映画コラム
映画で答える人生相談|「この世は陰謀だらけですよね?政府はサブリミナル効果で私たちをコントロールしているんですよね?」
映画で答える人生相談|「この世は陰謀だらけですよね?政府はサブリミナル効果で私たちをコントロールしているんですよね?」
読者の皆様から寄せられたお悩みにアンサーしつつ、相談内容に沿って一本の映画を処方する当コラム。
送られて来る悩みはすべてが捏造なのだが、今回はガチだ。
しかし「どうせ勝手にデッチあげてんだろ」と言われたら反論する術はない。だけどそんなこたぁどうだっていいじゃねえか世の中嘘だらけだぜ! ということで当連載もついに6回目。これは本当。
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今回のお悩みはこちら。
「この世は陰謀だらけですよね?政府はサブリミナル効果を使って私たちをコントロールしているんですよね?」
今回のお悩み
こんにちは。この世は陰謀だらけだと思います。そうですよね?
ネットの動画広告を観ていても、サブリミナル効果を使って僕たちをコントロールしているように思います。
ニュースなどもそうです。不都合な真実を隠すために、どうでもいい情報を流しているのです。
僕は昔から陰謀について調べることが好きだったのですが、最近はおかしなことが多すぎて「どうやら本当なのでは?」と思っています。理由はたくさんあります。本を読んだり、ネットを検索すればすぐに出てきます。
ですがツイッターで拡散しようとしても、ネットの掲示板に書いても、誰も信じてくれません。
この世は陰謀だらけですよね?
(東京都:35歳:ペンネーム:ジューダス・プリースト佐藤 無職)
この世が陰謀だらけだと考えているあなたに処方する映画は
お便りありがとうございます。ジューダス・プリースト佐藤さんは「この世界が陰謀だらけだ」とお考えのようで、一人で考え込んでしまっているのでしょうか。お気持ちはよく……わかりませんが、気になることが常に頭のなかにあると快適に暮らせませんよね。
さて、ジューダス・プリースト佐藤さんが言及されている「サブリミナル効果」というものは実際に存在します。
「閾下知覚(subliminal perception)」に関しては、1950年代に米国でおこなわれた実験が有名です。映画の放映中に「ポップコーン(を食べろ)」というメッセージを、人間が知覚できるかできないかの一瞬だけ写して効果を検証したのですが、結果としてポップコーンの売上は増加し、人々に大きな衝撃を与えました。
自分が気づかないところで、悪意のある第三者によって情報がコントロールされてしまうというのは、とても恐ろしいことです。それを知ったあなたが気になってしまうのも、仕方がないことだと言えるでしょう。
しかし、サブリミナル刺激に効果があるかについては、実は諸説ありまして、一進一退を続けているような状況です。ジューダス・プリースト佐藤さんは「サブリミナルに効果がある」といった説に対する反証などをお読みになったことがあるでしょうか?
「それすらもサブリミナル効果を隠すためのテクニックである」と言われたら返す言葉もありませんが、世の中の真実を知りたいならば、自分が得た情報を疑ってみることも必要です。
あなたのお悩みは「陰謀」、「不都合な真実」、「どうでもいい情報」などといった言葉が並べ立てられていますが、どれも具体的ではありません。この点から、あなたのお悩みは妄想である可能性が高いとの立場を私はとります。失礼を承知で書いてしまえば、妄想癖があるのではないでしょうか?
昔から「人の振り見て我が振り直せ」と言います。同じように妄想に取り憑かれてしまった人間がどうなるかを観ることで、反面教師としていただきたいと思います。そう考えたときに、今回あなたに処方する映画はこれしかないでしょう。
『アンダー・ザ・シルバーレイク』
© 2017 Under the LL Sea, LLC
『アンダー・ザ・シルバーレイク』は、2018年の米国映画で、監督は劇中にやたらとプールを登場させることで有名なデヴィッド・ロバート・ミッチェルが務めました。
舞台は夢の都ロサンゼルス。33歳で無職の主人公サム(アンドリュー・ガーフィールド)は、ある日一人の美しい女性、サラ(ライリー・キーオ)と出会います。しかし、サラは突然失踪、サムは彼女を捜索しはじめますが、やがてセレブレティや億万長者、ホームレスの王やカルト宗教などが複雑に絡みあった陰謀に巻き込まれていきます。
ウィリアム・バロウズのカット・アップ/フォールドインのように数々の記号や言葉が折り重なり、新たなる意図や意味を生み出しながら物語は紡がれます。
サムは劇中で流されるR.E.M.の『ホワッツ・ザ・フリークエンシー、ケネス?』で歌われるように「周波数が合って」しまい、醒めない悪夢の水面を漂い続けるのですが、これはまさにあなたの症状を重くしたような感じで、今のご気分にガッチリとハマることでしょう。
鑑賞したならば、おそらく「あ、この人ヤバいな。俺もまだまだだな」と我に返ることができるはずです。妄想世界からの生還おめでとうございます。
「ヤバい映画を観たらヤバくなってしまう」というのは「人を殺すゲームをしたら残虐性が高まる」くらい雑な考えであり、本作のような作品は、妄想癖のある方へのアスピリンとして機能する側面も持っています。映画館の座席や家のソファなどの絶対的な安全圏から危ない人を観たり、ゾンビに噛まれる人を観るのは、ある意味で人を癒やす効果があるのだと、私は思います。ぜひご覧になってくださいね。
□関連記事:『アンダー・ザ・シルバーレイク』ヤバすぎる「3つ」の魅力はこれだ!
