映画コラム

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2017年11月17日

新薬投与で殺人事件!?『サイド・エフェクト』サスペンスとしての魅力

新薬投与で殺人事件!?『サイド・エフェクト』サスペンスとしての魅力



(C)2013 Happy Pill Productions.



今、スティーブン・ソダーバーグ監督の新作『ラッキー・ローガン』が映画ファンの間で大いに話題を集めています。
一見『オーシャンズ11』(01)の系譜に属するイキな強盗ものではありますが、こちらはもっとおとぼけコミカルなノリで、肩の力を抜いて楽しめる快作。

長編デビュー作『セックスと嘘とビデオテープ』(89)以来、ラブストーリーからSF、アクションなどさまざまなジャンルの作品に挑戦してきたソダーバーグ監督ですが、今回紹介する『サイド・エフェクト』は、彼がヒッチコック映画ばりのサスペンス・ミステリに挑戦したなかなか手強い作品です!

先行き解読不可能!
ネタバレ厳禁の面白さ!


『サイド・エフェクト』は、違法株取引で服役していた夫マーティン(チャニング・テイタム)が出所し、それを妻エミリー(ルーニー・マーラ)が迎えるところから始まります。

エミリーはうつ病を患っていましたが、まもなくして再発。精神科医バンクス(ジュード・ロウ)はかつて彼女を診ていたシーバート(キャサリン=ザタ・ジョーンズ)に相談し、彼女の了承も得て新薬アブリクサを処方します。

しかし、症状がよくなってきた矢先、マーティンがナイフで刺し殺されてしまいます。

刺したのは、薬で自意識を失ってしまっていたエミリーでした。

果たして彼女は罪に問われるのか? 

一方で、新薬を投与したバンクスも周囲から非難を浴びてしまいますが……。

ミステリ映画のお約束として、これ以上のストーリーを記すのは野暮ではありますが、本作はまったく先行きが読めない作品です。

ここでは社会的信用を失っていくバンクスが、いわゆる探偵的役割を担って、この事件の真相を探っていきますが、彼が行動を起こす中盤あたりからドラマのテイストはどんどん変わっていきますし、またこれ以上あまり詳しく書いてしまうとネタバレになりかねません!




スティーブン・ソダーバーグ監督の
引退宣言と復帰


ただし、ひとつだけはっきり言えるのは、この作品、冒頭に申したようにまったく先行きが読めない、ヒッチコック映画のような二重三重に仕掛けられた罠を主人公が解き明かしていくサスペンス映画であり、ラストに至っては、まさかこのような結末になろうとは! と仰天すること間違いなしでしょう。

ソダーバーグ映画らしく、ジュード・ロウをはじめとして、なかなか魅惑的なキャストが勢揃いしていますが、特にルーニー・マーラの演技は圧巻。また『トラフィック』(00)『オーシャンズ12』(04)とソダーバーグ作品に出演したキャサリン=ゼタ・ジョーンズの貫録も加わり、ここでは女の凄みと男の受難といった裏テーマみたいなものまで痛感させられます。
(ソダーバーグ映画は2000年に発表された『エリン・ブロコヴィッチ』のジュリア・ロバーツをはじめ、常に女性が強く魅力的ですからね)

実はソダーバーグ監督、斬新で冒険心あふれる企画を採り上げてくれないハリウッドの保守的な姿勢に失望するあまり、本作と『恋するリベラーチェ』を発表した2013年をもって映画監督業を引退すると宣言していましたが、さすがに1963年生まれ(現在54歳)で御隠居というのは早すぎるでしょう。
(というか、TV業界に活動の場を移そうと考えていたようです)

実際、彼はその後で『ローガン・ラッキー』の脚本を読む機会があり、これを自分の手で映画化したいという、映画監督としての創作意欲が再燃してきたのだといいます。

そして、『サイド・エフェクト』では一番哀れな存在でもあった(⁉)チャニング・テイタムを主演に、まったく真逆の明るく楽しい大仕掛けの犯罪映画に仕上げた次第。

その意味ではこの2作品、どこか対になっているのかもしれませんね。

[この映画を見れる動画配信サイトはこちら!](2017年11月17日現在配信中)
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(文:増當竜也)

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