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『ワンダーウーマン1984』レビュー/解説/考察「15」のポイント



現在大ヒット上映中の『鬼滅の刃無限列車編』。歴代新記録もすぐそこ。そんな勢いを止めそうな存在がアメリカに先駆けて公開されるアクション大作『ワンダーウーマン1984』です。

今回、公開直前のタイミングで特別試写を見る機会に恵まれましたので、ネタバレにはならないようにしながら、様々な『ワンダーウーマン1984』の魅力について語っていきます。

※情報としては予告編からと原作の説明から推測のできる情報だけにとどめているので、その点は安心して読み進めてください。

1:絶対に負けられない勝負だった『ワンダーウーマン』



『ワンダーウーマン1984』を見て最初に感じたことは、パティ・ジェンキンス監督は前作の『ワンダーウーマン』でも充分に企画をコントロールしていたように思えていましたが、実はとても慎重に、気を配って撮影に臨んでいたのだなということです。

ワンダーウーマンのコミック初掲載は1941年、来年で生誕80周年となります。そんなワンダーウーマンの映画化をパティ・ジェンキンス監督は10年以上もこだわり続けていました。『マイティー・ソー/ダーク・ワールド』の監督依頼も断ったほどです。その熱量を込めた『ワンダーウーマン』には自信を持っていましたが、それと同時に決して負けられない闘いでもあったのです。

2:映画『ワンダーウーマン』の実績



2017年公開の映画『ワンダーウーマン』は女性監督による初のアメリカンコミック原作映画であると同時に、女性監督作品、女性主演アクション映画として世界で最もヒットを記録するエポックメイキングな一作となりました。

これ以降ライバルのMCU=マーベル・シネマテック・ユニバースでも『キャプテン・マーベル』に共同監督としてアンナ・ボーデンが、そしてオールスター大作『エターナルズ』にクロエ・ジャオ、『キャプテン・マーベル2』にニア・ダコスタという風に連続して女性監督が登用される道筋を作りました。

DCでも『ハーレイクインの華麗なる覚醒BIRDS OF PREY』にキャシー・ヤンを起用されていますね。
そして、パディ・ジェンキンス監督はこの成果を担保に『ワンダーウーマン1984』を完全にコントロール下に置きました。
 

3: 多くの要素を併せ持った快作『ワンダーウーマン1984』 



パティ・ジェンキンス監督はシャーリズ・セロンがアカデミー主演女優賞を受賞した2003年の『モンスター』で長編デビューを飾ったものの、その後長編を撮ることができず、なんと『ワンダーウーマン』が長編第2作目になり、『ワンダーウーマン1984』が3作目にあたります。

『ワンダーウーマン1984』でパティ・ジェンキンス監督はそのタイトル通り、80年代の陽性な部分をたっぷり盛り込んだ娯楽大作に仕上げました。

特に前半はいい意味で底抜けに明るいハリウッド大作風味が強く、オマージュや要素がちりばめられています。

その一方で、『ワンダーウーマン1984』は間違いなく2020年の映画であり、ダイバーシティを感じさせるメッセージを込めたラストを迎えます。

娯楽性と、今日性、メッセージ性をハイレベルで突き詰めた映画、笑えて泣けて、考えさせれて、そしてとてもワクワクできる、『ワンダーウーマン1984』はそんな映画に仕上がっています。

4:のびのびとしたシリーズ第2弾 



映画、特にアメリカンコミック原作の映画には“オリジン”を語り切った後の“シリーズ2作目は鉄板の法則”というものがあります。

いわゆるヒーローがヒーローとなる誕生の部分を“ご存知のこと”として省くことができて一気に濃密な物語に入ることができると言うことが大きな理由です。

具体的に言えば、ティム・バートン監督が世界観を突き詰めた1992年の『バットマンリターンズ』や今なお、アメコミ映画ナンバーワンに挙げる人も多いサム・ライミ監督の2004年の『スパイダーマン2』、アメコミ映画の次元を変えた2008年のクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』、最終的にアベンジャーズも手掛けることになったルッソ兄弟の2014年の『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』などがあります。

パディ・ジェンキンス監督の『ワンダーウーマン1984』もまたその系譜連なる作品になっています。

5:ツボ抑えた絶妙な演出



『ワンダーウーマン1984』はパディ・ジェンキンス監督ののびのびとした演出と、いよいよ、ワンダーウーマンに馴染んできたガル・ガドットが見事にはまった“映画のワンダーウーマン”として楽しめる映画になっていますが、その一方で原作ファンにもちゃんと目を配っている絶妙なバランス感覚を感じます。

