インタビュー

2019年05月16日

『うちの執事が言うことには』原作者・高里椎奈が永瀬廉を絶賛!「本当に、本当に花穎だった」

『うちの執事が言うことには』原作者・高里椎奈が永瀬廉を絶賛!「本当に、本当に花穎だった」

5月17日(金)公開の映画『うちの執事が言うことには』は、上流階級ミステリーとして“日本が誇る名門・烏丸家”を舞台に、突然当主になることを命じられた烏丸花穎(からすま・かえい)と新米執事の衣更月蒼馬(きさらぎ・そうま)が事件を解決していく同名小説の実写化作品。


海外留学から帰国し、急遽27代目当主となり戸惑いを抱える花穎を『King & Prince』の永瀬廉さんがつとめ、烏丸家の執事・鳳に憧れて烏丸家に勤めたものの、不本意ながら若き当主に仕えることとなった衣更月を清原翔さんが演じています。

コミカライズやシリーズ化もされている人気作品が話題のキャストによる実写化ということで注目を集める今作について、原作者の高里椎奈先生にお話を伺ってきました。




──まず、映画化のお話を聞いたときのお気持ちを教えてください。

高里椎奈(以下、高里):実は、映画化をしていただけるっていうことに、実感がともなってきたのが最近なんです。出来あがった映像などを観て、「あっ、映画にしていただいているんだなぁ」って今改めて思っている状態なので。映画化のお話をいただいたのが2017年のはじめくらい。そこから動き始めるまでがすごく短くて、映像などを観るまで実感がないまま進んでいた印象です。

──映画化に際して、先生からリクエストされたことはあるんでしょうか?

高里:ひとつだけ、花穎がわがままなだけの御曹司に見えないように、というお願いをしました。彼は突然若くして家の主人にならなければいけなくなって、「当主としてしっかりしなければ」と思っているんです。そのプレッシャーから少し強く見えるところがありますが、使用人に対しての態度などが高慢なわけではなくて、怖がりなんですね。使用人の方ひとりひとりに対しても人として尊重しているのでご留意いただければと、それだけお伝えしました。

──花穎の人物像に誤解を招かないように、と。

高里:そうですね、そこだけ。あとはもう本当に、私が考えるより、それぞれの分野のプロの方にお預けした方が、きっといい映画にしていただけると思いました。

──ストーリーに関しては、もともと短編として書かれているお話をいくつか組み合わせた展開でしたが、その選び方なども特に意見は出されなかったんですね。

高里:はい、もうすべてお任せです。

──脚本家の方が構成されたということですが、見事に花穎の特徴的なシーンや花穎の人物像かわかるエピソードはもちろん、さらに赤目さんとのエピソードも入ってきて、原作を読んでない人にもわかりやすいようにまとまっていると感じました。先ほど、花穎についてのお話もありましたが、永瀬さんが演じた姿を見ていかがでしたか?

高里:すごく繊細なところを演じてくださったなぁと、本当にそれがうれしくて。あと、本当に花穎として演じてくださったなってすごく感じて。本当に、本当に花穎だったんです。

──現場にも行かれたとのことでしたが、そこで花穎としての永瀬さんを初めて見て、印象的だった出来事やシーンはありますか?

高里:撮影を拝見したときに、「花穎がいる」と思ったんですね。でも、カットがかかったあとは永瀬さんに戻っているので、「すごい!」って思いました。

──ハウスキーパーの雪倉峻役を演じる神尾楓珠さんにもインタビューをさせていただいたのですが、撮影の合間は皆さん仲よく過ごされていたというお話も伺いました。

高里:室内での撮影シーンだったんですけど、印象としてすごく明るいなと感じたんです。空気があたたかくて、柔らかくて。これは私の勝手な要望なので、ご本人達にはまったくお伝えしていないんですけど、自分の作品に関わってくださる方、もちろん読んでくださった方もそうですし、こうやって映像に携わってくださった方にも「楽しかったな」って思っていただけたら、私は一番うれしいなと思っていたんです。だから明るく素敵な空間で作ってくださっていたことがすごくうれしくて。ちょっとNGが出たときに永瀬さんがぱっと周りを和ませて、空気を明るくしていらっしゃるような姿を見た時は感動しました。




──そういうお話が聞けるのは、原作ファンもすごくうれしいと思います。衣更月役の清原さんに関してはいかがでしたか? 黒髪というのがまず、原作と大きく違うところでもありましたが。

