映画コラム
『サイゴン・クチュール』がヴェトナムから運ぶオシャレ・エンタメ大革命!
『サイゴン・クチュール』がヴェトナムから運ぶオシャレ・エンタメ大革命!
面白くなってきた
アジア諸国の映画状況
冒頭で「多彩なジャンルの現在のヴェトナム映画」云々と記しましたが、その中でも本作は革命的なまでにオシャレな極上ファッション・エンタメとして大ヒットし、また本作に登場する新しいアオザイが若者達の間で大流行したとのこと。
そんなファッション・ファンタジーがいよいよ日本上陸! なわけですが、旧世代の映画ファンとしては最初の舞台となる1969年のサイゴンでの諸描写に、ヴェトナム戦争の影が微塵も見られないのが意外といえば意外です。
もっともこの時期はまだサイゴンは陥落していませんし(北ヴェトナム軍によるサイゴン陥落は1975年4月30日)、それ以上に本作からは戦争云々の要素を意図的に外した感もうかがえます。
つまりは「いつまで戦争にこだわる向きこそ野暮である」とでもいったメッセージ。
また戦時下とはいえ当時のサイゴンにまだ戦禍は及んでいなかった以上、現地の若者たちがオシャレに興じているのもある意味リアルといえるのかもしれませんし、それこそ『この世界の片隅に』で描かれているように、戦時中でもちゃんと庶民の生活があったことを知らしめているのが本作の美徳のひとつでもあります。
いずれにしましても、アジア諸国の映画状況は21世紀に入って目まぐるしく変わりました(日本はむしろ旧態依然としたままかもしれません)。非常に面白い時代になって来たと思いますし、この『サイゴン・クチュール』もまたそうした事象を象徴する1本ともいえるでしょう。
(文:増當竜也)
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