映画コラム

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2020年01月25日

『フォードVSフェラーリ』のレビュー|ダイナミックであり人間味溢れる作品!その魅力を語る

『フォードVSフェラーリ』のレビュー|ダイナミックであり人間味溢れる作品!その魅力を語る


『フォードVSフェラーリ』のあらすじ





かつて1959年のル・マン24時間耐久レースにアストン・マーチンで参戦し、アメリカ人レーサーとして初めて優勝した経験をもつが、心臓の病によりレーサー人生をリタイヤしたキャロル・シェルビー(マット・デイモン)は、カー・デザイナー兼バイヤーとして生活していた。彼のもとに、アメリカ最大の自動車メーカー、フォード社から思い掛けないオファーが届く。ル・マンでフェラーリ社に勝てる車を作って欲しいという依頼であった。

その背景には、フォード社はフェラーリ社を買収しようとしていたが、レース部門を手放したくない創業者のエンツォ・フェラーリがギリギリになり態度を翻し、破談となる。そのエンツォの態度に激怒したフォード二世は、ル・マンで打倒フェラーリに燃えて、新たなレースカーを造るように命じ、その白羽の矢がシェルビーに立ったのだった。




絶対王者フェラーリを破るには並大抵のことでは叶わない大きな壁であった。そのうえ、次のル・マンまでの期間は90日という短すぎる準備期間だった。シェルビーが真っ先に足を向けたのは、凄腕のイギリス人ドライバー、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)のもとだった。ケンは、自らが営む自動車修理工場もギリギリで生活も行き詰まっていた、息子のピーターと妻のモリーに背中を押され、シェルビーの無謀な挑戦に加わることに。
こうして2人は、ル・マン24時間耐久レースに挑戦するのだが、、、




こんなにもドラマチックな出来事が、実際に起こったとはなかなか信じられないのですが、、まさに伝説の名にふさわしい流れ。

ストーリーは、予想に近いほど王道な流れなのですが、もちろんそれだけではありません。

まずは、主演2人のキャラクターがとても魅力的。

クリスチャン・ベイル演じるケン・マイルズは、天才的な感覚の持ち主だが、人間的に少々難あり。とても感情的で自分の発言に注意を払わないような人。直情的でありながらも、心の底からレースを愛している人物。

マット・デイモン演じるキャロル・シェルビーは、かつてル・マンで優勝も経験しレーサーとしても頂点に達していたのに、病気のために挫折を強いられる。レーサーを離れるが、デザイナーやバイヤーとして自動車業界に残ってまで、車を愛している。性格的には、外交術に長けていて、優れたセールスマンのような人物で、困難にぶつかっても、巧みにその状況を冷静に打破する力をもっている。

この2人の人物は、レースをこよなく愛することでつながっていて、互いを補うように共生する。どちらが欠けても成り立たない2人で1人のようなドラマチックな関係性がこの作品の肝でした。

性格が真反対な2人は衝突を繰り返しつつも、寄り添って目標に向かっていく、その姿に鑑賞者として背中を押したくなるのです。

終盤では、性格が入れ替わるようになりクライマックスへ向かっていくのですが、その関係性に見事に泣かされました。

俳優としての2人のアプローチも真反対のようで、そこも各キャラクターにリンクしているのでしょう。

マットは知的にアプローチをし、カメラのことや色々な広い範囲を理解して役を立ち上げるのに対し、クリスチャンは感覚的にのめり込むタイプ。その関係性もまた熱いですね。

実在の人物の、残された文献や資料を調べ尽くしての創作。それによって、よりリアルでより濃縮された人物たちのドラマ、ここにモーターレースのエンタメでダイナミックな要素が加わったら敵なしです。

監督を務めたのは、『ローガン』『ウルヴァリン SAMURAI』『ナイト&デイ』『ニューヨークの恋人』といった多彩なジャンルをヒットさせている、ジェームズ・マンゴールド監督。

大作の大衆向けの中にも、しっかりとしたドラマ性を成り立たせ骨太な作品に仕上げる手腕を今回も見事に発揮しているような気がします。

ル・マン本番での40分ほどある長いシーンは、観客もそのレースに参加し、一緒に搭乗しているのではないかと錯覚するほどの、緊張感、スピード感、そしてこの後どうなってしまうのかと予想させない展開に手に汗握ります。

絶対的なヒーローになりそうな主役なのに、ル・マンのレース中に、フェラーリのピットにネジを落として相手陣営をアタフタさせたり、敵のストップウォッチを盗んだりと主役らしからぬ行動に、驚きつつも、その人間くさいシェルビーの一面にまたリアルを感じました。

スピード感の中にも、きっちりとした人物たち。

大音量で白熱して見ていただきたい一作です!

皆さま、是非映画館で!!

それでは今回も、おこがましくも、紹介させていただきました。

(文:橋本淳)

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