高里:「黒髪でもいいですか」というお話が事前にあったんですね。できるだけ原作に忠実にしたいけれど、映像としてリアルさ、自然さを優先したいということだったので、ぜひお願いします、とお伝えして。それからビジュアルを拝見して、「あっ、なるほど」っていう印象でした。

読者さんがどう感じたかは気になっていました。でも、映像で動いている姿やお話ししている姿を見ると、本当に執事ですし、衣更月としてそこにいてくださっていると思います。

──原作でも花穎が衣更月に対して、スタイル抜群で…と恨めしい思いを心の中でぼやいているシーンもありますが、本当に誰もが羨むようなスタイルですし、映像を拝見して、写真とはまた印象がガラッと変わりました。

高里:立ち姿だったり、所作だったり、あと台詞ですね。私は文章として書いている台詞なので、そのまま使わずにもっと話し言葉っぽくなるかなと思っていたら、原作と同じ台詞もいっぱいあるのに、ちゃんと身に付いて話している言葉のように違和感なく演じてくださっていたのでびっくりしました。

──衣更月はドがつくくらいのクールなキャラクターですけど、清原さんご自身は明るい方で、永瀬さんと一緒に『King & Prince』のダンスを踊っていたというお話も伺いました。先生からご覧になっても、オンオフのはっきりした俳優さんだったのでしょうか?

高里:小説は文章なので、「無愛想」とか「仏頂面」という表現でいいんですけど、映像になったときには、どれぐらい人間味を表現するか、さじ加減が必要になってくると思うんです。そこをすごく意識して、バランスをとってくださっていたような印象があります。峻が花穎の服を選んでいるのを、少し離れたところで衣更月が見ているっていうシーンも見学したのですが、どれぐらいふたりを気にして見ているかっていう加減を何度もやり直してくださっていて。すごく興味津々というか、心配そうに見ているときもありましたし、実際に使われていたのはもっと、シュッと立っているバージョンなんですけど、絶妙なバランスにしてくださっていると思います。最初に見学に行ったとき、永瀬さんと清原さんが並んで立ってらっしゃるのを見て、「あ!花穎と衣更月がいる!」って思えたのはきっとそういうお心配りからできているんですね。




──では、神宮寺勇太さんについてはいかがですか? 神宮寺さん演じる赤目刻弥は飄々とした顔をもつキャラクターで、花穎や衣更月とはまた違った意味で難しい役どころだと感じるのですが。

高里:神宮寺さんは見学した日に現場にいらっしゃらなかったので、試写で初めて赤目としての姿を拝見しました。赤目というキャラクターは、作中で最も複雑な人なので、どこをピックアップしてどんな風に演じるんだろう…と思っていたら、全部をこう、ミルフィーユのように折り重ねて入れてくださっていて。花穎と赤目の山場のシーンで、その、ひとつずつ積み重ねていったものはがれていって、神宮寺さんがあるセリフをいうシーンで、その表情に誠実な印象を受けました。いろんな複雑なものを折り重ねた中心に誠実さを据えてくださっていたことがすごくうれしかったです。

──ちなみに神尾さんは、撮影期間が実質5日間くらいだったそうですが、その日程の中で先生が見学にいらっしゃったそうで。「かわいい!」と喜んでいらっしゃったというお話も伺いました。

高里:これは皆さんに言えることだと思うんですけど、本当に「この人がいる」っていう説得力がすごくて。なおかつ、自然にそこにいるっている感じなんです。神尾さんもそうで、「あっ、峻くんだ」っていう説得力があるし、カメラが外れたところでも、ちょっとした仕草なんかが峻くんだったんですよ。見学に伺ったときに永瀬さんが一度衣装を着替えられたんですが、その後ろに神尾さんが立ってらっしゃるときがあって、自然にすっと襟を直していたのがすごく印象的で。役者さんってこんなにも役が体に溶け込んでいらっしゃるんだなって感じて。なんでしょう…すごくかわいいんですよね(笑)。

──永瀬さんと神尾さんは同い年ということもあり、現場でも友達のような感じだったそうです。それが自然と襟を直すようなアクションにつながったのかもしれないですね。いい意味で遠慮がないというか。

高里:使用人の中でも、峻は特別な距離感なので、おふたりの関係性がいい方向に作用してくださってたのかなと思いました。

──神尾さんに「先生に伝えたい事はありますか?」と伺ったら、「映画の峻は原作と結構違うので、思っていたのと違っていたらすみません」というようなことをおっしゃっていましたが、いかがでしょうか(笑)?

