映画コラム

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2016年09月02日

オジサマ美声に惚れたら迷わず買え! 『ジャングル・ブック』サントラの魅力!

オジサマ美声に惚れたら迷わず買え! 『ジャングル・ブック』サントラの魅力!

■「映画音楽の世界」


ジャングル・ブック


(C)2016 Disney Enterprises,Inc.All Rights Reserved.



みなさん、こんにちは。

本国アメリカで公開されるや初週末興行だけで1億ドル超えの大ヒットスタートとなった『ジャングル・ブック』。ご存知ディズニーアニメーションの同名タイトルを、『アイアンマン』『シェフ 三ツ星フードトラックはじめました』でおなじみのジョン・ファブロー監督が実写化。日本でも、公開以降その本物と見紛うような映像表現に多くの観客が驚きと感動の声を上げました。


今回の「映画音楽の世界」では、そんな『ジャングル・ブック』とその音楽について紹介したいと思います。


https://m.youtube.com/watch?ebc=ANyPxKr5LWO9T9zWuKJPSmsex7mjZjqpFIdTaqg55xrN7bG7v90Ijc5_U6F2VN_TVZp0YahxZa4WTr8NQSLVxUxm1eCZXboPKg&time_continue=1&v=sKszaRvCgig


動物たちの魅力を追求した世界



本作の主人公は、黒ヒョウのバギーラに拾われオオカミのラクシャらに育てられた人間の子、モーグリ。ジャングルの住人としての掟に従いながらたくましく成長するモーグリを、映画は周囲の動物たちの目線とともに追っていきます。

映画は開始早々に、観客を一気にジャングルの世界へと誘導します。ディズニー作品のシンボルであるシンデレラ城のロゴからの本編突入のくだりは、高揚感という意味では最高のオープニングではないでしょうか。そこからのモーグリとオオカミ、バギーラとのフットチェイスの素晴らしさだけで、この映画の完成度の高さがいきなり証明されるわけです。

そう、今回の映画は動物映画の表現として圧倒的なビジュアルセンスが全編に渡って繰り広げられます。確かに、宣伝文句にあった「少年以外全部CG」というウリはもちろんその通りなのですが、CGだけでは表現しきれない、動物たちそれぞれが醸し出す雰囲気、足音、生活感が違和感なく描かれていて、技術面以上に今までになく「動物の姿」が描かれた作品になっています。そんな動物たちがリアルに存在する世界観の中に、唯一の人間であるモーグリが大切に育てられる世界は、まさに動物と人間の共存を叶えた理想郷のように思えます。

しかし理想郷を描きつつ、トラのシア・カーンをモーグリの命を狙う圧倒的な脅威として登場させることで、映画を理想郷と現実の狭間に置いて、「この世界が崩壊してしまったら」という不安感を観客に与えて行きます。その不安感とモーグリが繰り広げる冒険に重ね合わせることで、めくるめく物語を構築していくエンターテイメントとしてのバランス感覚は、インディーズ作品からハリウッド大作まで的確にコントロールするジョン・ファブロー監督の見事な手腕があってこそのものだと言えます。



歌声を披露する三人の俳優の美声に酔いしれる!



そして、この映画の魅力は映像表現だけではありません。本作ではクマのバルー役ビル・マーレイ、オランウータンのキング・ルーイ役クリストファー・ウォーケン、ヘビのカー役スカーレット・ヨハンソンが実に魅力的な劇中歌を披露してくれています。

まずはバルー役のビル・マーレイがモーグリ役のニール・セディとともに歌う[ザ・ベアー・ネセシティ]。モーグリがバルーのおなかの上にまたがり川を下る場面で、ふたりが実に楽しそうに歌いあげていて、まさに「平和の象徴」というべきシーンに仕上がっています。

あぁなんという羨ましい、幸せそうな場面……。バルーのおなかを太鼓に見立てるモーグリに、仕返しとばかりに水鉄砲を繰り出すバルー。似た構図で言えば、ファブロー監督なら『となりのトトロ』の実写化も可能なのでは……。

https://m.youtube.com/watch?v=RAhmdvKlrcY

キング・ルーイ役のクリストファー・ウォーケンは、モーグリに「赤い花」を生み出す能力を与えて欲しいという願いを[君のようになりたい]という曲に乗せて迫ります。こちらは「野望・強欲」」の歌といったところで、この曲にはウォーケンの絶妙な響きを効かせた歌声がぴったり。長年悪役を演じることの多かったウォーケンだからこそ声だけで表現することができる、欲を前面に押し出した一曲となっています。

https://m.youtube.com/watch?v=15rUJuKCM90


カー役のスカーレット・ヨハンソンが披露するのは[トラスト・イン・ミー]。こちらは「狡猾、魔力のような」曲といったところでしょうか。劇中、霧の漂う深い森へと立ち入ったモーグリの前にどこからともなく姿を現すカー。その声の響きだけで、得体の知れない「なにか」が近付いていることがはっきりとわかり、これは『her』でも魅せたスカーレット・ヨハンソンの、どこかかすれぎみながら耳にしっくりとくる声の演技が光ります。その容姿だけでなく声までも妖艶な雰囲気を醸し出すヨハンソンの歌声で迫られてしまっては逃れられる術はないように思えます。

https://m.youtube.com/watch?v=VEgkBetZY-M

さて、ここでもう一度サウンドトラック盤には輸入盤と国内発売盤があるわけですが、本作は断然国内盤をオススメします。こちらには吹き替え公開版で声優を務めた西田敏行バージョンの[ザ・ベアー・ネセシティ]と石原慎一バージョンの[君のようになりたい]が収録されています。どちらもさすがベテランの歌唱で、英語版の魅力にまったく引けを取らない響きがあり、吹き替え版を鑑賞した方も楽しめる仕様になっています(ほかにも若いながら実力派グループ、Little Glee Monsterが歌う[君のようになりたい]やリミックス曲を収録)。

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まとめ



『ジャングル・ブック』は古典的名作の実写化であり、ディズニー作品が持つ世界観、エンターテインメントとしての魅力を存分に発揮した作品であり、大人も子供も心から楽しめる作品だといえます。古典でありながら技術の先端を行く映像表現に、心躍りともに歌いたくなるような音楽。誰もが楽しめるであろう本作をもしもまだご覧になっていないというのなら、この機会にぜひ、多くの動物たちが暮らすジャングルの世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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(文:葦見川和哉)

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