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2017-04-29

コラム

キムタクが斬って斬って斬りまくる『無限の住人』!

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■「キネマニア共和国」

無限の住人 木村拓哉

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会


漫画やアニメを原作とする映画が今の日本映画界の主軸と化して久しいものがありますが、ここに来て映画の持つ活劇のダイナミズムをとくと堪能できる快作が登場しました……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.228》

木村拓哉主演の時代劇大作『無限の住人』です!

主人公・万次に扮した木村拓哉の見事な存在感、そして壮絶な殺陣!


『無限の住人』は沙村広明の同名人気コミックの映画化です。

時は江戸時代、妹を殺され、己は望みもしない不死の身体にさせられてしまった元侍の万次が、50年後のある日、妹にそっくりの少女・凜から両親の敵討ちの用心棒を頼まれるはめに。

敵は剣客集団・逸刀流の若き統主・天津影久とその手下たち。

一見面倒臭い素振りを見せつつも、万次は凜のためにひとり、またひとりと、逸刀流のツワモノたちと壮絶な死闘を繰り広げながら、徐々に天津を追い詰めていきます……。

本作のキモとなるのは、やはり何といっても万次に扮する木村拓哉の見事なまでの存在感と、すさまじい殺陣の見せ場の数々にあります。

かつて山田洋次監督作品『武士の一分』でも見事な殺陣を披露していた木村拓哉ですが、実は彼、少年時代に剣道を習っていたこともあって、その剣裁きは少なくとも同世代の他の俳優の追従を許さないほど。

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しかも『武士の一分』が盲目になりながらも侍としての誇りを保持した美しくもダイナミックな殺陣であったのに対し、今回はまったく真逆ともいえる、武士の誇りを捨てた男ならではの荒々しくも豪快な殺陣を披露してくれています。

何せ冒頭からおよそ100人、たたっ斬ります!

その後、次々と逸刀流の強敵と相まみえていき、クライマックスは天津や300を超える幕府軍と大乱闘!

ここで素晴らしいのは、これほどの大仕掛けでありながら、彼の殺陣が全く段取りの域に陥ることなくリアルなアクションが成し遂げられていることです。

こういう殺陣を見たかった!

最近なかなか殺陣の魅力で魅せる時代劇が少なかった中で、本作は久々に時代活劇としての醍醐味を堪能させてくれています。

もっとも、それゆえにドラマとしては途中から原作と異なるオリジナルの展開となっていきますが、木村拓哉の万次が見事なまでに原作の雰囲気を醸し出していますので、結果として違和感を生じることはありませんでした。

凛役の杉咲花、天津役の福士蒼汰も原作のイメージを裏切ることなく、自然体で立ち回っている姿に好感が持てます。

そして、彼らを巧みにまとめあげたのが、日本映画界をリードし続ける風雲児・三池崇史監督なのでした。

無限の住人 WEB版 ポスタービジュアル

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会



三池崇史監督のパワー炸裂!これがチャンバラ時代活劇だ!


テレビドラマの助監督からキャリアをスタートさせ、オリジナル・ビデオで監督デビュー、そしてそれらを見下しがちな映画業界に反旗を翻すかのようなアナーキーな作品群を連打し、いつのまにか日本映画界の巨匠と言ってもいい位置にまでたどり着いて久しい三池崇史監督ですが、ご本人はそういったことなどどこ吹く風で、むしろ最近は映画評論家が何かと「企画不足」だなんだと批判しがちなマンガやアニメを原作とした映画ばかりを好むかのように連投し続けることで、まったく先が予想できない活動展開を示しています。

実際、彼の漫画原作映画は当たり外れも大きいのですが、それらはすべて原作へのリスペクトと映画的醍醐味の描出、そのバランスに腐心するがゆえの結果であり、その意味では今回は少なくとも“映画”として大成功の部類に入ると私は確信しています。

また、これまで『十三人の刺客』など、過去の名作をリメイクした時代劇映画を手掛けてきた彼ですが、今回はその枷がない分、のびのびと万次を銀幕の中に放ち、大暴れさせている。そんな印象も受けます。

ここ数年、時代劇映画が徐々に制作されるようになってきていますが、いざチャンバラを主軸としたものとなると本作が久々といえるでしょう。

しかも、万次VS逸刀流それぞれの決闘における、それぞれの場所や空間に応じた殺陣が素晴らしく、特に戸田恵梨香扮する槇絵との戦いでは長屋の狭い路地などを活かした殺陣の空間構図など、実にお見事でした。

何はともあれ、時代活劇としての『無限の住人』。久々に日本映画が伝統的に持ち得てきたチャンバラの面白さで大いに魅せてくれる快作です。

こういった作品がヒットすれば、また次につながり、さらなる時代活劇の誕生も期待できることでしょう。

原作ファンもそうでない方も、キムタクのファンもそうでない方も、日ごろ日本映画をあまり見ない方も、これはぜひ見ていただきたい!

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(文:増當竜也)