「ドラえもん」「名探偵コナン」新記録、「ズートピア」尻上がりー日米アニメ映画好調の理由は?

WEB用_名探偵コナン 純黒の悪夢_サブ01【3月7日追加】(PC壁紙画像・携帯待受画像には使用できません)
(C)2016 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

「39年前から、大人もアニメを楽しんでいる」

先輩 先日のことだけど、故郷のラジオ局から出演依頼があって、アニメ映画のことについて電話で数分語ってくれとのことで、OKしちゃった。

後輩 ラジオは良いですよねえ。なんたって顔が映らない(笑)。

先輩 そうそう(笑)。で、どんなことを聞きたいのか、事前に質問を送ってくれと言ったら、即日メールで届いたんだが、この質問を読んで、衝撃を受けてしまったよ。

後輩 どんなことが書いてあったんですか?

先輩 「最近では、大人の人もアニメを楽しむそうですが?」って。

後輩 はあああ・・・・・・!!?? いったいいつの時代のことを言ってるんですか!?

先輩 だろ? なので電話で打ち合わせたときに、「あの質問は衝撃でした。我々はいい年こいて、まだアニメ映画見てます」と言ったら、意図的にそういう質問をしたそうな。

後輩 それにしても、本気で聞いたのだとしたら、まさに衝撃的ですね。今や大人も楽しめるアニメ映画は常識ですから。

すべては1977年8月から始まった。

先輩 だから本番では、こう答えたんだよ。「既に39年前の夏から、大人がアニメを楽しむ時代になっています」と。

後輩 39年前の夏?

先輩 そう。1977年の8月。何が起きたかといえば、「宇宙戦艦ヤマト」が劇場公開された年なんだよ。

後輩 そもそも「大人」の定義が曖昧すぎませんか?

先輩 我々が子供の頃、つまり小学生の時はアニメではなく「マンガ」と呼ばれていた。それで「中学に入ったら、もうマンガは卒業しなさい。幼稚だから」と、口うるさく言われたものだった。

後輩 ところが・・・卒業しなかったんですね(笑)。

先輩 そう(笑)。僕の周囲には、いったん卒業したけど、戻ってきたヤツもいた(笑)。それだけ「宇宙戦艦ヤマト」は、当時の中学生、高校生(の一部)を熱狂させた。それはTVシリーズの頃からそうで、僕は高校入学した後、ヤマト・ファンクラブなんてものを友人と運営していた(笑)。

後輩 ちょっと・・・恥ずかしい過去ですね(笑)。

先輩 うるさいわい!! それで1977年、16歳の夏休みに劇場版「宇宙戦艦ヤマト」が公開され、これまた映画館に見に行った。

後輩 劇場版「ヤマト」の客層は、従来のマンガと呼ばれるアニメ映画とは違っていたわけですか?

先輩 うん。10代の、つまりティーンエイジャーが主流だったんだよ。それを大人と呼べばそう言えるかもしれない。だから従来の「東映まんがまつり」で上映するお子ちゃま向け映画とは、ちょっと上の年齢層のお客が来た。それは事実。

後輩 そこからティーンをターゲットにしたアニメ映画が作られ始めるんですね。「さらば宇宙戦艦ヤマト」とか「銀河鉄道999」とか。

先輩 そうそう。でも、その流れがひと段落した時、僕らも遅ればせながら、もうアニメを卒業しようと思ったんだよ。当時もう高校を卒業する時だったし。ところが「機動戦士ガンダム」がTVでスタートして「なんだこれ!! 新しいじゃん!! 面白いじゃん!!」と(笑)。

後輩 またまた卒業の機会を失してしまったわけですね(笑)。

先輩 だから、日本のアニメ映画はお子ちゃま向けの作品と、ティーンとそれ以上の年齢層に向けた作品の2種類あるんだということを、ラジオで話しておいた。

後輩 すべては「宇宙戦艦ヤマト」の思わぬヒットから始まったわけですよね。

世界的にも珍しい、アニメ映画マーケットを形成

先輩 当時としては、世界的にも珍しいケースだったと思うよ。

後輩 そんなに凄いことだったんですか?

先輩 その頃アメリカでアニメと言えば、ディズニーしかなかったし、たいてい無理矢理擬人化した動物のキャラが言葉を喋って脈絡なく歌って踊り、最後はめでたしめでたしで終わりという内容だったからね。

後輩 なるほど。日本のティーン向けアニメのほうが、精神年齢が高かったというわけですね。

先輩 で、ずっと日本ではその2種類のアニメ映画がマーケットに出るんだけれど、例えばファミリー・アニメの代表格である「ドラえもん」シリーズなんて、1980年に最初の劇場版が公開されて以来、もう36年も続いている。

後輩 原作コミックやTVシリーズは映画の前からやっていますから、相当長い展開をしていることになりますね。

先輩 だから、子供の頃「ドラえもん」を親と映画館で見た子たちが、今、親になって、子供に「ドラえもん」を見せたがる。親子二世代のファンが映画館に来ているわけだ。

後輩 「ドラえもん」シリーズの場合、祖父または祖母と孫というカップリングも多かったようですから、三世代に渡って映画を見ているとも言えますよ。

映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2016

興収40億円超。「ドラえもん」、リニューアル以降の新記録樹立

先輩 この連載でも「ドラえもん」シリーズが、いかに日本の映画マーケットを盛り立ててきたかについて触れたけど、今年の「新・のび太の日本誕生」は、興収40億円を超えて、2005年のリニューアル以降の新記録を樹立したと言うんだよ!

