『ダンボ』感想&合わせて楽しみたい動物映画15選!
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ディズニーアニメの名作『ダンボ』(1941)が、まさか“あの”ティム・バートン監督の手によって実写化されようとは誰が予想できただろう。唯一無二の世界観を構築して高い人気を誇るバートンが、“あの”『ダンボ』を蘇らせる…。もはや映画史における、ちょっとした事件ではないかとも思うが、よくよく考えればバートンは「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」をモチーフに『アリス・イン・ワンダーランド』を大成功に導いている。
そんなティム・バートン版『ダンボ』はオリジナルに敬意を払いつつ、バートンらしくもあり、現代的な解釈も盛り込んだ作品になっていた。異端児を忌み笑うキリキリとした手触りや、ダンボが空を駆け巡る描写は今だからこそ実現、あるいは再現できたのではないだろうか。
ダンボ、新たな命を得る
アニメーションによって誕生したダンボというキャラクターを、最新技術を用いるとはいえ新たに視覚効果という手法で生み出すというのもプレッシャーは大きかったはず。いまやアニメ映画の枠を超えた、アイコン的なキャラになっているとあってなおさらだっただろう。それでもいざ本編を観れば不思議と愛着が沸いてくる“新生ダンボ”の魅力は、その大部分をバートンが引き出したと言っても過言ではない。
バートンといえば、異端児や異形のものを描くことに関して天才的な手腕を発揮してきた。例えばバットマンやジョーカー、ペンギンといったアメコミキャラから、『シザーハンズ』のエドワードや実在の人物エド・ウッドのように、バートンだからこそ向けられる“愛情”があってよりスクリーンのなかで輝きを得たキャラは多い。今回はダンボという“普通ではない”子ゾウに対してバートンは変わらない愛情を注いだどころか、むしろバートン自身年を重ねたことで落ち着き払って我が子を描いているようにも見えた。
オリジナルと同様に母親と引き離されるダンボは、やがて自分の力で翼を得ることになるが、サーカス(あるいは後半のテーマパーク)という名の檻のなかで飛び回るシーンは、窮屈さ、生き難さのようなものを感じてしまう。バートンの意識がどれだけダンボと呼応したのかは本人しか知る由もないが、檻の中で窮屈そうに飛ぶダンボはどことなく才能を押さえつけられ苦しんでいたころのバートンと重なるようにも見えた。だからこそ余計に、終盤に向かうにつれダンボが母親のために、自由のために空を舞う姿は力強く健気にも映るのだ。
『ダンボ』に集結したキャストの魅力
バートン作品といえばジョニー・デップだが、今回主演を務めたコリン・ファレルの雰囲気もまた素晴らしい。戦争を経てあまりにも大きな代償を払ってきた男・ホルトのどことなく虚ろ気な佇まいを放つには、ファレルにとってもチャレンジだったのではないか。それが2人の我が子やダンボと過ごすことで表情を取り戻していく様子は、ファレルの繊細な表現の上に成り立っている。
ホルトの娘・ミリーを演じたニコ・パーカーの存在感も強く、母親である女優のタンディ・ニュートン譲りの美貌と目力で観る者の目を釘づけにさせてくれる。またバートンの新たなミューズとなったエヴァ・グリーンも安定の妖艶さがあり、ダンボとの“共演”は本作の魅力のひとつ。そして今回のキャスティングで多くの『バットマン』ファンがニヤリとしたのではないだろうか。マイケル・キートンとダニー・デヴィートの共演だ。2人はかつてバートンの『バットマン リターンズ』でバットマンとペンギンを演じた間柄。本作の2ショットでは思わずニヤニヤしてしまうし、何よ2人がバートン作品で再共演を果たしたこと自体が嬉しい。
ダンボが魅せる愛くるしさと、ダンボを支えるキャストの魅力。オリジナルに新たな解釈を取り入れた新生『ダンボ』の物語を見守ってほしい。