ちなみに、私も本作を観ましたが、精神に異常をきたしておりません。
本作を観て、もっと妄想をこじらせてしまうかもしれない。世界の真実に近づいてしまうかもしれない。いや、むしろこの映画自体が真実を隠すための森なのかもしれない。と考えてしまうかもしれませんが、大丈夫です。私も本作を観ましたが、精神に異常をきたしておりません。
劇中に出てくるカート・コバーン、彼のバンドであるNIRVANAの『ネヴァーマインド』のジャケットが1970年7月号の「PLAYBOY」誌の表紙に酷似しているというのは、単なる物語上の演出です。バックワードマスキングがほどこされたレコードは『OBLADI OBLADA』や『天国への階段』でも使われています。世界中の人が知っています。単なる物語上の演出です。こういった考えが出来ている時点で、私は精神に異常をきたしておりません。
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「フクロウのキス」、「ホーボーの暗号」など、映画は様々な言葉が羅列されていきます。ウィリアム・バロウズの言葉を借りれば、言葉は宇宙から来たウィルスです。再びウィリアム・バロウズを引き合いに出せば、23は「23エニグマ」と呼ばれる非常に重要な数字です。両親は子供のDNAに染色体を23本ずつ与えます。ユリウス・カエサルは23回突き刺されて死亡しました。ジョン・F・ケネディが暗殺されたのは1963年11月22日、リー・ハーヴェイ・オズワルドは1963年11月24日に殺されました。この中間の日付は23日です。『アンダー・ザ・シルバーレイク』の日本公開日は10月13日、合計23です。『ホワッツ・ザ・フリークエンシー、ケネス?』の元ネタである「ケネス! 周波数は何だ?」と叫びながらダン・ラザーを殴ったウィリアム・ダガーは8月31日に逮捕されました。31から8を引くとこれまた23です。そして、23エニグマは災害に関して大きな重要性を持っています。これは単なる事実であり、私は精神に異常をきたしておりません。
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また劇中キーワードとして登場する「太陽みたいにさわやか(Dependable as Sunshine)」とは、1953年に使用されたコカ・コーラのキャッチコピーです。サラは飼い犬に「コカ・コーラ」という名前を与えました。サラを演じるライリー・キーオはかつてコカ・コーラの広告に出ていたエルヴィス・プレスリーの孫娘です。人間の購買行動における動機研究では、映画の最中に「コカ・コーラを飲め」とサブリミナルメッセージを入れたところ、コーラの売上が顕著に増加したという結果が出ています。エルヴィス・プレスリーは『エド・サリヴァン・ショー』に9月、10月、1月と、3回出演しています。数字を足してください。さらに、プレスリーがカントリーの殿堂入りを果たしたのは9月23日、授賞式のあったランド・オール・オープリー・ハウスの座標は北緯36度12分23秒です。私は精神に異常をきたしておりません。
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「犬殺しに気をつけろ」という落書きは、脳内にアイフォンを埋め込んだ富裕層からのメッセージです。「イエスとドラキュラの花嫁たち」は酸化防止剤に対する警告です。私は精神に異常をきたしておりません。スカンクの匂いは2km離れていても感じられます。意識の伝播も2kmくらいであれば問題ありません。彼等が傍受できる意識も2kmほどでしょう。私は精神に異常をきたしておりません。
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路面電車の停留所、親切な女性、無償で診てくれる医者、カルロス・カスタネダが解説する「意図」、不正直な人間、黙っていろ、黙っていろ、黙っていろ、巨大化するジム・モリソン、ジャック・ケルアックの散文詩を書くための10箇条、家の外で酔っ払ってはいけない、バーバリアン・イルミナティ、ナイト・オブ・フィティアス、300人委員会、都会という迷宮、カルト教団の予言、天国へのヴィジョン、遺伝子コードの帰還、見えるもの、見えないけれど温度を感じるもの、聴こえるものの違いは? 赤い雀を見たことがある? ジーニー・ナイトロは『パルプ』だけじゃない、捜し物を依頼されているのはニック・ビレーンだけじゃない。私は精神に異常をきたしておりません。
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サムは私です、私はサムです、
映画は現実です、現実は映画です。
私は精神に異常をきたしておりません。
ジューダス・プリースト佐藤さんは私です、私はジューダス・プリースト佐藤さんです。
今こそ、世界の謎を解き明かし、ともに世界を救いましょう!
私は精神に異常をきたしておりません!
(文:加藤広大)
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