元・若者の僕でさえもナイフで抉られるような感覚になった…『リバーズ・エッジ』
3回目の更新となりました。さて、今回もおこがましくも紹介していきたいと思います。
『リバーズ・エッジ』
(C)2018「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社
2018年、これから公開される邦画の中でも、一際注目度の高い『リバーズ・エッジ』をご紹介。こちら、まもなくの全国公開(2月16日公開)。
原作は誰もが知るといっても過言ではない、岡崎京子。その彼女の代表作で、青春漫画の金字塔と呼び声の高い『リバーズ・エッジ』。90年代を牽引し、今なお語り継がれている伝説の作品の映画化です。
岡崎京子世代は僕の年齢より、もう少し上でしょうか、当時はお兄さんお姉さんが読んでいたという印象です(この世界にファンがたくさんいるので、今回ここに、僕ごときが書くのは、本当に震えが止まりません)。
(C)2018「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社
主人公・若草ハルナを演じるのは、若手屈指の実力派で数多くの作品で存在感を発揮している、二階堂ふみ。ミステリアスな空気を纏い、イジメられる日々の中、河原の死体を心の拠り所にしている山田一郎役に、今後の活躍が注目される吉沢亮。
ほか、吉川こずえ役にSUMIRE、観音崎役に上杉柊平、田島カンナ役に森川葵、小山ルミ役に土居志央梨、と これからの映画界を担っていく役者がこれでもかと集結。
(C)2018「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社
これは本当に芝居をしているのか、いや本人のまんまではなかろうかという錯覚に陥った。それはきっと随所に差し込まれるインタビューシーンが影響している。原作にはもちろんなく、監督の行定勲による演出。それぞれのキャラクターを演じた上でのインタビューだが、いつしかそれがキャラなのか本人なのかと境目が、無くなっていく。
“演じる”というものから一つ世界が変わったような感覚でいて、それがよりリアルで痛々しく人間臭さ滲み出ている。そのシーンの及ぼす効果をモロに受けてしまった(狙いに見事に嵌る、いい観客になっていましたね)。
(C)2018「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社
そして、閉塞感を最大限に引き出したのは、スタンダードサイズの映像。あまり見かけないサイズで、ここ最近では、グザヴィエ・ドラン監督の『Mommy/マミー』で使われた手法でしょうか。この画角で役者をバストサイズで撮ると、ほとんどその役者しか映らず、観客はその一挙手一投足に集中します。
行定監督もこの効果狙うと同時に、さらには漫画のコマのようにしたかったと、インタビューでおっしゃっています。この上映方法で、若者の閉塞された日々、それぞれがギリギリの岐路に立っているのが、より引き立っているように感じました。
そして何より大注目は、主題歌・小沢健二。この作品の為の、岡崎京子の盟友であり、深い絆をもつ小沢健二による書き下ろし。怒涛のように迫る映画を包み込み、絶望の淵にいる者に微かな希望を見せてくれる。あ〜。(う〜これは語れません。皆さま、是非とも映画館で体験してください。)
(C)2018「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社
90年代の話だけれども、昔青春時代を過ごした、元・若者の僕でさえも、ナイフで抉られるような感覚になりました。映画の中では、詳しく時代設定を厳密に提示していない作り(要所要所では90年代の記号的要素は入っている)の為に、今この時代にも通じるものがドカっとある。
どの世代の人間でも、きっとそれぞれの“淵”に立っていて、今現実と向き合っている。若者だけが途上ではない、大人だろうが、仙人だろうが、この作品のもつ、暴力的でありながらも衝撃的に現実を見せつけられるエネルギーに、きっと影響を受けるでしょう。
この“事件”を、皆様、是非とも映画館で、目撃してください。
それでは、稚拙な文章ではありますが、今回も橋本淳が、おこがましくも紹介させていただきました。
(文:橋本淳)
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