『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』の「5つ」の魅力を徹底解説!隠された父と息子の物語とは?
2:小五郎と蘭のキャラクター性
『名探偵コナン』を語るにおいて、キャラクターの魅力は欠かせません。本作では、特に毛利小五郎と毛利蘭、それぞれの特徴が初めて観る人にもわかりやすく、そして大好きになれるということも大きな魅力になっています。
江戸川コナンは序盤で早くも1つ殺人事件を解決していますが、ここで小五郎はコナンに「おっ、珍しく冴えてる」と思わせるも、実際は犯人もダイイングメッセージも勘違いしていました。アフターヌーンティーパーティーでも出題された謎を溶けませんでしたし、終盤でも白鳥刑事をも犯人と名指しし怒られてしまいます。劇中では小五郎は探偵としてはいいところがありません、
しかし、小五郎は子煩悩でありまともな倫理観を持った大人でもあります。娘の蘭が高校生なのにオールナイト上映に行くことに反対していますし、子どもの(と思っている)コナンに対しても爆弾を自身で何とかしようとしていたことに、その身を案じて怒っていました。終盤で娘の蘭を犠牲にしようとする真犯人に激昂し、よろめきながら助けに行こうともしていました。こうしたところで、ヘボ探偵だけど憎めない、大切な子どもを守ろうとしている父親としての小五郎というキャラクターが描けているのです。
そして、蘭は終盤まで事件に大きく関わっていませんでしたが、ビル内に閉じ込められた時に、近くにいた女性に「大丈夫よ、もうすぐ助けが来るわ」と声をかけていました。しかし、その直後に扉越しに工藤新一(コナン)の声を聞いた蘭は「何していたのよ。いつもいつも肝心な時にいないんだから。本当にいつも、いつも、わかっているの?私が今どんな目にあっているか……」と涙ながらに答えるのです。こうしたところから、彼女が自身よりも他者の気持ちを思いやる優しい性格と、それでいて不安に押しつぶされそうになっている深刻な想いが存分に伝わるのです。
それでいて、蘭は新一から爆弾を解体するように言われた時、「待って、電話しながらじゃうまくできないよ、今からそっちに行く」と、一歩間違えば死んでしまうその作業に全く躊躇をする素振りがありませんでした。この短い間に彼女の不安と、それを上回る「胆力」を描き切っているのです。
そして、最後に蘭が切ったのは時限爆弾の線は、「自分と(新一が)好きな色」の赤ではありませんでした。「赤い糸は新一とつながっている」からこそ、それを切りたくないと思ったのです。序盤にコナンが「少女趣味」と快く思っていなかったその蘭の価値観を肯定し、そして蘭の新一への一途な愛情をも示すこの作劇は、見事と言う他ありません。
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