映画コラム

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2017年12月15日

『サウンド・オブ・サンダー』は20世紀のレトロSFオマージュ満載!

『サウンド・オブ・サンダー』は20世紀のレトロSFオマージュ満載!



(C)2004 ApolloMedia GmbH & Co. 5. Filmproduktion KG/ QI Quality International / MFF (Sound of Thunder) Limited / Film Group 111 / Coco Co-Production. All Rights Reserved.



『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』『鋼の錬金術師』など、この冬もVFXを駆使した超大作は洋の東西を問わず多数劇場公開されます。来年1月19日には、世界中の天候を制御する気象コントロール衛星が暴走をはじめ、世界中が大パニックに見舞われていく『ジオ・ストーム』も公開されますが、やはりこういったジャンルは映画ファンにとってテッペンともいえるものがあるでしょう。

さて、今回ご紹介する2005年製作の『サウンド・オブ・サンダー』もVFXを駆使して人類の危機を描いたSFパニック・スペクタクル映画です。

タイムトラベルの実現が招いた
人類滅亡の危機!


『サウンド・オブ・サンダー』は、その名のごとく雷をモチーフにし…ている映画では全くありません!?



原作はレイ・ブラッドベリの邦題『いかずちの音』もしくは『雷のような音』(短編小説集『太陽の黄金の林檎』内収録)で知られるレイ・ブラッドリの短編小説。

舞台は西暦2055年。人類はタイムトラベルの開発に成功し、シカゴの旅行代理店タイム・サファリ社はタイムマシン“TAMI”で白亜紀に赴いて恐竜を狩るハンティング・ツアーを企画し、金持ちたちの間で大流行となっていました。

しかし、過去に深く干渉すると歴史が改変してしまうという、実はかなりの危険に満ちたこのツアー。

「過去に(自分たちの所持品など)何も残さない」
「過去から何も持ち出してはならない」
「過去にどんな些細な変化も起こしてはならない」

こういった鉄則が設けられており、トラヴィス・ライヤー博士(エドワード・バーンズ)たちはそういった事態を阻止すべく、ツアー客に同行し監視する仕事についていました。

ところがあるとき、何者かが白亜紀から1.3グラムの何かを現代に持ち帰ったという重大な事実が判明。

そして、これを機に地球上の進化が6500万年の時を経て大きく改変、それどころかタイムウェイヴと呼ばれる「時間の津波」が立て続けに押し寄せ、それは人類滅亡の危機を招くことに!



(C)2004 ApolloMedia GmbH & Co. 5. Filmproduktion KG/ QI Quality International / MFF (Sound of Thunder) Limited / Film Group 111 / Coco Co-Production. All Rights Reserved.



美術や衣裳、CG、俳優陣など
レトロチックSFとしての味わい



本作のユニークな点は、タイムトラベルに伴う恐竜映画の醍醐味から始まり、やがて異常気象パニック、巨大植物の異常繁殖の不気味さ、さらには未知の巨大生物まで出現するという、ワンダー・エンタメのてんこもりといった内容でガンガン迫めまくるところにあるでしょう。

監督は『カプリコン・1』『2010年』『エンド・オブ・デイズ』などSFやサスペンス、冒険ものなどアクティヴな作品群に才を発揮する定評のあるピーター・ハイアムズ。

彼は多くの作品で撮影監督も兼ねており、その映像センスにも定評のあるところで、今回もさりげなくかっちりとしたスコープ画面の構図の妙など、いつもながらに安定した心地よさを体感させてくれていますが、一方で後半の暗闇の地下鉄のくだりなど、見事な光と影の映像美を構築してくれています。

正直、CGのレベルは若干……といった難点を責める声もありますが、見方を変えますと、ちょっと懐かしい空想冒険科学映画のごとき趣を感じることもできます(私はむしろ、監督にそういった意図もあるのだろうと思いながら見ていました)

未来を描きつつ、どこかしらレトロチックな色合いなど美術や衣裳、そしてキャストの佇まいも好もしいところ。

時間の津波が押し寄せる瞬間のファンタスティックな描写や、その直後の殺人アリが人類を襲うSFパニック映画の名作、カール・スティーヴンソン原作『黒い絨毯』(54)ばりのアリの襲来、また巨大植物に覆われてしまった世界は、どことなくジョン・ウィンダム原作『人類SOS』(62)へのオマージュのようにも思えます。

さらにはタイムサファリ社社長(ベン・キングスレー)の言動はピーター・ベンチリー原作『JAWS』(75)の悪徳市長を彷彿させ、後半に登場するヒヒ型生物はピエール・ブール原作『猿の惑星』(68)を、というのはかなり強引にしても、そこでのサバイバル劇はまさにポール・ギャリコ原作『ポセイドン・アドベンチャー』(72)、そしてもちろんマイケル・クライトン原作『ジュラシック・パーク』(93)にH.G.ウェルズ原作『タイムマシン 80万年後の世界へ』(62)などなど……。

要はこの作品、ブラッドベリの短編をフックに、20世紀SFなどのエンタメ・オマージュを図っているのかと勘繰りたくなるほどなのです。

ピーター・ハイアムズ監督作品はA級の予算でもどこかしらB級プログラムピクチュア的な味わいを良い意味で保持したものが多く、その意味でも本作はその好例として、先達の偉業に楽しく倣いながら製作したものかもしれません。

ということで、今ならば最新技術のVFXを『スター・ウォーズ』などで愉しみつつ、お茶の間ではちょっとしたレトロ感覚で本作を愉しむというのも一興でしょう。

あ、タイムパラドックスものはその矛盾点を指摘されるのが常ですが、私自身はタイムパラドックスの定義に正解はないと思っています(だって、未だに誰もタイムリープなど体験したことがないか、体験したことに気づいてないか、なのですから⁉)。それゆえに、大いに空想の翼を拡げることこそ肝要ではないかなとも。

[この映画を見れる動画配信サイトはこちら!](2017年12月15日現在配信中)
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(文:増當竜也)

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