『トイレのピエタ』は夢を諦めたことのある全ての大人に観て欲しい映画
いつかの自分と重なる主人公の姿
画家になる夢を諦めてビルの窓拭きのバイトをしながら日々をやり過ごす野田洋次郎さん演じる主人公の園田宏。
筆者自身もこれまで多くの夢を諦めたり投げ出したり、数々の挫折を経験しながら今日までどうにか生きてきました。
今でこそ好きなことを仕事にできているような気もしますけど、学生という立場を失い社会に出てからは明確な夢や目標を見つけることができず、ただ日々を過ごす生活費のためだけに、ただなんとなく惰性で生きるためだけに、好きでもない仕事を淡々とこなす日々を過ごし、実際に10年くらい前まではそんな生活を送っていました。
そんな過去の実体験があることで、スクリーンの中で窓拭きをする宏の姿にかつての筆者自身の姿が重なり他人事とは思えず、これまで経験したことのないような深い感情移入につながったのかなと。
恐らく、スクリーンの中に映る宏の状況って、今を生きる多くの大人たちの過去に重なる部分があるんじゃないかなと。
きっと、多くの人が大人になる過程において、様々な現実と向き合う中で夢を諦めることって往々にしてあると思うんですよね。
だからこそ『トイレのピエタ』という映画は、これまで夢を諦めたことのある全ての大人に観てほしいなと強く思います。
挫折を経験したことがあるからこそ感じることのできる何かがこの映画にはたくさん詰まっています。
ただ、野田洋次郎さんが演じる宏の場合は余命宣告というどうにもならない現実を突き付けられるわけですけど…。
それでも、幾つかの出会いや別れを経験する中で、全てを諦めていた感のある宏は少しづつ変わっていき、自らの生きる意味を模索するようになります。
杉咲花さん演じる複雑な家庭環境の中で必死に生きる真衣と激しくぶつかり合いながらも、お互いに惹かれ合いながら。
リリー・フランキーさん演じる同じような病気を抱えながらも常に飄々としている横田や、小児病棟に入院する子どもたちと関わり合いながら。
そして、最終的に自らが存在した証としてひとつの作品を創り上げていく姿は、今を必死に生きることの大切さを教えてくれるはずです。
そんな宏の最後の生き様を目の当たりにしたことで、筆者は生きる意味を改めて考えさせられました。
まぁ、生きる意味の答えなんてすぐに見つかるものではないかもしれないけどね。
それでも生きてる限りは惰性ではなく積極的に前に進んでいこうと思います。
なんか救われる映画
そういえば、以前行われたプレミアム上映会の舞台挨拶で聞いた野田洋次郎さんのコメントがとても印象的でした。
「この映画は全ての人に感動を与える映画ではないと思ってます。でも、それでいいと僕は思ってます。表現というのは常に誰かを犠牲にしてしまうかもしれないけど、だけど何割かの人には強く強く刺さるものであって欲しいと願っていて、僕自身、音楽でそういうことをやろうと思っていて、この映画はそういうものになっていると思います。イジメっ子よりもイジメられっ子、清々しく家を出れる人よりは外に出たくない人、胸につかえがある人に観て欲しい。なんか救われる映画になってるんじゃないかなと思います。」
参考リンク:RADWIMPS野田洋次郎の初主演映画「トイレのピエタ」プレミアム上映会舞台挨拶!
まさにその通りの映画に仕上がっていると思います。
少なくとも筆者はこの映画によって救われた一人です。
自分の他にも人生に行き詰まって悩んでいる人がいるということに。
苦しいのは自分だけじゃないんだということに。
苦しみながらも必死に前に進もうと頑張っているたくさんの人がいるということに。
そして、松永大司監督が宏のことを「アレね、全部『僕』なんです」と語っているように、監督自らの経験を元に創り出された設定という部分にも激しく共感を覚えました。
様々な経験を経て、このような感動的な作品を創り上げたという事実に大きな勇気をもらえました。
参考リンク:「感想をシェアして完結する映画」…笑って泣ける感動作『トイレのピエタ』を観た感想を松永監督に伝えてみた
というわけで、筆者に生きる意味を考えるキッカケや人生を前向きに生きる勇気を与えてくれた映画『トイレのピエタ』は、6月6日の公開から早くも2カ月以上が経過していますが、8月29日(土)からは東京「K's cinema」、9月12日(土)からは神奈川「アミューあつぎ映画.comシネマ」での上映が予定されています。
他にも全国では上映している劇場はまだありますので、お近くにお住まいの方はぜひ大きなスクリーンで鑑賞してみてはいかがでしょうか。
参考リンク:劇場情報|映画『トイレのピエタ』公式サイト(http://www.shochiku.co.jp/toilet/theater.php)
(C) 2015「トイレのピエタ」製作委員会
(文:岡部照将)
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