高里:なんというか、いい意味で印象が違うのが峻なので。コミカライズしていただいたときに、原作ファンの方から「峻くんがすごくかわいい」とか、「思ったよりかわいい」、「峻くんに愛着が湧いた」っていう感想をいただいたんですけど、その方向とはまた違う感じで、「この峻くんもいい」って言っていただけそうな峻を演じてくださっていると思います。原作とコミカライズと映画で、まったくイコールではない人なんですが、でも、「どの峻くんもいい!」ってなるような。それは、峻の根本にあるものをしっかりとらえてくださっているということかもしれないです。一瞬の印象とか、原作などと違うところがむしろ魅力になっているような気がします。

──軸は一緒だけど、そこからの広がりにいろんな可能性があるというか。一般家庭で育って、一番観客目線に近いキャラクターとして身近な感じも魅力だと思ったのですが、優希美青さんが演じる、オリジナルキャストの美優もまた観客目線を代表するような役どころですよね。

高里:スーパー助っ人ですよね。原作の12話分を映画の尺に収めるためには、入れられない部分はやはりいっぱいあるんですが、それで整合が取れなくなってしまうところを全部拾ってくれるっていう役どころだと思います。「本当に、ありがとうございます!」という感じです。一緒に観ていただいた編集さんやコミカライズを担当してくださっている音中さわきさんも、「それを言ってほしかった」ってことを言ってくれたって。私が書くものには割とツッコミがいないのですが、「それ!」って感じたことを言ってくれるキャラクターだったとおっしゃっていました。

──原作ファンとしては、奥田瑛二さんが鳳役というのも驚いたといいますか、奥田さんが演じて来られた役のイメージとしても意外性があるように思いました。

高里:そうですね。原作とも完全にイコールではないんですけども、この方に小さいときから育てられたら、いい子になるだろうなって思いました。花穎が、小さい頃から助けられてきたんだなぁということだったり、衣更月がこの人に憧れて執事になろうって思ったんだなぁっていうことだったりを感じましたね。鳳の大事なところを大切に演じてくださっていることが伝わってくるのがうれしいです。

──原作のお話も少しお伺いしたいと思っていたのですが、個人的に衣更月の矜持についてのお話がすごく好きなんです。それは執事の仕事に限らず、どんな仕事をしている人においても共通して持てる気持ちなのかなと思っていて。無粋な質問かもしれませんが、先生が本を書かれる上で矜持とされていることがあれば教えていただきたいです。

高里:矜持…そうですね。本を作るのってリレーの作業なので、書いて、読んでいただいて、直してくださる方がいて、デザイナーさん、イラストレーターさんがいて、印刷されて、運搬してもらって本屋さんに並んで、読者さんに届いて…。その間にもたくさんいろんな方がいるんですよね。だから、私はそのリレーの最初として、最善のよりよいバトンを渡そうと、それができていたらいいなとは思ってるんですけど…これはちょっと矜持じゃないかもしれないですね(笑)

担当編集さん:常に読者の方を最優先で考えてらっしゃるというのは、お仕事をご一緒して感じています。締め切りは落とさないですし、編集者の意見を聞いてくださるのも、常に読者の方を第一に思っていらっしゃるということだと思います。映画化に関しても、高里さんご自身の言葉でこまめに発信してくださっているのは、本当にファンの方を一番に常に考えていらっしゃるからですよね。今回とてもいい映画にしていただけたのも、高里さんの原作あってこそだと思います。

高里:照れます(笑)。そうですね。手に取ってくださった方が楽しいなって一瞬でも思っていただけたらいいなぁという、そればかりですね。

──最後に、ファンの方へメッセージをお願いします。

高里:原作は文字なので、やっぱりひとりひとり違うイメージを持たれると思うんです。でも、それが映像になったから、この世に正解はこの一個だけですって言うことではないんです。原作を読んでくださったときに感じた印象なども、そのままお持ちいただいて、なおかつこんな世界もあるんですよという感じで映画を観ていただけたら。映画を観ることで、原作を読んで感じたことが消えてしまうことはないと私は思うので、それも持ち続けていただけたらうれしいなと思います。

私自身がなんども観に行くだろうなと思うくらい、どこを観てもすごく素敵な映画にしていただいていますし、それぞれのイメージで原作もまた読んでいただいて、両方楽しんでいただけたらうれしいです。

(取材・文:大谷和美)

(C)2019「うちの執事が言うことには」製作委員会

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