映画コラム

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2017年04月05日

『PとJK』は恋愛だけではなかった!“ギャップのある”3つの魅力を語る

『PとJK』は恋愛だけではなかった!“ギャップのある”3つの魅力を語る



(C)2017 「PとJK」製作委員会




現在公開中の映画『PとJK』は、ポスターや予告編を観ると“女子高生と警察官が恋に落ちちゃった!”な、女子中高生向けの“胸キュン”ラブストーリー映画に思えるでしょう。

その印象も間違いではないのですが……いやいや、本編を観ると驚くことばかりでした!

描いているのは恋愛だけじゃない!
胸キュンどころかいい意味で心が超苦しい!
老若男女分け隔てなく心に沁みる尊いメッセージがある!

本作には、そのような“観る前の印象とギャップのある”魅力がたっぷりなのです。以下にお届けします。

1:「警察官と女子高生が付き合うなんて許されないだろ!」という誰もが思うことを解決する“ある方法”がサプライズすぎる!


さてさて、警察官と女子高生のラブストーリーと聞いて、「そんなの許されるはずがないだろ!」と多くの方が思うのではないでしょうか。方や警察官という最もモラルが問われる職業、方や16歳という年齢でしかも学生なのですから、世間がそれを容認しないのは当然です。

しかし、本作では亀梨和也さん演じる警察官のほうが、その問題を解決するための“ある方法”を取るのです。その“ある方法”は公式サイトのイントロダクションや予告編を見ればわかることなのですが、あえてここでは秘密にしておきます。なぜなら、それは土屋太鳳さん演じる女子高生だけでなく、観客にとっても大きなサプライズになるのですから!

ちなみに、原作者の三次マキさんは、コミックの1巻で「まさかのスピード展開マンガになってしまい、自分でも戸惑っております」とコメントしていました。今回の映画版でそのスピード展開が訪れるのは、なんと始まってからわずか15分ほど(映画内の時間でも2人が出会ってから数時間)!なんという時短テクニックでしょうか!

よくできているのは、その“ある方法”により「これなら警察官と女子高生が愛し合っても問題ないな」と、誰もが納得できるようになっていくことです。一見にモラルに反しているようなことを、“正しいこと”に変えていく過程は、他のラブストーリーにはない魅力に満ちていました。

2:劣悪な家庭環境に置かれている少年を救え!恋愛に止まらない尊いメッセージがあった。



公式サイトや予告編などではほとんど触れられていませんが、本作には“劣悪な家庭環境に置かれている不良少年”が登場します。実は、その不良少年を救い出すという物語が、“女子高生と警察官のラブストーリー”とは違う軸で展開していくのです。
彼の家庭環境の悩みは、簡単には解決できるものではなく、見ていてとても辛いものでした。胸キュンラブストーリーかと思っていたのに、まさかここまで心が痛くなるとは……。

不良少年の物語から導き出されるメッセージは、“1人で何でも解決しようとしないで”ということでした。
土屋太鳳さん演じる女子高生は、ずっと1人でいたような彼と“友だちになる”という形で、亀梨和也さん演じる警察官は、他人を頼ろうとしない彼を“守ってやる”という形で……彼のために行動を起こすのです。

この不良少年のように、意固地になって“自分1人だけで解決しようとする”ことは、多くの場合、間違っています。人は、悩みを誰かに相談して、時には誰かを頼って、時には誰かに迷惑をかけて生きて行くのが、当たり前なのですから。

この映画を、ぜひ何かを悩みを抱えている若い人に(もちろん大人も)観て欲しいです。観た後は、きっと1人で抱え込まずに、誰かに悩みを打ち明けたくなるでしょう。それは多くの場合、正しいことのはずです。

さらに素晴らしいのは、その尊いメッセージが“多角的”に提示されていくこと。実は、この“1人で何でも解決しようとしないで”というのは不良少年だけでなく、土屋太鳳さん演じる女子高生にも、亀梨和也さん演じる警察官にも当てはまるようになっており、よりテーマに説得力を持たせているのです。この脚本の上手さには、感服するしかありません。

なお、不良少年を演じたのは特撮ヒーロー番組「仮面ライダー鎧武/ガイム」や映画『渇き。』に出演していた高杉真宙さん。そのシャープで整った顔立ちが魅力的なのはもちろん、作中の白眉となる名演を見せてくれますよ。

3:函館のロケーションが美しい!ロングショットを使った撮影にも注目!



本作は、北海道函館市を中心としたオール北海道ロケが行われた作品です。その風景が、とにかく美しい!グルメとイベントの中心地である“金森赤レンガ倉庫”や、レトロな木造建築の“遺愛学院”のほか、夜景、坂道、洋館、港の風景、その全てをポストカードにしたくなるほどの魅力に満ちているのです。このことも、ポスターの“ピンク”のイメージとの、いい意味でのギャップがありました。

また、廣木隆一監督が得意とするロングショット(引きの画)が、この函館ロケと相性抜群でした!これにより美しい風景をさらに見渡せるようになり、時には登場人物をあえて小さく撮ることで、その繊細な感情の変化を捉えることにも成功していました。

ドローンを使ったと思しき撮影にも唸らされました。特に体育館にカメラが入り、ブラスバンドの立体的なパフォーマンスを見せるシーンは圧巻!映画でしかできない“空間”を使った芸術が、そこに映し出されていました。



(C)2017 「PとJK」製作委員会




まとめ:親御さんにも観て欲しい作品だった!



メインの客層である女子中高校生という若い世代だけでなく、彼女たちを育ててきた“親”の心情を描いていることも、本作の大きな魅力でした。それは、やがて子が自分の元を離れて、愛する人のところに行ってしまう時のような、極めて普遍的で、かつ複雑な感情なのです。

総じて本作『PとJK』は、以上に挙げたような函館ロケや卓越した撮影技術、役者の演技を大切にした演出、多角的にメッセージを提示する物語などで、“映画でしかできない魅力”に溢れた作品に仕上がっていました。
何より、約2時間の尺に納めながらも、原作漫画のエッセンスを存分に拾い、さらにテーマの説得力を高めた脚本が見事!原作漫画やキャストのファンはもちろん、映画が好きな方にこそ本作を観て欲しいです。


おまけ:実は『そこのみにて光り輝く』だった?



『そこのみにて光輝く』という日本映画をご存知でしょうか。2014年に公開された綾野剛主演の人間ドラマで、第38回モントリオール世界映画祭最優秀監督賞、キネマ旬報ベスト・テン1位のほか個人賞3部門を獲得など、高い評価を得ている作品です。

本作『PとJK』と『そこのみにて光輝く』には、“バラック小屋に住む劣悪な家庭環境に置かれている少年が出てくること”と、“ロケ地が函館であること”という共通がありました。その場所での“心の救済”を、役者陣の卓越した演技で見事に語っていることも同じですね。『PとJK』の少年に感情移入した方に、ぜひ『そこのみにて光輝く』をおすすめします。

そうそう、実は本作には『塔の上のラプンツェル』を彷彿とさせる“夜空に浮くランタン”も登場しています。その幻想的な光景も、一見の価値がありますよ!

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(文:ヒナタカ)

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