映画ビジネスコラム
映画市場の息切れと『ズートピア』の快進撃
映画市場の息切れと『ズートピア』の快進撃
全米興収ランキング(6/3〜6/5付)
1『ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>』(New)
2『X-MEN:アポカリプス』(↓)
3『Me Before You』(New)
4『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(↓)
5『アングリー・バード』(↓)
6『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(↓)
7『Neighbors 2 : Sorority Rising』(↓)
8『Popstar : Never Stop Never Stopping』(New)
9『ジャングル・ブック』(↓)
10『The Nice Guys』(↓)
(速報値/Box Office Mojo参照)
毎週のように超大作が公開されるサマーシーズンが始まり、2週目の今週は2年前のサマーシーズンのヒット作『ミュータント・タートルズ』の続編である『ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影<シャドウズ>』が初登場1位を飾った。しかし、先週の『X-MEN:アポカリプス』と『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』でも明らかになったように、ここまでメガヒットが連発していた2016年も、肝心のサマーシーズンに入った途端、ちょっと息切れムードが漂い始めている。
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前作が2億ドル近いヒットとなり、オープニング週末も6500万ドルを稼いだ『ミュータント・タートルズ』シリーズではあるが、2作目の今回は3500万ドルというやや期待外れのスタートとなったのである。しかも、批評サイト・ロッテントマトでの評価は、酷評の嵐だった前作をかろうじて上回る程度に留まり、ここから大きく上乗せがあるかは微妙なところ。前作同様、期待が持てる海外興収での製作費回収を狙うことになるのだろうか。
一方、3位に初登場した『Me Before You』は決して大ヒットとは呼び難いものの、悪くない滑り出し。エミリア・クラークとサム・クラフリン共演のラブストーリーは、1週目ですでに製作費2000万ドルを回収する安定した興行を展開している。ただし、こちらも決して批評が良いわけではないのが気掛かりなところ。
そして、8位にランクインした『Popstar : Never Stop Never Stopping』は上々な批評とは対照的に撃沈。2000シアター以上で封切られた作品としても、歴代118位と、良くもないのに悪すぎもしない中途半端な印象だ。同規模の公開で、同じくらいのオープニングを迎えた作品は、ほとんどが1000万ドルをかろうじて上回る程度の最終興収に落ち着いており、本作もそのラインに落ち着くのであれば、認められるようになってからのジャド・アパトー作品としては過去最低の興収となることも否定できない。(近10年でいえば2012年の『ふたりのパラダイス』が最終興収1700万ドルであった)
今週の新作勢は相次いで期待外れとなったが、来週以降は期待が持てるはずだ。来週は『死霊館 エンフィールド事件』『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』『ウォークラフト』の3本が公開。その次の週からは『ファインディング・ドリー』、『インデペンデンス・デイ リサージェンス』、『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』、『ペット』ときて『ゴーストバスターズ』が控える今年のサマーシーズン。出だしの3本がどうも不甲斐ない成績で幕を開けるとなると、少々怖い気もするが果たして……。
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ところで、今年を牽引するヒット作は夏に入っても順調さをキープしている。
公開14週目に入った『ズートピア』は、とうとうベストテン圏外へランクダウンしたものの、今年2本目となる世界興収10億ドルの大台を突破した。日本でも、興収60億円を突破。週末ランキングでは1位の座を『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』に譲りはしたものの、今週も2位に残り、予想以上のロケットスタートを切った『デッドプール』を見事に封じ込めたのだ。
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『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』も世界興収で『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』を超えて12位にランクアップ。11位の『ミニオンズ』を超えれば、次の敵は同フランチャイズの『アイアンマン3』である。国内興収で先に超えるか、世界興収が先に超えるか、楽しみなところ。
そんなディズニーは、今年の全米年間興収ですでに14億ドルを超え、今年の全米興収シェアで全体の3割を占める。例年であれば、2割を占めるだけでも充分抜けているのに、この後の『ファインディング・ドリー』から年末の『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』にかけてのビッグタイトルが加われば、全体の3分の1を占めることも夢ではなさそうだ。つくづく『アリス』の失敗は大きかった……。
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(文:久保田和馬)
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