映画コラム

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2019年07月13日

『さらば愛しきアウトロー』はR・レッドフォードの俳優引退作にして集大成!

『さらば愛しきアウトロー』はR・レッドフォードの俳優引退作にして集大成!



© 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved




ロバート・レッドフォードといえば『明日に向って撃て!』(69)『スティング』(73)『大統領の陰謀』(76)『ナチュラル』(84)『スニーカーズ』(92)などを筆頭に多くの名作で知られるハリウッドの大スターで、一方では映画監督としても活躍し、そのデビュー作『普通の人々』(80)はアカデミー賞作品賞に輝き、自身も監督賞を受賞した才人。
またサンダンス・インスティチュートを設立してサンダンス映画祭を主宰し、新進映画人の発掘や育成、支援に努めるなど映画界に多大な貢献を果たしてきた偉大なる存在です。

そのロバート・レッドフォードが昨年俳優引退を表明し、世界中の映画ファンに大きな衝撃を与えたわけですが、彼がおよそ60年に及ぶ俳優人生の最後に選んだ作品が、この『さらば愛しきアウトロー』でした。

この邦題からして、彼のファンならどことなく感じ入ってしまうところがあるではないでしょうか……


《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街392》

そう、ロバート・レッドフォードこそはこれまでさまざまなアウトローを粋に、そしてスマートに演じてきたナイスガイだったからです!


伝説の紳士強盗をモデルに



『さらば愛しきアウトロー』は、20世紀後半のアメリカをお騒がせさせた実在の強盗フォレスト・タッカーをモデルにした作品で、もちろんロバート・レッドフォードがタッカーを演じています。

この強盗、いわゆるヴァイオレンスな要素も粗野な言動なども一切皆無で、にこやかに銀行強盗を行います。

拳銃をちらつかせはするのですが、実際に撃ったことは一度もなく、誰ひとり傷つけたこともありません。

そのせいか、被害者である銀行の人々など皆口々に「紳士的だった」「礼儀正しかった」などという始末で、変な話ではありますが、何となく人生の良き思い出になったと言わんばかり。

特に女性からすると、イケメン紳士強盗なるアイドルにでも遭遇したかのような雰囲気すら漂わせているのでした。

脱獄経験も豊富で(実際は18回脱獄に成功)、70代になった1980年代も仕事のスタイルはまったく変わることがありません。

そんなタッカーをロバート・レッドフォードは持ち前の資質で自然体の魅力を醸し出しています。




© 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved




反骨の姿勢を崩すことのない
さわやかイケメン映画人



もともとレッドフォードは『明日に向って撃て!』をはじめ、アウトローや社会からちょっとはみだしたスタンスの人間を好んで演じ続けてきました。

しかし、たとえば同じアウトローでもクリント・イーストウッドみたいなシニカルでニヒルなそれとは異なり、いつもどこかスマートでさわやかなのです。

それには彼が二枚目=イケメン・スターとして若き日から女性ファンからの多大なる支持を得続けてきたこととも無関係ではないでしょう(1970年代の映画雑誌のファン投票で、彼は常にベスト10の常連でもありました)。

反骨の姿勢を貫くイケメンでさわやかでスマートな映画スター。

そんな彼だから、今回の紳士強盗も実にサマになっているのです。

さすがに往年の彼を知る側としては、映画のスチル写真などを見ると老けたなあと思いつつ、いざ映画で動いている彼のオーラは若き日と何ら変わっていないことに驚かされます。

現にこの作品でも新たな恋人(シシー・スペイセク)ができたりしますし、またダニー・クローヴァーやトム・ウェイツといったいぶし銀の名優を誘って“黄昏ギャング”も結成します。

さらにはタッカーを捕まえようと奔走する警察(ケイシー・アフレック)も、どことなく彼に憧れているような節が感じられてなりません。

性別も敵味方も問わず、誰からも愛されてしまうアウトロー、それが俳優ロバート・レッドフォードの本領であり、本作はその意味でも彼の集大成といっても過言ではないでしょう。

『ア・ゴースト・ストーリー』などで知られる本作の監督デヴィッド・ロウリー(ケイシー・アフレックとのコンビも多いですね)は、これまでレッドフォードが出演した名作のオマージュをあちこちに散りばめていますので、長年のファンとしても感無量でしょう。

こうして改めてレッドフォードの魅力に久々触れてしまうと、なおさらこれが引退作であることが残念でならないのですが、監督やプロデューサーとしての活動は今後も続けていくとのことなので、また新たな発表を期待したいところです。


(文:増當竜也)

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