後輩 それは凄い。

先輩 72日間で累計興収40億6226万円。

後輩 そういえば、この連載で取り上げた「名探偵コナン・純黒の悪夢」も大ヒットで、興収50億円を超えたらしいですね。

先輩 そうなんだよ。30日間で累計54億3286万円。もちろんシリーズ新記録だ。

後輩 大ヒットの要因についても、色々と触れましたが・・。

先輩 あの記事を書いてからわし、ゴールデン・ウィークのまっただ中に、池袋まで「名探偵コナン」を見に行ってきたよ。

後輩 それって取材で? それとも趣味(笑)?

先輩 取材に決まっとろうが。午後7時台の回だったが、確かに20代と思しき女性層がメインで、女性同士、カップルばかりで、ファミリーは見かけなかったな。まあ祝日の午後7時の回といえば、こんなところかな。

後輩 映画の出来は、どうでしたか?

先輩 うん。最初から大きなヤマ場があるし、確かに見どころ満載で退屈はしなかったよ。

後輩 まだ興行は続いていますが、最終的にいくらぐらい行くでしょうか?

先輩 先日のこの連載では「55億円から60億円との声も聞こえる」と書いたが、やっぱりそのあたりで落ち着くんじゃないかな?

名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア) 劇場版

(C)2016 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 

客層の拡大で、連休より成績が良かった「ズートピア」

先輩 それと、これはアメリカでのバカ当たりぶりを書いた「ズートピア」の興行に、面白い現象が出ている。

後輩 どーしたんですか?

先輩 ゴールデン・ウィークに公開したのだが、大型連休の最終週土日よりも、連休明けの土日のほうが入場者数も興収も多かったというんだよ。前週末対比興収で115パーセント。

後輩 なんでそういうことが起きるんでしょう?

先輩 当初この映画は、動物たちの理想郷を舞台にした楽しい映画とのふれこみで、主人公であるウサギのキャラなどを前面に出して、ファミリー層を狙っているように見えた。確かにファミリーのお客さんは来たのだけれど、配給会社によると「大人の客層にまで拡大した」と言うことらしい。

後輩 何か大人の観客を惹きつける要素があったのでしょうか?

先輩 先ほどのラジオ番組の女性パーソナリティが「昨日見てきました」というので、「どこが面白かった?」と聞いたら「色んな動物のキャラが出てきたところ」と応えたけど、確かにそうなんだな。その点、僕はこの映画の見立てに失敗した。

後輩 失敗はいつものことじゃないですか(笑)。

先輩 この映画をヒットさせるために必用なことは、当初ウサギとキツネのキャラクターをいかに認知させるか。ファミリー客を呼ぶのであれば、子供たちがウサギのジュディを見て「可愛い!!」と言わなくてはならない。そう思っていた。でも、そうじゃないんだな。例えばズートピアを収めるライオンの市長とか、スイギュウの警察署長とか、色んなキャラが登場して、それが観客の身近な人に親近感を感じさせて、とても面白いらしいんだ。

後輩 それと、この映画って実は差別問題を扱っているという声もあるんですが・・。

先輩 ウサギ娘のジュディがなかなか警察の中でちゃんとした仕事を与えられなかったり。確かに人種・・じゃないや獣種差別的なニュアンスは感じるけど、そこまで深読みする必要もないんじゃないかな?

後輩 興行成績は、どうなっていますか?

先輩 23日間で、累計興収37億2982万円。配給会社は「50億円以上を見込んでいる」とのことだけど、そこまではどうかなあ?

後輩 でも、大人の観客が多くなってきたのなら、平日もそれなりに稼働するでしょうから、分かりませんよ。

先輩 興行用語で言う「尻上がり」だね。あとはどこまでロングランするか。

ズートピア

(C)2016 Disney. All Rights Reserved.

後輩 「ドラえもん」「名探偵コナン」の新記録樹立といい、「ズートピア」の客層拡大といい、この国の映画観客の、アニメを見る目の確かさを感じさせますね。

先輩 そうそう。それはラジオでも言ったんだけど、ファミリー・アニメ、ティーンから大人が楽しむアニメ、このふたつのタイプのアニメ映画の存在は、我が国の映画マーケットをより肉厚にしているぞ、と。

後輩 実写映画ともども、これからが楽しみですね。

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(企画・文:斉藤守彦

    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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