2018年04月08日

ラブシーン満載の『娼年』で松坂桃李が演じたリョウについて考える

ラブシーン満載の『娼年』で松坂桃李が演じたリョウについて考える

2018年4月6日(金)より、松坂桃李さん主演映画『娼年』が上映中です。映画はR-18+指定、2016年には15歳以上の年齢制限を設けて舞台化されていましたが、どちらも激しいラブシーンも含まれていることで話題になっています。



(C)石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会


今年は松坂桃李イヤーになるかもという声も聞こえてきますが、デビュー以来、どちらかというと万年松坂イヤーのような活躍ぶり。その中でも、今回演じた娼夫(男娼)役はこれまでにない大胆さと危うさを持ったキャラクターです。

激しさのあまりラブシーンが強く印象に残りますが、今回の「シネマズ女子部」では、主人公のリョウはどんな人物で、松坂さんがどんな風に演じたのか、劇中でラブシーンがどのように作用していたのか考えてみたいと思います。

『娼年』あらすじ


娼年 (集英社文庫)


直木賞候補にもなった石田衣良さんの同名小説が原作となっています。原作は、「娼年」、「逝年(せいねん)」、「爽年(そうねん)」の3部作で完結しました。

バーテンダーとしてアルバイトしていた大学生のリョウが、訪れた御堂静香(真飛聖)に見い出され、娼夫としてデビューすることに。

作品の序盤で、リョウが「女なんてつまらないよ」と言い放つことから、女性に対して冷めきっていることが伺え、これといって情熱もないままにバーでアルバイトをしており、大学にもほとんど行っていないような人物だとわかります。

そんなリョウが女性との出会いを経てともに時間を過ごすなかで、女性のなかに隠された欲望やその奥深さに心惹かれていき…。

リョウの人柄や成長が見える部分




(C)石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会


今作は、リョウが女性との時間を重ねることによってリョウが少しずつ心を開き、成長していく物語です。とはいえ、その成長をこまかく読み取るのは難しいもの。

とくに映画では、セリフなどの言葉による情景、心理描写が少ないうえに展開が早く、その分、「とにかくラブシーンが多いんだ」と感じてしまうので、リョウの人間的な部分が伺えるいくつかのポイントを挙げてみました。

極力ネタバレは避けていますが、内容にも触れていますので、ご了承ください。

1:ビジュアル面での変化


誰の目にもわかりやすく、ビジュアルの変化はリョウの心境を表しているといえるでしょう。

娼夫として働くまえに、御堂静香とスーツや下着を買いに出かける場面があります。静香の教えの通り、最初はジャケットを羽織る程度の抜け感のあるスタイルでしたが、仕事を重ね、娼夫としてランクアップしてからは、スーツ姿になっていました。

服は全体を通してネイビーなど暗めのトーンでしたが、髪型の変化にも注目です。娼夫として働く前は片目がほとんど前髪に隠れた状態で、ミステリアスな雰囲気を醸し出すことで、冷めた人物像を演出していました。それも、娼夫としての成長とともに髪型が整い、前髪が目にかかっていることはなくなりました。

さらに前半は、松坂さんが主演を務めたドラマ『視覚探偵 日暮旅人』を彷彿とさせるうつむき加減の歩き方が特徴的でしたが、それにも少しずつ変化がありました。しっかりと前を見据えて歩くようになり、ラストシーンのカメラに向かって歩いてくるような姿は印象的でした。

2: ヒロミとの“歯医者”の話


リョウにとって初めての客であるヒロミ(大谷麻衣)とのシーンは、リョウの緊張や戸惑いがよく伝わってくる一方で、欲望の衝動に駆られるふたりを笑いたくなるような滑稽さのある場面でした。

注目したいのは、ふたりが帰り道に話した歯医者の話とその場面。他愛もない、どうでもいい話を楽しそうに話しているのは、ふたりの距離が縮まった証拠です。秘密を共有したような、ふたりだけの空間が出来上がっていましたね。ヒロミがセクシーで艶やかな印象から、かわいらしい一面を見せていたのもリョウに心を許したからでしょう。心を通わせたからこそ出せる距離感が観ていて微笑ましい場面でした。

3:御堂静香と咲良


リョウは、娼夫として自身が所属するボーイズクラブ「Le Club Passion」のオーナー・御堂静香を母親と重ねているところがありました。静香の娘である咲良も含めて3人は、仕事仲間でありながら、家族のような関係を築いていきます。

3人で居酒屋へ飲みに出かけた部分も印象的でした。リョウがふたりに対して心を開く様子がわかりやすく表現されている場面です。さらに、咲良とのニ度にわたる“情熱の試験”は一度目との変化をしっかりと目に留めておきたいところです。

もちろんリョウは、静香と母親を重ねて接しているだけでなく、女性としての魅力に惹かれている部分もありましたが、これはストーリーの重要な部分にも関わりますので、ぜひ劇場で。

4:昼と夜の描写


『娼年』では、「昼の世界」と「夜の世界」の2つを分けて描いています。

「昼の世界」は家族や大学の友人たちなど多くの人が属している部分であり、人の表面的な部分を表しています。一方「夜の世界」は、娼夫やホストなどが属し、人間的な側面においては隠された欲望の部分を表しています。この「昼」と「夜」はまったく別の世界として描かれていることが、作品により深みをもたらしています。

リョウと同じバーで働いているシンヤ(小柳友)が、娼夫の仕事にのめり込むリョウに対して、昼の世界で生きていけるといった内容のことを話す部分が象徴的です。シンヤの気持ちもわかるのですが、「夜の世界」に居場所を見つけたことを、リョウ自身が再確認する場面になっていました。

また、大学の授業ノートをバーに持ってくるメグミ(桜井ユキ)との人間関係も、「昼」と「夜」を分けて描くうえで重要な部分になっています。

リョウを繊細に演じた松坂桃李




(C)石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会


ラブシーンに富んだ今作ですが、じっくり観てみると、いろんな要素からリョウの心情の変化を想像することができます。欲望や衝動に突き動かされる部分と、センセーショナルな情緒の部分、それぞれ緩急をつけて繊細に演じ分けた松坂桃李さん、さすがです。いかにもというような、いやらしい雰囲気がないところが、リョウの純真さを引き立てていました。

R-18指定とあって確かに過激な部分もありますので、尻込みしている人もいるかもしれませんが、観終わったあとは心が穏やかに爽やかになる作品です。

それほど登場シーンは多くなかったですが、アズマを演じた猪塚健太さんも、ポキっと折れてしまいそうな(!?)危うさがセクシーでした。そして、リョウのその後が気になった方は、ぜひ小説も手にとってみてください。リョウや、その周りの人物の変化が描かれています。

映画『娼年』は現在、劇場で上映中です。

(文:kamito努)

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