映画コラム
『ディエゴ・マラドーナ 二つの顔』レビュー:稀代のサッカー選手の光と影の記録
『ディエゴ・マラドーナ 二つの顔』レビュー:稀代のサッカー選手の光と影の記録
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
20世紀後半より世界的な人気を誇ったアルゼンチン出身のサッカー選手で、昨年11月25日に亡くなったばかりのディエゴ・マラド-ナの栄枯盛衰を描いたドキュメンタリー映画。
1960年にアルゼンチンのブエノスアイレス南部ラヌースで生まれた彼は、16歳3か月の最年少記録でアルゼンチン代表デビューし、地元で大活躍を続けていきます。
しかし1984年、コパ・デル・レイ戦決勝戦で大乱闘を起こして会長など幹部との関係性が悪化したことを機に、彼はイタリア南部のSSCナポリに移籍。
瞬く間に弱小だった同チームの輝く星となって大活躍を続ける彼は、87年にはビル壁面に巨大な肖像画が描かれるに至ります(一方では、愛人が生んだ子を認知するか否かの騒動も)。
しかし90年代に入ってマフィアとの関係性やコカイン使用などが暴露され、やむなくアルゼンチンへ帰国するも……。
純粋にサッカーを愛する“ディエゴ”。
マスコミを騒がせるダークな“マラドーナ”。
本作は稀代の天才サッカー選手の、二面性の際立ちにこそ焦点を絞って描いていきます。
「光が濃いと闇も濃くなる」とはよくいうものの、スーパースターであればあるほどその濃淡も際立っていくという、人生のはかなさまで巧みに醸し出しています。
監督は『アイルトン・セナ~音速の彼方へ』(10)で英国アカデミー賞ドキュメンタリー賞、『AMY エイミー』(15)でアカデミー賞ドキュメンタリー長編賞を受賞したアシフ・カパディア。
およそ500時間もの貴重な秘蔵映像を基に、何とマラドーナ本人が完全協力して作り上げた作品であるという事実もまた、このスーパースターの特異性を物語っているようです。
(文:増當竜也)
『ディエゴ・マラドーナ 二つの顔』作品情報
ストーリー
1984年、世界的な人気を誇るアルゼンチン出身のサッカー選手ディエゴ・マラドーナは、熱狂的な観客が集うイタリア南部の弱小チーム“SSCナポリ”に移籍する。フィールドの上では“神の手”&“5人抜き”と話題を集めたメキシコワールドカップ優勝や、チームを史上初のセリエA優勝に導くといった実績により、スーパースターとして崇められる一方で、プライベートではマフィアとの交際、愛人とのスキャンダル、コカインでの逮捕など、トラブルメーカーとして忌み嫌われることに。やがて、サッカーを愛するピュアな“ディエゴ”と、マスコミを騒がせるダークな“マラドーナ”という、相反する二つの顔が浮かび上がってくる……。予告編
基本情報
出演:ディエゴ・マラドーナ ほか監督:アシフ・カパディア
製作国:イギリス
製作年:2019
公開年月日:2021年2月5日
上映時間:130分
製作会社:On The Corner Films
配給:ツイン
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