やっぱり天使過ぎた橋本環奈ちゃん主演の『ハルチカ』は、やっぱりキラキラ映画の域を超える秀作だった!
(C)2017「ハルチカ」製作委員会
主に少女漫画やティーンズ向け小説などを原作とする思春期映画が昨今の日本映画界で大流行していますが、これら俗にいう“キラキラ映画”、あまりの数の多さにマスコミのおじさんおばさんたちは区別がつかないと悲鳴を上げています。
が、きちんと見据えていけばちゃんと個々の作品に特徴もあれば、出来不出来もあることがわかってきます。
そして、中には本当に出来の良いキラキラ映画の快作もあるのです……。
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.208》
佐藤勝利(Sexy Zone)&橋本環奈主演『ハルチカ』です!
「21世紀の薬師丸ひろ子」を超えるほどの存在感を示す橋本環奈
映画『ハルチカ』は、初野晴の人気青春小説を原作とするもので、廃部寸前の吹奏楽部を存続させるため、高校生のチカ(橋本環奈)とその幼なじみハルタ(佐藤勝利)が奮闘し、ようやく部員を確保してコンクールを目指すも、そこで更なる試練にいくたびも直面しつつ、前を歩き続けていく青春純愛ストーリー。
以前テレビアニメ化もされて、そのときもかなり評判になったのでご覧になられた方も多いかと思われますが、実写版もなかなかどうしてアニメに負けず劣らず、生身の俳優の息吹が心地よく画面から客席に伝わってくる躍動感あふれる仕上がりになっています。
設定として面白いのは、やはり肉食系女子チカの元気の良さと、対する草食系男子ハルタとの対比で、パターンとはいえこの部分を橋本&佐藤の両名が実に抜群のコンビネーションで演じてくれているので、見ている側も心地よく乗せられていきます。
また、おっさんでも元男子のこちらとしては、やはりどうしても「天使過ぎる」と評判の橋本環奈ちゃんの可愛らしさに目が行ってしまいます。
初主演映画『セーラー服と機関銃―卒業―』ではヤクザの組長を意外なまでの貫録で演じ切っていた彼女ですが、面白いことに熱演すればするほどオリジナル版の主演・薬師丸ひろ子との資質の違いが露になっていく、そんな興味深い事象も見え隠れしていました。
思うに、まったくの素人からいきなり映画出演を通して厳しく映画人の大人たちに鍛えられながら、アイドルとしても女優としても花開いていった10代の薬師丸ひろ子に対し、橋本環奈はもともと地元福岡でアイドル活動をしながら全国的に認められていった経緯があるだけに、その点だけでも出自が全く異なる分、あまり比較しても意味がないなとそのときは思ったものでした。
ところが今回の作品で、ふと当時の薬師丸ひろ子を彷彿させるほどに彼女が銀幕の中でいきいきしているのを目の当たりにして、前言撤回、橋本環奈こそは21世紀の薬師丸ひろ子、いや、それを超える存在にもなりえるのではないか? そう思えるほどに本作の彼女は魅力的に映えていたのです。
そもそもフォトジェニックに映える彼女ですが、今回はフルートを吹くときの構えそのものからして既に“映画”の理想的構図を具現化させており、またちょっとおかしかったのが意外に地に足をつけた歩き方をする子だなと思ったところで、実は10代の頃の薬師丸ひろ子もそうだったのです!
やはり天使は天使、1000年にひとりと言われるだけのことはあると、改めて感銘を受けた次第。
(C)2017「ハルチカ」製作委員会
ただただ見てくださいとしかいいようのない感動のラスト・シーン!
監督は、あの星野源を役者開眼させた『箱入り息子の恋』(13)で日本映画監督協会新人賞を受賞し、続く『僕らのごはんは明日で待ってる』(17)も堅調だった市井昌秀。
彼の映画はキャラクターに繊細かつ瑞々しい想いで寄り添いつつ、恋や友情といった人間関係を濃密に描出していくところにあるように思われますが、本作はそんな彼の資質がかなりの部分で活かされ、主演ふたり以外の吹奏楽部部員の面々にもきちんと目配りの利く群像劇としても屹立しているのが頼もしいところ。
吹奏楽部を復活させたまでは良かったものの、実はフルートの腕前がからっきし駄目だったチカをめぐって、吹奏楽部の面々が本音をぶつけあっていくシーンを長回し撮影でじっくりと捉えた演出の目線は、緊迫した雰囲気の中にもフレームの内外に佇む若手俳優たちの今後を応援しているかのようでもあり、それだけでも本作に出演した彼ら彼女らは良い経験をしたことだろうと唸らされます。
コンクールをはじめとする演奏シーンの指使いや呼吸の確かさといった、さりげなくも実はこの手の映画で一番大切な要素もきっちり押さえられており、クライマックスを終えてのラストに関しては、もうただただ見てくださいとしか言いようのない感動に包まれます。
学生時代の部活動を背景にした青春映画もまた数限りなく作られ続けてきていますが、思春期を通過していく若者が毎年着実にい続ける限り、このジャンルはなくなることはないでしょうし、その中から本作のような秀作快作も生まれてくること必至。数が多すぎて何が何だかわからないなどと言っている場合ではないのでした。
■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら
(文:増當竜也)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。