櫻坂46に未来は無いのか?|平手友梨奈脱退を経てできた新グループの展望を考察 #櫻坂46
2020年10月に開催された無観客配信ライブ「欅坂46 THE LAST LIVE」をもって、欅坂46としての活動を終了し、新たに活動をスタートした櫻坂46。改名後初となるシングル「Nobody's fault」もリリースされ、いよいよ心機一転、本格的に活動を開始させた。
そんな櫻坂46が年末の風物詩「第71回NHK紅白歌合戦」(NHK総合)に出場する。欅坂46時代を含めると出場は通算5回目ではあるが、改名後出場するのは初。本稿はグループの紹介がメインとなっているが、紅白歌合戦の見どころについても合わせて紹介していきたい。
櫻坂46とは?
欅坂46の活動休止に伴い、新たにグループ名を改称しスタートした櫻坂46。改名にあたり、渋谷駅前の街頭ビジョンで「櫻坂46」へと改名することが明かされるというサプライズ的な発表方法がとられ、SNSなどでは盛り上がりを見せたのは記憶に新しい。
単なるグループ名の変更に限らず、グループの方向性すらも一新され、先日発売されたシングル曲の数々でもこれまでとは違う櫻坂46の色が現れていた。特に顕著なのが、複数のセンターによる流動的なフォーメーションが挙げられる(詳細は次項で欅坂46時代の比較を通じて明らかにする)。
改名後まもなくして、10月19日からは「欅って、書けない?」(テレビ東京)に変わる冠番組「そこ曲がったら、櫻坂?」(テレビ東京)が放送開始され、12月8日には「櫻坂46 デビューカウントダウンライブ!!」が東京国際フォーラムで開催(無観客での開催)と息をつく暇もなく9日のデビューまで駆け足で進んできた彼女たち。
9日に1stシングル「Nobody's fault」がリリースされると、初週40.9万枚を売り上げ、「オリコン週間シングルランキング」で1位を獲得。2期生の森田ひかるがセンターの表題曲のMVは354万回(2020年12月17日現在)再生され、さらに藤吉かりんのセンター曲「なぜ 恋をして来なかったんだろう?」は411万回、山﨑天のセンター楽曲「Buddies」は156万回と順調な滑り出しを見せている。欅坂46を超えるグループを目指すべく、彼女たちの旅路はまだ始まったばかりだ。
櫻坂46と欅坂46のグループ比較
欅坂46時代には1stシングル「サイレントマジョリティー」から8thシングル「黒い羊」まで平手友梨奈がセンターを務め、作品の中心には平手が存在していた。平手を中心に欅坂46の世界観が強固に構築され、それはそれでグループの色として楽しむことができた。だが一方で、センターを固定化することにより、グループにある種の停滞感を生んだことは指摘しなければならない。
櫻坂46ではデビューシングルで森田ひかる、藤吉かりん、山﨑天の3人が各楽曲でセンターを務めるという複数人によるセンターを採用した。これによって、センターごとに特色の異なるバラエティ豊かな楽曲が並び、グループとしての幅も広がった感がある。
例えば、森田ひかるのセンター曲「Nobody's fault」は、デビューシングルの表題曲にもなっており、欅坂46時代の世界観を踏襲しているようなメッセージ性のある歌詞が特徴だ。
MVでは森田の鋭い眼光や勇ましい表情が光っている。藤吉かりんのセンター曲「なぜ 恋をして来なかったんだろう?」では、世界観がガラッと変わり、これまでの欅坂46にも見られなかった新たな王道恋愛ソングの形を提示。普段静かな印象のある藤吉とのギャップがさらに楽曲に深みをもたらしている印象だ。
そして最後、山﨑天のセンター曲「Buddies」は、最年少メンバーの山崎の将来性を見据えたかのような壮大かつ大規模な楽曲になっている。東京のビル群を背景にダンスを繰り広げる山崎は、決して最年少とは思えない圧巻のパフォーマンスを披露している。このように櫻坂46ではセンターを複数人とすることにより、表現形式にも幅が出てきた印象を受けた。
さらにもう一つ触れて置かなければならないのが、カップリングを含めた全ての楽曲に参加できる櫻エイトの(乃木坂46における福神)要素を持ち込んだことだろう。欅坂46では全員選抜がとられ、メンバー全員が表題曲に参加することができていたが、櫻坂46ではその中でも明確に優劣を与えている。
これは1〜2列目を選抜扱いにすることで選抜の意義をグループの内外に意識させ、パフォーマンスやモチベーションの向上をもたらすという意味合いが込められたものだろう。さらに、3列目を楽曲ごとに流動的にしたことで、これまでスポットが当たらなかったメンバーも、楽曲に参加できるという配慮もされている。
平手友梨奈を始めとした相次ぐメンバーの卒業とファンの離散
櫻坂46としてスタートを切った彼女たちだったが、改名に至るまでに多くのメンバーの卒業が相次いだ。その筆頭と言えるのが、平手の卒業だろう。8thシングルまで欅坂46のセンターとして圧倒的なパフォーマンスを披露してきた平手は2020年1月23日、突如脱退を発表。突然の一報ではあったが、以前から平手のメディアにおけるムラのあるパフォーマンスには賛否の声も多く見られており、なんとなくそんな予感をしていたファンの方は少なくなかっただろう。2020年9月に公開された『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』でも、9thシングルとしてリリース予定だった「10月のプールに飛び込んだ」のMV撮影を平手が欠席したことで、発売そのものが見送りになったことをメンバーに知らされるという場面があったように、グループ内部で平手を中心に不穏な空気が漂っていたことが映し出されていた。