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さて、ここからは動物大好き人間の筆者が独断でチョイスした「動物映画」を紹介。“可愛い動物”が登場したり、動物の習性がしっかり描かれた作品を中心に20作品を挙げていこう。
人類の良き友よ──“イヌ編”
『僕のワンダフルライフ』
『サイダーハウス・ルール』や『HACHI 約束の犬』などで知られる名匠ラッセ・ハルストレム監督によるドラマ作品で、日本では2017年9月に公開された『僕のワンダフルライフ』。W・ブルース・キャメロンの小説を原作にしてイヌと人の巡り会いにスポットを当て、生まれ変わっても“はじまり”の飼い主のもとへ戻ろうとするベイリーの人生ならぬ犬生を描く。
イヌ(に限らないが)を飼ったことがある人なら、あらすじを聞いただけで涙腺を刺激されそうな本作。序盤から少年イーサンとゴールデン・レトリーバーのベイリーの友情が描かれていて、やがて迎える“別れ”に胸をきゅっと締めつけられる。ベイリーの“声”を担当したジョシュ・ギャッドの愛嬌ある声音も相まって、転生を繰り返しながらイーサンのもとへ戻ろうとするベイリーの旅路は、時に切なくそして心に染み入るようにあたたかい。
『101』
ディズニーアニメーションの名作『101匹わんちゃん大行進』を実写化した、1996年(日本公開は翌年3月)のコメディ作品『101』。101匹わんちゃんでもお馴染みブチ模様のダルメシアンが大挙して登場する本作は、本物のダルメシアンと特殊視覚工房「ILM」によるCG犬が見事な調和を果たしている。何より動物映画では主役の動物に“食われがち”な役者陣も魅力的で、特にクルエラ・デ・ヴィルを演じたグレン・クローズの振り切った演技が実に痛快な作品となった。
愛くるしいダルメシアンがクルエラに狙われるハラハラ感はあるものの、THE 王道なファミリー映画感はまさにディズニー印といったところで、純粋に安心して観られる作品だ。続編『102』も公開されていて、前作から続投したクローズの悪役ぶりがますますパワーアップしているのも見もの。ちなみにクローズの吹き替えを担当したのはタレントの山田邦子で、これがまた妙にしっくりきているのだ。可愛らしいわんこVS憎たらしいデ・ヴィルという構図を引き立たせる意味でも、絶妙なボイスキャスティングだったと言える。
『ペット』
今夏、最新作『ペット2』の公開が控えているイルミネーション制作の3DCGアニメーション。主人公の小型犬マックスと大型犬デュークの友情と冒険が描かれたコメディ作品で、マックスたち以外にも大挙して様々な“ペット”たちが登場する。プロットのスタート地点は“飼い主の不在時にペットたちはどのように過ごしているのか”という点にあり、早期から展開されていたティーザートレーラーでも好き勝手に過ごすペットたちの姿が前面に押し出されていた。
本編ではふとした弾みでマックスたちが飼い主ケイティの部屋を飛び出すことになってしまい、帰宅への“旅路”がメインストーリーになる。実際にイヌは帰巣本能が強いとされていて、アニメーションながらそういった習性がしっかりストーリーに溶け込んでいるのが上手い。かつてディズニーが実写でイヌ・ネコが家路を目指す『奇跡の旅』を製作して、過酷な冒険に筆者はハラハラが止まらなかったが、不思議なことに『ペット』もアニメだと分かっていながらドキドキしてしまうのである。
ツンデレ感がクセになる──“ネコ編”
『旅猫リポート』
イヌに比べれば飼い主に対する忠誠心はほぼないように思われるが、その分足元に寄ってきた時の破壊力は誰しもが知るところだろう。そんなツンデレ感が見事に表現されていたのが、2018年10月公開の『旅猫リポート』。人気作家・有川浩の同名小説を原作に、主演を福士蒼汰が務め広瀬アリスや竹内結子らの共演で“実写映画化”に成功している。
