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『マーティン・エデン』レビュー:無学の青年が愛のない富と名声を得たとき

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イタリアン・ドリームを
手に入れた男の代償とは?





本作は原作で描かれているアメリカン・ドリームをイタリアン・ドリームに置き替えながら展開されていきますが、実際のところ、イタリアはアメリカン・ドリームみたいなことはなかなか起こり得ないお国柄でもあったとのことで、だからこそジャック・ロンドンの原作小説は今も憧れをもって読まれ続けているのだそうです。

そうした背景からアメリカの小説「マーティン・イーデン」がイタリア映画『マーテイン・エデン』へと転化されていったのも、むべなるかな。

しかし夢を抱いてアメリカに渡ったイタリア人たちの中には血と銃弾の嵐でおなじみイタリアン・マフィアとして君臨していく者もいた事を証左に、立身出世には何某かの代償はつきものなのか、結果として本作の主人公マーティン・エデンも小説家として大成し、名声と富を手に入れます。

しかし、そこに愛だけは不在であり、その虚無感はどれだけお金があっても埋められるものではない。

そんな人生の理不尽を描いているのが『マーティン・エデン』なのです。

主演のルカ・マリネッリが体現するマーティン・エデンは、その若き日は精悍で好もしい存在感を醸し出しつつ、次第にインテリジェンスを身に着けていくとともに何某かの精神的苦渋にも苛まれていく過程を見事に演じています。

そして大成した後の彼は……(どうぞ、映画館でじかに彼を目撃してみてください)。

対するジェシカ・クレッシー扮するヒロイン、エリカは清楚で純粋、またそれゆえに無垢なマーティンに惹かれていくわけですが、上流階級ゆえの保守的な思考から逃れきることができません。

また彼女はイタリア人でありながら、時折フランス語を母国語のように使うことがありますが、このこともマーティンとはそもそも住む世界が違うといった断線を示唆しているかのようです。

そこに舞台となるナポリの古びた魅惑的な町並みであったり、その撮影にスーパー16フィルム(かつてドキュメンタリー映画を撮るときに重宝されていました。日本では低予算映画やVシネマの撮影でも好んで使用)を使用することでのドキュメンタリーとドラマの狭間にあるかのような世界観、さらには先にも記した描かれる時代の時間軸の錯綜がもたらす不可思議さによって、ひとりの男の数奇な運命がよりファンタジックに際立っていきます。

まるで人生のリアルこそが究極のファンタジーであるかを訴えているかのようなイタリア映画『マーティン・エデン』は、その実世界中どの国の人々にも切なく哀しいまでの共感をもって迎え入れられることでしょう。

ようやくハリウッド大作や国産アニメ映画の話題作が軒並み揃い始めた日本の映画館事情の中、こうした珠玉の作品にもぜひ目を向けていただきたいものです。

(文:増當竜也)
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