思春期の闇を描いた学園ホラー映画たち
21世紀版“恐るべき子供たち”?
『スクールズ・アウト』
(C)Avenue B Productions - 2L Productions
続いて2018年のフランス映画『スクールズ・アウト』は、『ほしがる女』(16)で注目されたセバスチャン・マルニエ監督による不可思議な学園心理サスペンスです。
さほど遠くないところに原発がそびえる名門サンジョゼフ中等学校の12人のエリートばかりを集めた3年1組の生徒たちの目の前で、担任教師が教室の窓から飛び降り自殺するという事件が起きました。
代用教員として学校にやってきたピエール(ロラン・ラフィット)は、一部の生徒が自分を小馬鹿にし、妙に反抗的な態度をとり続けることに戸惑います。
一方で3年1組は他のクラスの嫉妬を買っており、時に危害まで加えられている事実も知ります。
まもなくしてピエールは、3年1組の6人が時折集まっては暴力を含む何やら不穏な行為に及んでいるのを目撃。
彼らが所有するDVDを手に入れたピエールは、その中に収められている数々の崩壊映像を見て、彼らが何かを企んでいることを察知しますが、同時に謎の無言電話に悩まされ、そのストレスも手伝って次第に錯乱していき……。
一言で申せば21世紀版“恐るべき子供たち”であり、一方では“大人は判ってくれない”とも受け止められる、まるでニュータイプのようなエリート生徒らが織り成す謎の行動は、大人の目からはどこかホラー・チックに映えてしまうという、そんな不安心理が洗練された映像美で映し出されていきます。
演出タッチが途中からジョン・カーペンターとも黒沢清ともいえるようなものになっていくので、なおさら『ザ・チャイルド』のようなおぞましい結末を迎えるのではないかと思いきや、ラストは意外にもファンタジックなものではなく、現代社会を鋭く見据えた、それこそ日本における東日本大震災や現在のコロナ禍などとも共通するような要素を内包した秀逸なものとなっています。
ストーリー的には撒いた種をすべて刈り取り切れていない憾みこそ残るものの、それ以上に子どもたちの社会の闇を素直に見つめる純粋さと、そこに伴う幼さゆえの行動が醸し出す哀しみなど、さまざまな想いを見る者にもたらしてくれること必至。
見ている途中、Gが大量発生したりその手のものが苦手な方も含めて、どことなくいや~んな感を抱かせつつ、最後にはどこかしら良くも悪くものカタルシスをもたらしてくれる作品です。
(文:増當竜也)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。