『Daughters』レビュー:女性同士の麗しい友情の絆



同居人で友人であるがゆえの
心の葛藤




©「Daughters」製作委員会 




このように本作はシングルマザーとしての妊娠&出産という、今の若い女性なら誰もが想像したことがあるのではないかと思われるモチーフを基に、およそ10か月という時の移り行きの中でも変わることのない友情の絆を、クールながらも温かみのある映像センスで描いていきます。

監督はファッションイベント演出家として活躍する映像作家・津田肇。

これみよがしではなく、さりげなくも透明感あふれる映像センスの数々が、ふたりの女性へのエールを確実に送り得ており、見ていくうちにどんどん好感度を増していく効果をもたらしてくれています。

全体的には小春が綾乃を見据え続けていく視線の構図が採られていますが、同居人で友人という関係性ゆえに第三者になりきれるはずもない小春の葛藤には、よりシンパシーを感じられてなりません。

このところ『ダンスウイズミー』『犬鳴村』と快調に主演作が連打されている三吉彩花にとって、この小品佳作は彼女に大きなステップアップをもたらしてくれているようにも思えてならないほどの好演です。

対する綾乃役の阿部純子は『孤狼の血』や『ソローキンの見た桜』などで注目の若手実力派ですが、今回も妊娠から出産といった歩みの中での心理的葛藤の数々を、見る者の共感を得られるような好ましいオーラを一貫させながら演じ切っています。

一見淡々と、それこそ中目黒の川の流れのように緩やかに、しかしその中には確実に人生のさまざまな想いを忍ばせながら、時にハラハラさせながらも最終的に見終えてすがすがしい気持ちにさせてくれる作品です。

女性はもちろんのこと、男性にもぜひ見ていただきたい作品です。
(というか、男性はこれを見て反省しきりの人も多いのでは?)

(文:増當竜也)

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