俳優・映画人コラム

REGULAR

2015年10月27日

TIFF監督特集“原田眞人の世界”『KAMIKAZE TAXI』トークショー

TIFF監督特集“原田眞人の世界”『KAMIKAZE TAXI』トークショー



さて、観客からの質問の中には「続編の構想は?」というものが。

原田「やろうと思っていました。ただ役所さんにとって寒竹という役は聖域ですし、僕もやるならペルー・ロケしないと駄目だと。結局、その企画は換骨奪胎されて『RETURN』(13)になったわけですが、今日久々に見ていて思ったのは、続編ではなく、今の旬の役者で、今の世相を反映させた『KAMIKAZE TAXI』をやったほうがいいのではないかという気にはなりましたね。

もともとこの企画は、今僕の作品の編集をずっとやってくれている息子の遊人が小学生でアメリカから日本に帰ってきたとき、寒竹さんと同じように日本語が少し変で、そうすると帰国子女を受け入れてくれる学校でも差別意識があることに気づかされた。その腹立たしい想い、言葉から始まる日本人の差別感に対するモヤモヤしたものが、日本の戦争犯罪や劇中の土門(内藤武敏)みたいな政治家に対する攻撃的メッセージなどと合わさっていきました。

またそれまで僕はキャラクターよりもプロット主体で映画を作ってきていたのですが、前作の『ペインテッド・デザート』で行き詰まり、次はひとりひとりのキャラクターを深く作り上げて、それぞれに引っ張られていくような形で脚本を書いてみたいと思っていた。

これらの要素を踏まえて、いざ脚本を書き始めていくうちに、寒竹さんがしゃべっているゲリラの戦いとか、そういう事実がどんどん情報としてこちらに入ってきたんです。そういう幸せな脚本作業でした」

この後、客席で観覧していた達男の友人テロ役の中山峻も監督に呼ばれて登壇するなど、場内はさながら『KAMIKAZE TAXI』同窓会といった風情で盛り上がっていった。
⑦中山峻(右)も客席から呼ばれて


『KAMIKAZE TAXI』はビデオ上下巻の『復讐の天使』や169分劇場公開版、今回上映された140分インターナショナル版など、さまざまなバージョンが存在する。いずれはそれらをすべてまとめたブルーレイなりリリースしていただきたいもの。監督自身、もっとも気に入っているという劇場公開版のリバイバルなども大いに切望したいところだ。

映画ファンを自認するしないを抜きにして、『KAMIKAZE TAXI』こそは絶対に見ておくべき傑作であり、その魅力は今もこれからも薄れることはない。

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:増當竜也)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!