最新のCGIやアニマトロニクスを使えばいまや実写化もたやすい“アニマルムービー”だが、本作の成功のカギは元野良猫・ナナを演じた“ナナ”による卓越した演技力の賜物だったと言っても過言ではない。福士を見つめる眼差しや彼に寄り添う姿は、長い時間を通して築かれた信頼関係がありありと伝わってくる。それだけに1人と1匹の旅路は微笑ましく、時が経つにつれて切なさも増していく。
『長ぐつをはいたネコ』
3DCGによって生み出されたキャラクターとはいえ、映画史上最も可愛らしく描かれたネコがアニメ『シュレック2』に登場した長ぐつをはいたネコこと“プス”だろう。トレードマークの帽子をきゅっと握りしめながら上目遣いにシュレックを見つめる姿は、イヌ派をもネコ派に落とさんとする製作側の強固な意志を感じさせるものだった。
そんなプス人気に乗じたスピンオフが2012年3月公開のアニメ映画『長ぐつをはいたネコ』。本シリーズから引き続きボイスキャストには『マスク・オブ・ゾロ』のアントニオ・バンデラスが登板し、ネコの俊敏性を活かしたゾロも真っ青な剣捌きを見せている。ドリームワークスアニメーションらしいユーモアセンスもあり、ロドリーゴ・イ・ガブリエーラの情熱的なギター曲もピッタリな作風となった。
長い耳とモフモフ感が可愛い──“ウサギ編”
『ピーターラビット』
ウサギと言えばぴょんと伸びた耳(垂れ耳もいるけれど)、丸みを帯びた体で鼻をひくひくする姿がなんとも愛くるしい…… そんなイメージを見事に破壊したのが2018年5月公開の『ピーターラビット』だ。確かに本作に登場するウサギたちは可愛らしいし最新技術で描かれたフサフサな毛並みも見ていて撫でたくなるきめ細やかさ。ただ如何せん、人と苛烈極まる生存競争を繰り広げるのが特徴なのだ。
裏を返せば映画だからこそ描ける仁義なき人対ウサギのバトルだが、それにしたって爆発まで起きるアクションは凄まじい。主人公ピーターラビットの兄弟たちも個性が強いが、それに対峙するマグレガー役のドーナル・グリーソンの全力投球な演技も見もの。そんなド突き合いを経て人と野生動物がどのように折り合いをつけるかは、まさしく“ピーターラビット”という作品のマジックに相応しい。
『ズートピア』
日本でも大ヒットを記録したディズニーアニメーションによる2016年の『ズートピア』。多種多様な動物たちが登場しているが、ここでは主人公のジュディに絞って“ウサギ映画”として紹介したい。本作では人間の世界をそっくりそのまま動物に置き換えただけでなく、前述のように多様な種類の動物たちが“共存”する社会が描かれている。動物に例えながらメッセージ性も多分に含まれていて、新米婦警・ジュディの成長譚だけではない魅力が詰め込まれている。
特にジュディとコンビを組むことになったキツネ・ニックとのバディ感は、本作の大きな見どころのひとつだ。現実的にはウサギとキツネが仲良く共存するのは不可能に近いが、それを“可能”にしたのが『ズートピア』でもある。ニックを信頼するジュディと、なんだかんだでジュディを大切にするニック。現実ではありえない一見凸凹なタッグも、ディズニーマジックにかかれば多くの映画ファンを虜にしてしまうのだ。
究極のモフモフ動物──“ヒツジ編”
『ひつじのショーン』
温厚な性格であり、食用としてだけでなく毛糸の原材料としても重宝されているヒツジ。さてヒツジが主人公の映画…… と考えた時に真っ先に浮かんだのが日本未公開作品のヒツジ・ゾンビ・パンデミック作の『BLACK SEEP』だったわけで、それではマズいためここはアードマン・アニメーションズの『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』を推したい。『ひつじのショーン』といえばイギリスを代表するクレイアニメ『ウォレスとグルミット』から派生したコメディ作品。セリフはほぼなく、表情やジェスチャーでストーリーが展開していく。
バック・トゥ~でももちろん設定は同じで、その労力もさることながら、考えれば考えるほど“セリフなし”にして85分の長編作ができてしまうというのがすごい。なおかつテレビシリーズの集大成ともいうべき、愛嬌たっぷりのヒツジたちと牧場主の絆が涙を誘う物語になっている。クレイアニメと油断することなかれ、実に豊かなイマジネーションに満ち溢れた作品なのだ。
