初めての人にとって衝撃的―『ラブ&マーシー』公開記念トークショー



映画を観る前に予習として聴いておくべき楽曲として、萩原氏は、この映画に出てくる『ペット・サウンズ』から当時完成させることができなかった『スマイル』を挙げ「66年~67年あたりの楽曲は聴いておいた方がいいと思うのと『ペット・サウンズ』のサウンドの何が画期的なのかというと、その少しのビーチ・ボーイズからの進化なんです。だから『サーファー・ガール』や『オール・サマー・ロング』あたりのバンド黄金期のサウンドを聴いた上で映画の時代の作品に入っていくと映画の全体的な流れが分かりやすくなると思います」とレコメンドしてくれた。

さらに、仮想敵としてのビートルズという存在について、萩原氏は「ビートルズの『ラバーソウル』に触発された作ったのが『ペット・サウンズ』でなんです。ビートルズがメンバー間で役割を分担して時代の先へ先へ行こうとしていたのに対して、ブライアンは、曲を書いてアレンジもしてプロデュースもと全部ひとりでやっていてアメリカ音楽のルーツに向かって内へ内へと突き進んでいく、時代と全く逆行する、自分達を見つめ直すような曲を目指していたんです。当時それはイケてたものではなかったと思うんです。でも、逆に言うと今聴くと時代を超えて評価することができる。当時、ブライアンはそれを作ろうとしてたんですよね」と説明。

高田氏は「ビートルズ以降の音楽ってダビング芸術になって録音を重ね合わせる多層性に向かっていきましたが、ビーチ・ボーイズそれを同時にやろうとしてスタジオには人がどんどん溢れかえっていった。それはある意味、前近代的な撮り方なんですよね」と音楽的見地を披露。

高田氏は「そういう風景の再現って、誰が楽しいだろうって作り上げるデザイナーとかいろんなスタッフなんでしょうね。当時のレコーディング風景の音や会話なんかが多く残されているけど、それとうまく組み合わさってて」と語り、萩原氏は「残っている音源と映画のために撮ったものが入り乱れてるんです。映画の中でもブライアンの過去が去来するようなシーンでそういうものがたくさん出てくる。トリビアクイズとかやったら面白いだろうね」と語った。

ラブ&マーシー



最後に、本作を通じて初めてビーチ・ボーイズやブライアンと出会うことになる観客に向けて、高田氏は「僕たちマニアにとってはある種の納得と確認の作業だったりするんですが、初めての人にとってはもっと衝撃的かもしれないですね」と語り萩原氏も「そういう人の方が面白く感じられるのかもしれない。羨ましいです(笑)」と語り、萩原氏は「ビーチ・ボーイズに影響を受けて、この時代はサーファーバンドが本当にたくさん誕生しました。でも、その皆が消えていってビーチ・ボーイズだけが残った。その意味は何なのかというと、明るいようにみえる曲の内側にはある苦悩や夏の夕暮れを思わせる切ない感覚とか、深い内省的なものが曲の中にあったからなんです。この映画を観ればその意味が分かると思います」と締めくくった。

ラブ&マーシー



映画『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』は、2015年8月1日(土)より角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー。



(C)2015 Malibu Road, LLC. All rights reserved.

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