映画コラム

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2020年02月29日

『地獄の黙示録 ファイナル・カット』レビュー:「戦争ほど美しいものはない」ことの怖さを描いた名作の最終版!

『地獄の黙示録 ファイナル・カット』レビュー:「戦争ほど美しいものはない」ことの怖さを描いた名作の最終版!



未曽有のトラブル続きの果てに
ようやく完成した超大作


実はこの作品、当初ジョージ・ルーカスとジョン・ミリアスが企画するも実現は叶わず、盟友のフランシス・フォード・コッポラが受け継いで製作を敢行したものですが、それ以降もトラブルといった次元を大きく越えるほど災難の数々に見舞われ、それこそ「完成しないのではないか」「コッポラはこれで終わりだ」などともささやかれていたものでした。



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当初ウィラード役にキャスティングされていたハーヴェイ・カイテルをクランクイン早々に降板させたり、代わりに大抜擢されたマーティン・シーンは撮影中に心臓麻痺を起こして生命の危機にさらされたり、カメラマン役のデニス・ホッパーは麻薬浸りで台詞を全く覚えられなかったり、肝心要の大スター、マーロン・ブランドは何と100キロに激太りして現場に現れたり……。

また、そもそもは17週間の撮影を予定していたものの、フィリピンに建てたロケ・セットが台風で全壊するなどで、結局61週間の長期にわたるものとなり、1200万ドル(当時のレートで約35億円)の予算も使い果たして最終的には3100万ドル(当時のレートで約90億円)まで膨れ上がり、借金まみれになったコッポラは何度か自殺を考えたほどノイローゼに陥って、ついには倒れてしまうなど、ある意味映画以上にドラマティックな出来事が次々と起こりまくっていたのでした。
(このあたりの詳しい事情は、撮影に付き添っていたコッポラ夫人エレノア・コッポラが記したメイキング書『ノーツ―コッポラの黙示録』及び当時のメイキング・フィルムなどを彼女が1991年にまとめた記録映画『ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録』で詳しく紹介されています。手っ取り早く知りたい方はウィキペディアなどをググってみてください)

「製作中は我を忘れていた」などと後に回顧するほどのコッポラは、撮影中は「私が倒れたらミリアスが、ミリアスが倒れたらルーカスが、この映画を完成させるのだ!」と、まるで全滅直前の騎兵隊隊長のように叫んでいたとも聞きます。

(もっとも、ミリアスが記した脚本をコッポラは撮影中連日のように書き直してしまいました。ミリアスは本作のクライマックスをヴェトナム版『アラモ』のごとく、カーツやウィラードらが砦に立て籠って壮絶な戦闘を繰り広げるスペクタクル・シーンにしたかったようですが……)

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