『あいつだ』感想&オススメしたい「6つ」の理由
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本日4月16日(土)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋にて、韓国初登場No.1大ヒットを記録した映画『あいつだ』が公開されています。
物語は“愛する人を殺された青年が犯人を追い詰める”という、ありふれた“復讐もの”に思えますが……それだけではありません。いろいろな意味で“太っ腹”なエンタメ作品だったのです。以下に紹介しましょう。
1.パートナーは予知能力者の女性!
リアリスティックなスリラーかと思いきや、なんとパートナーとなる女性が持っているのは“死を予期できる超能力”!
予知能力により事件や問題を解決しようとする様は、『ファイナル・デスティネーション』シリーズや『マイノリティ・リポート』のようです。
この能力は、女性が周りから気味悪く思われてきたという“孤独感”、予知能力があるのに主人公の妹を救えなかったという“自己嫌悪”を示すほか、これからの命を救っていきたいという“使命感”につながっていきます。
超能力がヒロインの性格や過去を示す材料となっていることも、魅力的なのです。
2.ホラー要素もあるよ!
本作は実際に起きた、ある女子大生の死を弔う死者儀礼をヒントに作られています。この死者儀礼のシーンは作中にも登場するのですが……なんと白昼堂々、ジャパニーズホラー映画のような展開になります。
「なんでホラーテイストに?」「あの◯◯は誰だよ!」とビックリするかもしれませんが、後々ちゃんと説明されるのでご安心(?)ください。
3.犯人はパルクール選手並みの身体能力を披露!
皆さまは“パルクール”をご存じでしょうか。これは“フリーランニング”とも呼ばれ、地上や壁をたぐいまれな身体能力で攻略していく競技です。映画ファンであれば実在のパルクール集団を題材とした『YAMAKASHI』や、『007 カジノ・ロワイヤル』の冒頭のアクションを思い出すかもしれません。
この『あいつだ』でも、なぜか犯人がパルクール選手並みの身体能力を披露し、ごちゃごちゃとした田舎の漁村で主人公と追っかけっこをすることになります。
そのアクションは工夫されたカメラワークのおかげで迫力満点、「お前はどこでその訓練をしたんだよ!」とツッコミたくなることは必至(笑)。ぜひアクションシーンも楽しみにしてください。
4.韓流ドラマのイケメンが復讐鬼に変貌!
主役を演じたイケメン俳優・チュウォンは、ドラマ『のだめカンタービレ〜ネイル カンタービレ』などではコミカルな演技を見せていましたが、本作では“笑顔”を完全に封印。妹を殺した犯人を追い詰める、狂気的な青年を演じます。
ちょっと笑ってしまったのは、映画序盤の主人公のシスコンっぷり。主人公は妹のことを話していた同僚に “巨大な氷アタック”をしかけたり、妹を夜に外に外出させないように鍵をかけたりするのですから。過保護っていうレベルじゃありません。
しかし、それは“主人公にとって妹だけが大切な人”という証拠。この描写があってこそ、彼の度を超えた行動が理解できるようになっています。
「365日、毎日欠かさず、お前を見張ってやるぞ」というセリフは、共感できるものの、同時にゾッとしてしまいました。
5.犯人が誰かわからない!
本作は“妹を殺した犯人は誰だ!?”を追うミステリーでもあるので、犯人が誰かを予想してみるのも楽しいでしょう。
うまいのは、“ミスリーディング”が多いこと。ミスリーディングとは推理小説によくある“違うことに目を向けさせる”テクニック。『あいつだ』には「あいつが犯人じゃないか?」「いやいや、こっちのほうが怪しいだろ」と思わせるミスリーディングがたっぷりあるのです。
ずるい(?)のは、犯人と疑われる薬剤師を演じたユ・ヘジンの演技がうまいこと。彼はこれまで『ベテラン』や『タチャ 神の手』でも抜群の存在感を見せていた名脇役で、演技の幅が広いおかげもあり、「いい人なのか悪い人なのか本気でわからん!」と、観客をいい意味で惑わしてくれるのです。
ちなみに、自分は犯人の予想を外してしまいました……。ぜひぜひ、犯人を予想してみることをおすすめします。
6.『母なる証明』と似ている作品である
本作で思い出したのは、傑作韓国映画『母なる証明』でした。“貧しい田舎で殺人事件が起きる”、“犯人が誰であるかを推理するミステリー”、“身内に(軽い)知的障がいの男性がいる”、 “大切な人のために奔走する”など、『あいつだ』と共通点が多い作品なのです。
『あいつだ』のロケーションは、明日の仕事にも困ってしまいそうな貧しい漁村。作中で示される地方都市の問題は、日本人にとっても身近に感じられるでしょう。
ネタバレになるので詳しくは描けませんが、犯人の過去には『母なる証明』と似た“閉鎖された場所でこそ起こった悲劇”を感じました。
まとめ.復讐もの、超能力もの、ミステリー、ホラー、アクション、社会派ドラマ、全部を楽しんでしまえ!
さてさて、ここまでで『あいつだ』が、
(1)愛すべき妹を殺した犯人を追い詰める復讐もの
(2)死を予知する超能力もの
(3)犯人が誰だかわからなくなるミステリー
(4)◯◯が登場するホラー
(5)犯人がパルクール選手なみの身体能力を見せるアクション
(6)地方都市の問題を描いた社会派ドラマ
と、盛り込みまくりなエンタメ作品になっていることをわかっていただけたでしょうか。
ここまでの要素を詰め込みながら、ちゃんと物語がまとまっていることは賞賛すべきこと。多少のツッコミどころはありますが、そこも含めて楽しんでほしいです。
ここまでおもしろい作品が現在シネマート新宿、シネマート心斎橋の2館でしか鑑賞できない(5月7日より中川コロナシネマワールドでも公開)のはもったいないと言わざるを得ません。韓流好きの淑女の方々はもちろん、映画ファンすべてにおすすめします。
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(文:ヒナタカ)
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