映画コラム

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2017年09月22日

【徹底解説】『崖の上のポニョ』|なぜ両親を呼び捨て?トンネルの意味は?

【徹底解説】『崖の上のポニョ』|なぜ両親を呼び捨て?トンネルの意味は?


3.後半は死後の世界が描かれていた?




『崖の上のポニョ』は、よく都市伝説のように「後半は死後の世界が描かれているのではないか?」と語られています。確かに、海の上にたくさん船が寄り集まった“船の墓場”が登場したり、老人ホームのおばあちゃんたちが海の中で「あの世もいいわねえ」「ここってあの世なの?」と話していたり、そもそも知っている町が海に沈んでしまうというとんでもない状況でもあるため、死後の世界になっているという説の根拠はたくさんありますよね。

ここで、物語の大筋を振り返ってみましょう。ポニョは人間になって宗介に会いたいと願うあまり、“生命の泉”を爆発させてしまいました。世界には“大穴”が開いてしまい、人工衛星が落ち始めるほどに重力が崩壊し、月が地球に急接近するほどの大事態になってしまいます。そこで宗介にはポニョを人間にすることと引き換えに魔法を失わせる“試練”が与えられます。宗介は試練に成功し、世界は救われ、ポニョは人間になることができました……。



このように単純に物語を追うと、世界が滅亡しかけるほどの大事態が起こっていて、それらが解決したハッピーエンドであること自体には、異論はないでしょう。そもそも明確に誰かが死んだという描写はないですし、「後半は死後の世界」「登場人物はみんな死んでいる」という説は極端すぎるように思えます。

しかし、宗介が出会ったばかりのポニョに対して何度も「死んじゃったかな?」と言っていたり、前述の船の墓場や、リサが乗り捨てていたクルマなどで、それとなく“登場人物が死ぬ(死んだ)かもしれない不安”が描かれていることも事実です。『崖の上のポニョ』に潜在的な怖さを感じる人が多いのも、そのためでしょう。死が明確に描かれていなくても、「死(の世界)がすぐ側まで来ていた」ということは、あるのかもしれません。



余談ですが、劇中に登場する“満月”も、映画の初めは水彩画のような見た目だったのに、中盤からはクレーターがはっきり見える写実的な描き方がされ、しかも地球に接近してくるためにどんどんどんどん大きくなっていくので、やはりゾッとさせられます。しかも、満月は人の精神を変調させたり、自殺者を増やすという説もあるのだとか……。

また、ポニョの本名である“ブリュンヒルデ”は、北欧神話における、戦死者を天国へ導く半神・ワルキューレの1人の名前です(しかも、宮崎駿が本作の構想を練っている時にBGMとして聞いていたのはワーグナーの楽劇「ワルキューレ」の全曲盤であったのだとか)。ワルキューレには世の終わりまで闘っている勇士をもてなすという務めもあるので、このブリュンヒルデという名前は“世界が破滅する”という予兆を示していた、とも言えるのかもしれません。

※次のページではもっと深い謎を解説! 「ポニョはなぜトンネルをキライだと言った?」

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