映画コラム
ヴィゴ・モーテンセンが自ら航空券を手配し、来日した時の心温まるお話
ヴィゴ・モーテンセンが自ら航空券を手配し、来日した時の心温まるお話
(C)2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.
こんにちは、八雲ふみねです。
今回ご紹介するのは、4月1日から全国公開となった『はじまりへの旅』。
この家族、変わってるなぁ~……と、思います???
タイトルにあるヴィゴ・モーテンセンが以前航空券を自ら手配して来日した時のエピソードも書いていますので、合わせて是非お楽しみくださいね。
八雲ふみねの What a Fantastics! ~映画にまつわるアレコレ~ vol.99
森で暮らすサバイバルファミリー、街に出る!? 奇想天外な冒険と絆の物語
雄大な自然が広がる、アメリカ北西部。電気やガスはおろか、携帯の電波さえ届かない深い森の中で、現代社会に触れることなく自給自足の生活を送るキャッシュ一家。独自の教育方針を持つ父親のベンは、6人の子供たちを厳格に育てている。
そのおかげで子供たちは皆、6カ国語を自在に操り、アスリート並みの体力の持ち主に成長。
18歳の長男ボゥドヴァンは、名立たる大学にすべて合格。
15歳の双子姉妹 キーラーはエスペラント語、ヴェスパーは狩りが得意。
12歳の次男レリアンは他の兄弟と違い、森での生活に疑問を持ち、現在反抗期の真っ最中。
9歳の三女サージは動物の剥製を作ることが趣味で、末っ子7歳のナイは裸でいることが大好きだった。
ある日、入院していた母親が他界。
一家は葬儀に出席するため、そして母の最後の“願い”を叶えるため、2400キロ離れたニューメキシコを目指して旅に出る。世間知らずな子供たちは、生まれて初めて経験する現代社会とのギャップに戸惑いを覚えるが…。
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笑いと感動のロードムービーが、ついに日本にやって来た!
全米ではわずか4館での公開、そこから口コミが口コミを呼び600館にまで拡大し、4カ月以上のロングランを達成。さらに、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞をはじめ、世界中の映画祭で多くの賞を受賞。“映画好き”に後押しされて、ついにはアカデミー賞主演男優賞にノミネート!
『はじまりへの旅』がみせる小さなインディペンデント作品の枠を超えた快進撃は、まさにミラクルと呼べるでしょう。
このヘンテコ家族の笑いと勇気に包まれたロードムービーを手がけたのは、俳優としても活躍するマット・ロス監督。「現代のアメリカで、どのように子供を育てるべきか」という自身の“父としての”悩みを原点に、オリジナルの脚本を執筆したとか。
一方、家長であるベン役で持ち前のカリスマ性を発揮するのは、『ロード・オブ・ザ・リング』3部作のアラゴルン役でお馴染みのヴィゴ・モーテンセン。
“隔絶された家族が外界を知る”という独創的な作風に魅了されたヴィゴと彼を囲む6人の子役たちは、クランクイン前に合宿を行い、ロッククライミング、マーシャルアーツ、さらには羊の解体や言語学習など、劇中で実際に行うことを事前に体験し撮影に臨みました。
結果、素晴らしいアンサンブルを見せる本作は、オンリーワンな珠玉の作品に仕上がっています。
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“普通”ってナニ?意外と答えられない、人生においての大切な設問
自分たちが食べるものは、自分で育てて捕まえる。
哲学書や古典文学から、言語・知識・宇宙理論までマスターする。
断崖絶壁を素手で登り、実践さながらの格闘術の訓練鍛錬を日々繰り返す。
そんな超人的な才能を持ち合わせる反面、コーラやホットドッグを口にしたことがなく、ナイキやアディダスがスポーツメーカーだということさえも知らない子供たち。
街へ出ると森の中での“常識”が一切通じず、そのギャップに大笑いしながらも、ハタと気付くことがありました。
“普通”ってナニ???
文明社会のエゴと堕落を嫌うベンの主張や教育方針はいささか(いや、かなり!?)極端ではありますが、間違っているとも言い難い。ひょっとしたら、現代社会における理想のひとつのスタイルを体現しているかもしれません。
しかし「子供はきちんと学校に通わせた方がいい」と忠告する、ベンの妹の言葉にも一理あり。
要するに、自分が関わっていきたい世界とどう向き合っていくかが大切だということ。ベン父さんが子供たちに紐解いていたのは、究極の“生き方講座”。
奇想天外な親子の“はじめての旅”は、親と子の自立への第一歩を踏み出す旅だったのでしょう。
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気に入った企画があれば世界中どこへでも赴く!ヴィゴ・モーテンセンのタフガイぶり
ヴィゴ・モーテンセンと言えば思い出すことがあります。
それは、自身の主演作『アラトリステ』のプロモーションで来日した時のこと。なんと約束の日時に、日本に到着できないという事態が発生。
どうやらエアチケットのトラブルらしく、このままでは日本でセッティングしていた来日記者会見もプレミア試写会も個別取材もすべてキャンセルとなってしまう。
しかし、そこで屈しないのがヴィゴ様。
「大丈夫、絶対に日本に行くから!!!」と、一分一秒でも早く日本に到着するルートを自力で探し出し、自ら飛行機のチケットを手配。トランジットを繰り返して、一睡もせずに着の身着のままプレミア会場へとやって来たのです。
司会を務める私が控え室で目にしたのは、さすがに疲れた表情で眠気覚ましに煙草を吹かすヴィゴ様。
しかし、映画の上映終了後も彼の到着を待ち続けた大勢のファンを目の前にすると、疲れも吹き飛んだのか、優しい笑顔に。
「気に入った企画があれば世界中どこへでも赴く実力派俳優」という言葉に偽りなし。
自らエアを手配して世界中を飛び回るタフガイぶりに、驚愕したひと幕でした。
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作品情報
はじまりへの旅
2017年4月1日から新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
監督・脚本:マット・ロス
出演:ヴィゴ・モーテンセン、フランク・ランジェラ、ジョージ・マッケイ、サマンサ・アイラー、アナリス・バッソ、ニコラス・ハミルトン、ジュリー・クルックス、チャーリー・ショットウェル ほか
©2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト http://hajimari-tabi.jp/
(文:八雲ふみね)
八雲ふみね fumine yakumo
大阪市出身。映画コメンテーター・エッセイスト。
映画に特化した番組を中心に、レギュラーパーソナリティ経験多数。
機転の利いたテンポあるトークが好評で、映画関連イベントを中心に司会者としてもおなじみ。
「シネマズ by 松竹」では、ティーチイン試写会シリーズのナビゲーターも務めている。
八雲ふみね公式サイト yakumox.com
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