余談だが、イギリスでは8時間におよぶヒツジのドキュメンタリー映画『BAA BAA LAND』なる作品が存在する(米映画サイト「IMBd」にもページ有り)。出演はヒツジのみでもちろんセリフはなし。ただ延々とヒツジが過ごす様子を映し出した作品であり、公開されているトレーラーでもヒツジたちがのんびり過ごすだけ。しかも英語表記で「8時間…… 何も起こらない」の宣言テロップつき。これはよく眠れそうなドキュメンタリーだ。
愛くるしいだけではない現実──“ブタ編”
『ベイブ』
ブタが主人公の映画といえば、まず間違いなく挙がるのが『ベイブ』だろう。子ブタのベイブと無口な老主人アーサー(演じるのは名優ジェームズ・クロムウェル)を軸にしながら、ベイブが牧羊犬ならぬ“牧羊豚”を目指すコメディドラマ作品。コメディとは言うもののシビアな描写もあり、親身になってベイブに接していたキャラクターが命を落とすといった自然界の過酷さもしっかり盛り込まれている。
本作が単なるコメディ作品として終わらなかった理由として、脚本を手掛けた人物にして『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を監督した我らがジョージ・ミラーのストーリー構築もあったのではないだろうか。ファンタジーであると同時にリアリティを追求した作風は高く評価されており、ジャンル映画ながらアカデミー賞作品賞・監督賞・編集賞などにノミネートされたことからも質の高さが窺えるだろう(直前のゴールデングローブ賞で作品賞受賞、アカデミー賞では視覚効果賞を受賞している)。
『ブタがいた教室』
ブタとは“ペット”として必要とされる以上に、“食べられること”が目的として飼育されている。そんな現実を教育=食育として描いた作品が2008年の妻夫木聡主演『ブタがいた教室』。本作はとある小学校で実際に行われた“いのちの教室”とも言うべき授業がベースになっていて、「食べること」を前提に1年間ブタの世話をする子どもたちと教師の姿が描かれている。
小学生への食育とは時として“早すぎる”“残酷”などと批判の対象にされやすい。本作でもブタの世話を通して児童たちの意見が分かれることになり、幼くして「飼育を継続する」「食肉センターに送る」というあまりにも重い決断を迫られることになる。
これも余談だが、ブタは食費がかかることや巨体になる(ミニブタでも成体が100kgほど)ことを除けばペット向きの動物。嬉しければ尻尾を振り、飼い主を認識してじっと寄り添ったりもする(筆者はアゴの下の肉をたふたふ撫でるのが好きだった)。実は動物界でもトップクラスのきれい好きだ。ハリウッドでは、ジョージ・クルーニーがポットベリー・ピッグのマックスを溺愛していたのが有名。
■力こそパワー!──“ゴリラ編”
『キング・コング』
振り返ってみると意外にゴリラがメインの作品は多かったりするのだが、ここは敢えて2005年公開のピーター・ジャクソン監督版『キング・コング』を。ジャクソン監督にとって往年の名作『キング・コング』(1933)のリメイクは悲願であり、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの成功を受け満を持して放った作品でもある。
オリジナルを踏襲して髑髏島およびマンハッタンで大暴れを繰り広げるP・J版コングだが、彼がナオミ・ワッツ演じるヒロイン・アンと展開するロマンスはアクションシーンの多い本作における重要な見せ場のひとつ。心が通じ合ったコングとアンがともに過ごす時間は儚げながらも美しく、仲睦まじいアイススケートの場面はなんとロマンチックなことか。筆者イチオシのシーンだが、ここに至るまでにはP・Jお得意の悪趣味っぷりが炸裂したトラウマシーン(主に巨大昆虫やワームによる捕食シーン)を乗り越えなければならないのがネック。
『ランペイジ 巨獣大乱闘』
