【徹底解説】『崖の上のポニョ』|なぜ両親を呼び捨て?トンネルの意味は?
2.母親のリサは無責任?
前述した“子どもに呼び捨てにさせる”以外でも、リサという母親は「無責任だ」などと批判の対象になりがちのようです。確かに大津波という事態ならともかく、リサは大して緊急でない時も危ないクルマの運転をしすぎですよね。
ただし、リサの「子どもを家に置き去りにすることが母親としてあり得ない」という点に関しては、ちょっと異議を唱えたいです。
リサは正体のわからない光(おそらく老人ホームのおばあさんたちからもの)を見て、そこに向かおうとするのですが……波が静まったとはいえ、暗い夜に、どこが水没しているかもわからない道を進むのは明らかに危険です。リサが「この家は嵐の中の灯台。誰かがいなきゃ」「ここにいてくれたほうがリサの助けになるの」と宗介を説得したのも、危険を冒してでも誰かを助けたいと願う宗介の正義感と優しさを知っていたからでしょう。リサは人の命を救おうとしているのはもちろん、息子のことをとても大切に想っています。
また、あれだけ乱暴な運転をしていたリサでしたが、宗介が「女の子が海に落ちた!」と言った時、すぐにクルマを止めています。嵐が起きて道が水没していった後も老人ホームのおばあさんたちを真っ先に心配していましたし、リサが決して無責任な人間ではない、大切な人の命に関しては人一倍気にかけていることは、明白ではないでしょうか。
余談ですが、リサが夫の耕一に帰れないと電話で告げられ、「家で(ご飯を)食べたい」と宗介に言われると、冷蔵庫を開けてビールをすぐさま飲もうとする、というシーンがあります。宮崎駿いわく、これは「もともと自分が飲もうと思っていたビールではなく、夫が帰ってきたら出そうと思っていたんだと思います」ということなので、無責任というよりも、気分屋で猪突猛進なリサの性格を表しているのでしょうね。
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