『ワンダーウーマン1984』も前作同様“ちゃんと”男子禁制のセミッシラ島から始まります。こういう部分をおろそかにしないことには好感を持てます。

しかもここに今回のクライマックスに登場する黄金の鎧にまつわるエピソードを絡めていたりして芸の細かさを感じます。

冒頭のこのセミッシラ島のオリンピック(?)トライアスロン(?)的な競技の部分で観客の心は一気に映画ワンダーウーマンの世界に引き込まれていきます。

この部分に15分以上を費やす大変贅沢な作りとなり、その後一気に1984年のアメリカに時代が移り、正義の人として戦い続けるワンダーウーマンの姿が描かれます。
  

6:基本に立ち返ったスタイル



オリジナルに忠実な部分もありますが、『ワンダーウーマン1984』ではパディ・ジェンキンス監督の思い切った決断も見て取れます。

まず、なんと言っても大きかったのがワンダーウーマンに剣と盾を持たせなかったことでしょう。

時系列的にはその後の物語にあたる『バットマンVSスーパーマンジャスティスの誕生』や『ジャスティス・リーグ』の二本の映画では剣と盾を持って登場しているため、整合性については若干気にならなくもないのですが、本来“ワンダーウーマン”の標準装備はティアラとブレスレットと“真実の投げ縄”だけです。

アクションのバリエーションからも映え方からしても剣と盾はあった方がいい部分もありますが、思い切ってオリジンに準じました。しかもそれがクライマックスにものすごく効いてくるのです。

7:大胆な構成の決断



もう一つ、これは途中で思わず時計を見てしまったのですが、なんと冒頭の顔見世以降1時間もの間、ダイアナはワンダーウーマンとしての姿を見せないのです。

それでも充分話を引っ張れると確信し、実際に引っ張ったパティ・ジェンキンス(脚本も兼任)の決断と演出力には素直に驚きを隠せません。

前作の成功もあると思われますし、オリジンの部分を省けるという2作目ならではの利点もあったと思いますが、物語の丁寧な種まきが1時間にわたって描かれ、それ以上の時間をもってさらに念入りかつダイナミックな回収が展開します。
  

8:絶妙なWヴィラン

 

今回のヴィランはマックス・ロードとチーターです。マックス・ロードは原作ではジャスティス・リーグのスポンサーであり、人の心を操ることが出きる能力があり、スーパーマンのマインドコントロールを狙うなどのかなりの武闘派キャラクターでした。

映画『ワンダーウーマン1984』では投資ビジネスを展開するビジネスマンとして登場します。一部の能力は原作から引き継いでいるものの、ガラッとイメージを変えてきました。

外見的には当時のトランプさんにそっくりです。まぁこのころのアメリカのビジネスマンは『ウォール街』のマイケル・ダグラスを見てわかる通りみんな同じような格好をしているんですけどね。ただ、あの髪形はどう見てもトランプさんです。

彼が手にする力とそれにまつわる事象が『ワンダーウーマン1984』の物語に大きなうねりをもたらせます。

9:もう一人のヴィランはフィジカル担当



もう一人のヴィランは女性ヴィランのチーター。原作の中でも特にフィジカルなバトルを展開するにはもってこいのキャラクターです。またその出自は『バットマンリターンズ』のキャットウーマンを思わせる部分があって、アメコミ映画ファンにはニヤリとさせます。

メンタルの部分とフィジカル部分でヴィランがちゃんと棲み分けされていてとても効果的な配置になっていました。

チーターを演じたチアクリスティン・ウィグは実はもうアラフィフなんですが、それを感じさせない弾けっぷりです。

チアクリスティ・ウィグに加えてマックス・ロードを演じた『マンダロリアン』『ゲーム・オブ・スローンズ』のペドロ・パスカル。ワンダーウーマンのガル・ガドットも含めてスーパースターという俳優が入っていないのもこれだけの大作ではかなりの冒険です。
 

10:スティーブ・トレバー、まさかの復活!?



キャストの中でいちばんのスターと言えばワンダーウーマンの永遠の恋人スティーブ・トレバーを演じたクリス・パインでしょう。リブート版の『スター・トレック』シリーズのカーク船長でお馴染みの彼が、再びワンダーウーマンの永遠の恋人スティーブ・トレバーとして登場します。

復活の仕組みについては映画全体の根幹にかかわってしまうので敢えて言いませんが、第一次世界大戦中に戦死したスティーブは確かに1984年のアメリカに戻ってきます。

ざっと70年の時間を飛び越えてやってくるわけですが、ダイアナ(=ワンダーウーマン)によって案内される1984年の社会にスティーブは驚くばかりです。このエピソードは前作でロンドンに来てカルチャーギャップに目をクルクルとさせていたダイアナの姿とダブって見えます。立場が逆転した二人の関係性のエピソードは前作からのファンをニヤリとさせます。

  

11:1984年が持つ意味とは?



