映画『キャッツ』の前に見てほしいドキュメンタリー『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』
夢を追い求める者の上に
成り立つエンタテインメント
本作はまず1974年のNYで演出家兼振付師のマイケル・ベネットが22名のダンサーに取材して『コーラスライン』を作り上げていった事実が紹介されます。
まもなくして時間軸は2006年再演版『コーラスライン』のコーラスダンサー・オーディション風景へと、一気にタイムスリップ。
(もっとも、その後もベネット自身の肉声や映像、関係者のコメントなどで、初演前後のエピソードの数々も同時に綴られていきます)。
オーディションにはおよそ3000人の応募がありましたが、そこから最終的には19人まで絞る必要がありました。
かくして映画は、合格するために熾烈な戦いを繰り広げることになるダンサーたちにスポットを当て、彼ら彼女らの青春の夢や苦悩などを描出していくのでした。
その中には沖縄出身の高良由香(YUKA)さんもいて、日本人としては彼女の成り行きも大いに気になるところ。
YUKAさんはコニーという中国系アメリカ人女性の役を受けるのですが、オーディションでは初演でコニーを演じた女性もレッスン&選考に参加していて、どうも彼女のことをあまり気に入ってない様子……などなど、こうした選ぶ側のスタンスなども描かれていきます。
それ以外にも、役を取り合う者同士の本音と建て前のバチバチと火花散る様子や、家族に電話で状況を伝えたりする光景も見られます。
時に投げやりになる者もいれば愚痴り出す者、生意気なまでに余裕しゃくしゃくなふるまいをする者もいれば、不安を隠すことなく心情を語る者……。
まさに千差万別の感情が絡まりあいながら、最後に選ばれる者は? といった興味もさながら、やはり夢を追い求める者の光と影、即ち人生の機微みたいなものがぎっちり濃縮された93分となっています。
ダンサーや役者に限らず、現在目標をもって歩もうとしている人も、かつて夢を抱いて邁進し、それが叶えられた人も叶えられなかった人も、見終えて何某かの感慨を抱くこと必至でしょう。
またこの作品を見てから映画『キャッツ』を見れば、おいそれと嘲笑などできなくなるかもしれませんね。
だってどのような作品=エンタテインメントも、多くの人々の渦巻く想いの上に成り立っているわけですから。
(文:増當竜也)
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