映画コラム
『ドロステのはてで僕ら』レビュー:2分の時差が巻き起こすドタバタSF快作!
『ドロステのはてで僕ら』レビュー:2分の時差が巻き起こすドタバタSF快作!
ヨーロッパ企画の
面目躍如たる映画
劇団ヨーロッパ企画といえば、毎年の本公演で15000人を動員する人気劇団で、一方では映画やドラマ、バラエティ番組の制作など、メディアの枠にとらわれない活動をエネルギッシュに展開し続けている集団です。
映画方面では『サマータイムマシーン・ブルース』や『夜は短し歩けよ乙女』そして今年は『前田建設ファンタジー営業部』が話題を集めたばかり。
そして今回は劇団全体で1本の長編映画を制作することを決め、彼らのホームグラウンド京都・二条で撮影を敢行。
その資金はクラウドファンディングでしたが、開始から1日も経たないうちに目標金額達成という快挙!
(これだけで同劇団に寄せる信頼と期待の度合いがわかるというものです)
もともと時間をモチーフにしたSF的な設定を好んで採り上げてきたヨーロッパ企画ですが、今回の2分差タイムトラブル劇もまた彼らならではの真骨頂。
また「たった2分の時間差」という要素が、全編長回し撮影という挑戦によって、ドタバタの中にも緊張感がずっと保持されていく効果をもたらしています。
演劇的な構図と構成が映画的な情緒をもたらしてくれる稀有な好例としても強く訴えておきたいところ。
また主演の土佐一成をはじめとするヨーロッパ企画の面々のすっとぼけながらも濃ゆい存在感によって、マドンナとして起用された朝倉あきの可憐さもより引き立っています!?
原案・脚本は上田誠、監督はヨーロッパ企画の映像ディレクターとして活躍する山口淳太。
まあ、この手の時間SF物の常として、どこがどうつじつまが合っているのか合っていないのか、マニアはそのあたりが気になるところかもしれませんが、見ているうちにあれよあれよと巻き込まれていくうちに何が何だかわからなくなり、すべてが終わると実に不可思議で心地よい虚脱感に包まれてしまう作品です。
SFとしての整合性をきちんと確認したければ、2度3度とご覧になることを今からお勧めしておきます!?
(文:増當竜也)
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