そんなスティーブが目を白黒させる1984年ですが、SFファン、サブカルファンですとジョージ・オーウェルのデストピア小説『1984』がすぐに頭に浮かぶかもしれませんが、パティ・ジェンキンス監督自身はそこまで深い意味はないとも語っています。

実際の1984年のアメリカはレーガン大統領が再選を果たした年で、タカ派のレーガン大統領の再戦はソ連との冷戦に緊張感をもたらせました。この辺りは翌1985年公開の『ロッキー4』などを見るとよくわかります。スティーブ・ジョブズが初代マッキントッシュを発表したのがこの年で、ロサンゼルスオリンピックが開催された年でもあります。

緊張感と華やかさの両方があったのが1984年でした。映画で言えばターミネーターの一作目が公開された年で、当時の風景を見比べてみるのも面白いかもしれません。日本に関しては一つ大きなダウトがありましたが…。ちなみに日本では『ゴジラ』が復活したとしでもあります。

12:自由度を増したDC映画

 もともと映画化ではリードしていたDCでしたが、MCUの大成功を受けて、妙に焦ってDCEU=DCエクステンデッド・ユニバースをスタートさせますが、『バットマンVSスーパーマン』そして、勝負作『ジャスティス・リーグ』が興行・批評の両面で不調に終わりました。



この後どうするのかな?と思っていたところアメコミではお馴染みの平行世界の概念を持ち込むことにシフト変更。各作品については繋がりがあるようでないような形になり、個々の独立性が強まりました。それが昨年の『ジョーカー』に結び付き、周りのことも気にはしつつも、各々“自らの道”を推し進めることになりました。『ワンダーウーマン1984』はまさにその路線にある作品で、劇中に他のヒーローを感じさせる部分がほぼなくなっています。

実はこれがまたクライマックスのメッセージに結び付いています。

13:大画面向きのエンターテイメント大作



新型コロナウィルスの感染拡大によって公開が二転三転した本作。未だに映画館の営業の先行きが見えないアメリカでは映画館と配信の同日公開という異例の形になりました。今後の大作の公開スタイルなるかもしれません。実際ワーナー・ブラザースは今後一年間は劇場と配信のハイブリッドでいくという報道もありました。

そんなわけで、アメリカでは配信と同時ですが、日本でしっかりと劇場公開されます。

『鬼滅の刃無限列車編』以来の大画面IMAX劇場向けの作品とも言えます。

『ブラック・ウィドウ』『007ノー・タイム・トゥ・ダイ』などのハリウッド超大作が軒並み公開延期される中で、『ワンダーウーマン1984』はクリストファー・ノーラン監督の『TENETテネット』以来となる劇場で公開されるハリウッド超大作です。世界各地(エジプトや日本も登場)を転々とするので、絵面としてもパワーがあります。

ノーラン監督同様パティ・ジェンキンス監督も“劇場での映画体験”を重視するタイプの監督で、劇場で上映されてこそ本領を発揮する作品を作っています。

14:ガル・ガドットの魅力的なアクション



ここまで、パティ・ジェンキンス監督の熱量について語ってきましたが、もちろん何と言っても主演のガル・ガドットのワンダーウーマンのハマりっぷりを忘れるわけにはいけません。『バットマンVSスーパーマン』で数分間の登場ながらも映画を独りでさらって言った感のあったガル・ガドットは物語の主人公となってからも圧倒的な存在感を見せてくれました。ガル・ガドットはこの大役について「絶対にぶれない自分のワンダーウーマン演じきることを決めた」と語っています。

元ミスイスラエルで兵役経験もあるガル・ガドットはその恵まれたスタイルもあって、とにかくアクションが映えます。

今回のアクションコレグラフィーについてはシルクドソレイユのようだったと苦労を語っていますが、見事にこなしています。パティ・ジェンキンス監督は「007のようなリアルなアクションを目指した」とも語っています。
 

15:多くの意味を持つガシェット



バットマンやアイアンマンのようなメカニックタイプのヒーローでないワンダーウーマンですが、原作ファンならたまらない黄金の鎧と透明な飛行機と
いう映えるガシェットが登場します。

日本では聖闘士星矢のゴールド聖闘士に例える人もいますが、ワンダーウーマンの究極装備が黄金の鎧=ゴールド・アーマーです。

パイロットとしてのスティーブの見せ場であるとともに、クライマックスでのワンダーウーマンの色々な意味での飛躍へとつなげています。

ちなみに、このクライマックスでワンダーウーマンが一人、力強く走り出すシーンは70年代のテレビドラマ版を彷彿とさせます。また、前作の第一世界大戦の場面でノーマンズランドを駆け抜けるシーンとも重なります。

このように、中盤までに登場するエピソードやアイテムが重層的な意味を持って映画のクライマックスの布石になっています。しかもそれがその時には“段取りの一手”に見えない描かれ方をしているパディ・ジェンキンス監督の手腕は見事の一言です。

 

まとめ

ワンダーウーマンの超人ぶりはスーパーマンと並ぶほどですが、スーパーマンは超人ではあるものの思い悩む若者でもあります。一方ワンダーウーマンは見た目の若々しさとに反してじつは100年単位の人生経験の持ち主で、人間と世界のあり方を見てきた存在です。
超然とした存在であると同時に、とても豊かな感情を併せ持つ複雑なキャラクターでもあるワンダーウーマン。
『ワンダーウーマン1984』はそんな彼女が持つ“慈愛の精神”があったからこそ生まれたエンディングを見ることができます。

映画『ワンダーウーマン1984』は映画を撮っていたころには想像もしていなかった状況になりましたが、期せずして2020年末の今にとてもフィットしたメッセージに溢れた作品に仕上がっています。

(文:村松健太郎)

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