材が始まり、『復讐は俺がやる』の話をひととおりうかがった後、「あなたはこれまで2本の日本映画に出演していますね」と聞いたら、それまで仏頂面だった彼の表情ががらりと変わり、「そうなんだ!僕は君たちの国の映画に何度も出ているんだよ!」と身を乗り出し、『人間の証明』英語タイトル“PROOF OF THE MAN”、『復活の日』の英語タイトル“VIRUS”の名を何度も口に出しながら、当時の思い出を楽しそうに語ってくれました。「ジュンヤ・サトー(『人間の証明』の佐藤純彌監督)、キンジ・フカサーク(『復活の日』の深作欣二監督)は元気にしているか?」と逆にこちらが質問されるほどで、やはり彼らはちゃんと覚えていてくれているのだと感激してしまいました。
取材後、通訳の人からこれまでの8件の取材と何ひとつ質問がかぶっていなくて、ケネディ氏もすごくご機嫌だったと伝えられ、それはそれで嬉しかったのですが、逆に考えると、その8媒体のインタビュアーは彼が日本映画に出演していた事実を知らなかったのか、それとも興味すらなかったのか、いずれにしても愕然とさせられるものがありました。おそらくジョージ・ケネディは、久々に日本へ行くのだから、自分が出演した日本映画のことくらいはきちんと話せるようにしておこうと備えていたのかも知れません(また、それがプロというものでしょう)。ならばこちらもきちんとキャリアをチェックしておくべきで、またそういった姿勢こそが映画ファンに伝わり、彼らを再評価する糸口にもなると信じたいものです。

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