『殺人鬼を飼う女』が挑む四重人格を4人の女優が演じ分けるユニークな試み
中田秀夫監督独自の
本来の資質と才覚
中田秀夫監督はご存知『リング』で名をあげ、5月にはシリーズ最新作『貞子』のメガホンもとっていますが、もともとの本領はメロドラマにある監督でもあり、そこを基調とした女たちのサスペンスやホラーを際立たせることに長けているようにも思えます。
一方で日活出身の彼は日活ロマンポルノに傾倒し、実際に2016年の日活ロマンポルノ45周年記念“ロマンポルノ・リブート・プロジェクト”に参加し、『ホワイトリリー』を演出しています(この時の主演は飛鳥凛なのでした)。
そういったことから、多重人格の哀しみを内包するヒロインの恋が周囲の思惑や運命のいたずらでなかなか報われていかないサスペンス、その結果もたらされる狂気=ホラーの発露、さらにロマンポルノさながらのエロス描写を絡ませながら、本作は中田秀夫監督ならではの味わいを魅せてくれています。
飛鳥凛を筆頭とする4人の女優たちの体当たりの熱演に加え、鬼のような母を演じる根岸季衣の怪演と、とにもかくにも“女”の業が画面狭しと剥き出しになり、これには水橋研二ならずとも男たちは成す術なしといった圧力が非常に魅力的なのです。
ちなみに本作はKADOKAWA×ハピネットの共同製作による“ハイテンション・ムービー・プロジェクト”第1弾で、これはタブーとされる題材を恐れることなくクリエイターの感性と才能を重視して描出させていこうという意向のプロジェクトでもあります。
続く第2弾も大石圭原作の『アンダー・ユア・ベッド』で、監督は『劇場版零(ゼロ)』や『氷菓』の安里麻里。今夏公開予定とのことで、こちらも期待したいところです。
(文:増當竜也)
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