さらに平手の脱退とともに、2020年は織田奈那や石森虹花といったメンバーがスキャンダルによって卒業を発表(鈴本美愉と長沢菜々香、佐藤詩織も同年に卒業)。ここではスキャンダルの正否については問わないが、これほどまでにスキャンダルが相次いだのは坂道グループの歴史を見ても異例の出来事と言えるだろう。
グループの中心である1期生の卒業が相次いだことで、事実上のグループ崩壊は免れないことは傍から見ても分かるほどだった。人気メンバーのスキャンダルに関わる卒業にファンからも失望の声は日に日に強く大きくなっていき、欅坂46運営に対する不信感はもとより、残されたメンバーに対しても懐疑的な目線が向けられるようになる。
本来はパフォーマンスが注目されるべきところをスキャンダル的な一面ばかりがフォーカスされつつ、ファンの離散も免れない状況のなか、欅坂46の運営が下したのは改名して再スタートをすることだった。櫻坂46へと改名と果たし、パフォーマンス面はもちろん、ファンの信頼を取り戻せるかというところも今後の焦点となるだろう。
櫻坂46と「紅白歌合戦」
櫻坂46としては今年で1回目の出場となるため、ここでは欅坂46時代の紅白をざっと振り返ってみたい。2016年の欅坂46はデビュー初年度にも関わらず、紅白の出場切符を手にした。それもそのはず、当時の欅坂46はアイドル界のみならず音楽業界にまで強烈なインパクトを残しており、誰もが彼女たちの出場を望んでいたのだ。この年はデビュー曲「サイレントマジョリティー」を披露し、お茶の間にも彼女たちの名を強烈に印象づけた。
そして2017年、欅坂46は後に代表曲として知られるようになる4thシングル「不協和音」をリリース。同曲は「サイレントマジョリティー」以降で作り上げたコンセプトをさらに推し進めた攻撃的な楽曲だ。この年は今泉佑唯の活動休止に始まり、平手友梨奈の不調など、グループの活動規模が増えていくにつれ、グループの中で不和が取り沙汰された次期だった。この年紅白で披露された「不協和音」は数人のメンバーが倒れる事態となり、不穏な空気のまま新年に突入する。だが、当時の平手の危うさをまとった鬼気迫るパフォーマンスはお茶の間を震撼させ、近年の紅白のなかでも印象に残るステージとなったのは間違いない。
2018年は平手が不在のパフォーマンスも増え、代わりに他のメンバーがセンターを務めることが多くなっていた。紅白では同年リリースされた新曲「ガラスを割れ」を披露し、小林由衣が怪我で休止していた平手の代わりにセンターに立ち、グループの底力を見せた。2019年は2年前のリベンジとして「不協和音」を再び披露し、2年前の雪辱を晴らして1年を締めくくった。ざっと振り返ってみても、当時のパフォーマンスがまるで昨日のことのように思い出される。
櫻坂46が紅白で披露する「Nobody's fault」の魅力
21日に紅白の曲目が発表され、櫻坂46は「Nobody's fault」を歌唱することが決定した。同曲は森田をセンターに、小林由依、渡邉理佐が脇を固めるという布陣で臨んでいる。MVは“自由への渇望と絆”をテーマに撮影され、メンバー全員で肩を組みながらこちら真っ直ぐ睨みつけるというシーンを始め、大自然を舞台にダイナミックなダンスが繰り広げられている。
「櫻坂46と欅坂46のグループ比較」の項でもさらっと同曲について触れたが、方向性としては欅坂46時代のメッセージ性の強さやパフォーマンス重視ということは継承しつつも、「どんなに深い森も一本の木が集まってできているんだ」「光と影は何度も重なり合い 大きな森になるのさ」といった団結力がキーワードになっている歌詞や自己内省的な歌詞の数々は、「過去を振り返るのではなく未来に向かって進んでいく」というこれからのグループのあり方を示唆しているようでもある。改名に対してネガティブなイメージがつきまとうはある種仕方のないことではあるが、それでもこの楽曲のように前へ進む彼女たちの意志をぜひ感じてほしい。
また今作でもダンスの振り付けは欅坂46時代からお馴染みのTAKAHIROが担当し、欅坂46の楽曲のオマージュが散りばめられているなど趣向を凝らしたダンスとなっている。欅坂46でも高いクオリティを誇っていたが、櫻坂46でも遺憾なく発揮されていた。綺麗に揃ったフォーメーションや高いダンススキル、楽曲の要所要所で見せる豊かな表情は、欅坂46で蓄積された経験の賜物だ。
これまでにも『FNS歌謡祭』(フジテレビ)など数々の歌番組で披露してきたが、カメラワークによって見栄えの良し悪しが決まってきそうな感じを受けたので、紅白ではこのあたりも気にしながら見ていきたい。
今後の展望
欅坂46改め櫻坂46として活動を始動させた2020年。平手を中心にパフォーマンス性を高めていった欅坂46。櫻坂46は複数のセンターにも見られるように、それぞれの個性を尊重し全員で一致団結していこうという心意気が強く感じられ、グループとしてより高いパフォーマンスが見られるのではないかと、時期尚早ではあるが期待感に溢れている。平手+他のメンバーという構図は溶解し、これまで以上にひとりひとりが注目されるグループになっていくことを願ってやまない。改名に際し、多くのファンから戸惑いの声も聞こえていたが、それを払拭するかのような活躍を期待したい。
(文:川崎龍也)
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