映画コラム

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2016年07月21日

『ファインディング・ドリー』解説、あまりにも深すぎる「10」の盲点

『ファインディング・ドリー』解説、あまりにも深すぎる「10」の盲点


4. 障がいを持っている登場人物(魚)ばかり?


本作では、ニモやドリーのほかにも、障がいを持っている登場人物(魚)が出てきます。

・ジンベエザメのデスティニー:視力が弱いためにいつも壁に頭をぶつけてしまう。
・シロイルカのベイリー:音の反響で遠く離れた場所にいるモノを見つけられる“エコロケーション”の能力を持っているはずなのに、頭をぶつけたためにその特殊能力がなくなったと勝手に思い込んでいる。
・鳥(アビ)のベッキー:見た目は怪しく行動も気まぐれだけど、目を見てしっかり話せば意思が通じることもある。

どれも彼らの欠点であり、障がいではありますが、工夫しだいで改善できるものに思えますよね。彼らがどういう活躍をするかは、観てのお楽しみです。

(C)2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

5.タコのハンクは障がいがあっても、優れた能力を持つ者だった!

タコのハンクは、8本足が7本足になってしまったうえ、外の世界が怖いと怯えています。
しかし、足が1本足りないハンデはなんてことはなく、彼はドリーの言う無理難題にもつぎつぎに解決していく能力を持っていました。
まるで、とても優れた能力を持っているのに、長年病院に入れられてしまったせいで、自己肯定ができなくなった障がい者のようです。

ハンクは、ドリーがすぐに忘れてしまうことについて「うらやましいな、すぐに忘れるんだったら悩みなんてないだろう」と言っていました。ハンクは海洋生物研究所での暮らしをいつまでも覚えてしまうがあまり、外の世界に恐怖を覚えるようになったのかもしれません。

また、ハンクが誤ってスミを吐いてしまって「ごめん」と謝るものの、ドリーが「大丈夫よ、恥ずかしいことじゃないわ」とフォローしてくれるのは、“失禁(自分の意思とは関係なくおしっこを漏らしてしまうこと)”のメタファーでしょうね。
ぶっきらぼうな言いかたをしているようで、じつは親切かつ素直なハンクのことは、すぐに好きになれました。

そのほか、恋人がいなくなったので、急いでいるニモとマーリンにうっとうしく悲しみを伝えようとするシャコ貝も登場していました。
調べてみたところ、どうやらシャコ貝は泳いで移動できるみたいなので、このシーンは「グチなんか言っていないで、さっさと新しい恋人を探しに行けよ!」と訴えているのかもしれませんね。

(C)2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

6.アシカのふたりは“障がい者に偏見を持つ者”?

マーリンと同じく、障がいの可能性を信じずに、偏見を持っているではないかと思えるキャラクターがいます。それは、アシカのフルークとラダーです。
彼らはニモやマーリンに親切ですが、笑いながら近づいてくるほかのアシカが自分たちの岩に上ろうとすると、態度が一変して激しい声で威嚇していたのですから。

これはギャグシーンというよりも、(知的)障がいを持つ者を“仲間にはしてやらない”という悪しき差別なのではないでしょうか。

7.障がいを“個性”として肯定する物語だった。

本作の物語において、ドリーの短期記憶障がいは“欠点”ではなく、最終的に“優れた個性”として描かれるようになっていきます。

本作のテーマのひとつとなっているのは、そうした障がいの“肯定”です。
その肯定は、ただ“弱点を克服する”という努力だけではなく、“やり方や見方を変える”という工夫をすることで可能になる……映画を観た後は、そのようなことを学べるのではないでしょうか。

終盤のドリーが言った“いちばん素敵なこと”が、大好きで仕方がありません。障がいを治すことができない人にとって、これは福音となるでしょう。
前作ではトラブルメーカーという印象も強かったドリーでしたが、今作では彼女のことがもっともっと大好きになりました。

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