今こそ描く時だと感じた―『日本のいちばん長い日』外国人記者クラブ会見レポ
一番描きたかったのは阿南惟幾の抱えるアンビバレント
熱弁する原田眞人監督の言葉を黙って聞いていた役所広司に対し、司会から「役所さんの話も是非聞きたい」との振りから本作での役作りについて質問されると、役所広司は「原田監督との仕事の時には膨大な資料がおりてきます。今回も、まずはその資料に目を通すところから始まりました(笑)」と役作り当時を振り返り会場を沸かせた。「戦争継続を望む若手将校たちとの間に苦悩しながら、鈴木貫太郎首相、昭和天皇とで戦争にピリオドを打てたのはよかった」と語った。
また、戦況が悪化をたどり、終戦に向けての議論が紛糾する中、何故阿南陸相は辞任しなかったのかという事に対して役所広司は「この内閣は阿南が辞任していたら崩壊していた」と語り、原田眞人監督は「この映画で一番描きたかったのは阿南さんの抱えていたアンビバレントです。大本営直属の軍人ではなく、天皇直属の軍人だという彼のジレンマにドラマがあると思います」と思いを語った。
また、原田眞人監督は「岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』では昭和天皇を描けなかった。半藤さんの原作では明らかに主役の一人として描かれているのですが、当時は細かい部分を描くことができなかった。21世紀に入ってアレクサンドル・ソクーロフ監督が『太陽』という作品を撮ってイッセー尾形さんが演じ、初めて昭和天皇をクローズアップして描いたが、カリカチュアライズされていて、昭和天皇のクセを強調していて気品の感じられる昭和天皇像ではなかった。」と不満を語りながらも「しかし、この当時ようやく描かれた昭和天皇像に対し、世間からの不平があがることはなかったので、今こそ『日本のいちばん長い日』を描く時だと感じた」と制作への裏話を語った。
また「本作では半藤先生の『日本のいちばん長い日 決定版』と同じく半藤先生原作の『聖断』を参考に、終戦までの4ヶ月間を描いたことで、終戦がなぜ遅れたのかを描き、昭和天皇、鈴木貫太郎首相、阿南惟幾陸相の関係を綴っています」と語った。
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