もとはアーケードゲームなれど、よくぞここまで一大スペクタクル作品に仕上げたと驚くのが2018年5月公開の『ランペイジ 巨獣大乱闘』。当代きっての人気者ドウェイン・ジョンソンを主演に迎え、オオカミ、ワニ、そしてゴリラが狂暴化し異常成長を遂げた姿で怒涛のバトルが展開される。
VFXを駆使したド迫力のアクションもさることながら、本作では主人公デイヴィスと白いゴリラ・ジョージの友情も熱い。かつてマイケル・クライトン原作のアドベンチャー映画『コンゴ』にも手話を使うゴリラが登場したが、本作でもデイヴィスとジョージの対話法は手話。図体のでかいひとりと一頭が手話を使って繊細に心を通わせるシーンは、異種間ながらも切実な心情が表れていて、暴走するジョージに必死に訴えかけるデイヴィスの姿は彼の人間性が最も溢れた場面とも言える。
動物の世界ってすごい──“大集合編”
『ドクター・ドリトル』シリーズ
「もしも動物と話せたら」──そんな夢を叶えてくれる映画が、エディ・マーフィー主演の『ドクター・ドリトル』シリーズだ。もとになっているのはヒュー・ロフティングの不朽の名作小説「ドリトル先生」で、大挙して登場する様々な種類の動物がとにかく可愛い! ひたすら可愛い! ファミリーコメディ作品に振り切っているので動物たちのキャラも濃い! ペットのモルモットはクリス・ロックがボイスキャストとあって喋り倒し(あとキュートに踊る)、サーカスから脱走したトラは精神を病んで飛び降り自殺を図る。そんな動物たちと会話する能力を持ったジョン・リトルとのやり取りは、可笑しくもあり、時に人と動物の関係を構築するための重要なヒントが隠されているので見逃すには惜しい作品なのだ。
『エース・ベンチュラ』シリーズ
『ドクター・ドリトル』より前、ジム・キャリーが大ブレイクを果たした『マスク』と同じ年に製作されたのがペット探偵の活躍を描く『エース・ベンチュラ』。ドリトル先生は動物との会話を可能としていたが、エースの場合は会話というより動物と心を通じ合わせるタイプだ。ジム・キャリーが全力コメディ演技をもって“押し切る”形で動物との交流が描かれるので、正直言えば『ドクター・ドリトル』のような高尚感はない(むしろ下品)。ただ動物の可愛らしさを堪能するという意味では、やはり本物の動物をこれでもかと使ったシーンが楽しさを倍増させてくれる。第2作の『ジム・キャリーのエースにおまかせ!』はその兆候がなおのこと顕著で、ジム・キャリーと動物たちの共演そのものがひとつの見どころにもなっているのだ(オープニングの某映画パロディシーンにも注目してほしい)。
『ジャングルブック』
現在鑑賞できる作品としては、最高峰の動物映画ではないだろうか。2016年8月公開のジョン・ファブロー監督作『ジャングル・ブック』は、視覚効果における動物表現において極上の映像を観客に見せてくれる。風にたなびく毛並みや皮下で躍動する筋肉はもはや本物と見分けがつかないほどで、その技術を取り込むだけでも実写映画化した意味があったと言いたい。本物と区別がつかないからこそ人間の子・モーグリとジャングルで暮らす動物たちの“共生生活”はリアリティを感じさせ、ディズニーが描かんとする理想郷に最も近い世界が目の前に広がる。人間の子が動物に育てられるという意味や、動物の世界に人間の子がいるという理想が突きつめられた結果、『ジャングル・ブック』は生命力に満ち溢れた作品になった。動物たちの立てる足音、呼吸が今にも耳に届きそうなほど、映画そのものが大自然を包括していて心地良い。
まとめ
これまでに数え切れないほどの作品が生み出されてきた動物映画。今年は“決定打”とも言うべき、ジョン・ファブロー監督の実写版『ライオン・キング』の公開も控えている。動物がそばにいるなら優しく撫でてあげてほしい。あるいは映画の中で動物たちが見せる魅力や、彼らが人とともに紡ぎあげる物語を、じっくり堪能してみてはいかがだろう。
(文:葦見川和哉)
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