映画コラム

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2021年05月01日

緊急事態宣言の措置への怒り|それでも、映画館が必要な理由

緊急事態宣言の措置への怒り|それでも、映画館が必要な理由



2021年4月25日から5月11日までの緊急事態宣言にて、東京、大阪、京都、兵庫の4都府県における大型商業施設やテーマパーク、そして映画館への休業が要請され、多くの場所が実際に閉鎖となりました。

このことについて、映画ファンや映画関係者からは不満、いや怒りの声が続出しています。その具体的な内容については、以下の記事も参照してください。

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主な争点は「感染のリスクが少ない映画館に休業の必要はない」「現場を考えていない宣言発出の無神経なタイミング」「他県へと人が流れる可能性もあり本末転倒」「協力金があまりに微々たるもの」などでしょう。それらに加えて、そもそもの「文化・芸術は不要不急ではない」「映画館という場所が必要な理由」というポイントからも、映画ファンの1人としての主張を述べます。

文化・芸術は不要不急ではない

「不要不急」という言葉が、このコロナ禍で何度も持ち出されました。ライブや映画などのエンターテインメント、ひいては文化・芸術が、これによりまるで「悪者」にされてしまったかのような印象さえ持ちます。

しかし、コロナ禍でこそ、エンターテインメントおよび文化・芸術は、重要視されるべきです。作家であり数々の映画化作品で知られるスティーブン・キングも、2020年4月にこのような訴えをしています。



「If you think artists are useless, try to spend your quarantine without music, books, poems, movies and paintings」

「もし、あなたがアーティストたちが役に立たないと思っているなら、コロナ禍で音楽、本、詩、映画、絵画なしで過ごしてみるといい」

人は、食べ物や住む家などの、物質的なものだけで生きているわけがありません。

むしろ、コロナ禍で長く苦しみ悩むからこそ、何かの学びが得られる物語や、感動できる音楽が救いになったという方は多いでしょう。

「あの作品のおかげで勇気をもらった」

「この週末に観る、楽しみにしていた映画のためにがんばろう」

と思ったことのある方も少なくはないはずです。

文化・芸術はコロナ禍では不要不急どころか、今この瞬間に生きるのに必要不可欠なものなのです。もちろん、それを提供してくれるアーティストたちも。

映画館という場所が必要な理由

「映画館が閉鎖されても家で映画を観ればいいじゃないか」と主張する方もいるかもしれません。映画ファンの1人として、このことには異を唱えます。なぜなら、映画はそもそも家で鑑賞するために作られてはいないのです。

もちろん、NetflixやAmazonプライムビデオの配信サービスを利用して、家で映画を鑑賞ことも良いものです。

しかし、今までにないアクションと音の演出で楽しませてくれた『TENET テネット』を大迫力のスクリーンで観られたことを心から感謝した方。アカデミー賞長編アニメーション賞と作曲賞を受賞した『ソウルフル・ワールド』を「配信ではなく映画館で観たかった」と思った方も多かったでしょう。

「家ではなかなか映画を集中して観られない」と思ったことがある方も多いでしょう

映画は、演出や音響、テンポ、観客に与える情報などが、劇場というハコで、集中して観るために「設計」されたエンターテインメントであり芸術
です。

映画館は「その場所へ足を運ぶ」「同じ時間に同じ空間で集まった人たちの中で観る」「観終わった後の余韻」といった「体験」を与えてくれます。たくさんの娯楽や映像が溢れている世の中だからこそ、1つのコンテンツを最大限に楽しむ方法を選びたい、その「特別」を味わい尽くしたいのです。

映画を最も正しいかたちで楽しむための、映画のために作られた映画館は、絶対になくしてはならないのです。

本来であれば讃えられるべき場所

日本の映画館はもともと厳格なレギュレーションによる換気が義務付けられており、1回目の緊急事態宣言解除後から約1年に渡って徹底した感染症対策がされ、厳しい状況でも営業を続けていました。

実際に日本の映画館でのクラスターの報告は一度もありません。世界中で映画館が閉鎖を続けていた中で、これは誇るべき事実です。

『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』や『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の大ヒットは、コロナ禍で大ダメージを受けた日本経済に少なからず貢献したでしょう。日本の映画館は本来であれば国から感謝をされ讃えられるべき、コロナ禍でも楽しめる娯楽施設として推奨されてもよいほどです。

しかし、実際には一方的に休業をさせて、ただ映画業界へダメージを与えて苦しませるばかりです。

一万歩譲って映画館を閉鎖する理由を「人流をとにかく減らしステイホームをしてもらうため」だとしても、雀の涙以下の協力金では全く納得できません。

これまでの映画館側の感染対策、映画配給会社の宣伝、そうした多方面の努力は、根拠のない措置によって、踏みにじられました。この状況下で、人流を生む聖火リレーが継続されているというのは、いったい何の冗談なのでしょうか。

それ以前でも、コロナ禍における文化・芸術への国からの支援の欠如には呆れ返るばかりです。全国のミニシアターを応援するためのクラウドファンディングであるミニシアター・エイドには3億3000万円を超える金額が集まりましたが、それは国が支援をするべきもの、国として当たり前のことであったはずです。

事実、ドイツやイギリスなどの諸外国では、危機的状況が続く施設やアーティストのために、2020年の段階で莫大な金額で支援をしています。一方で、日本ではコロナ禍において休業した映画館の支援はない、もしくは微々たる金額しか提示されていないのです。

できる限りのことをする

この理不尽な状況で映画ファンにできることは、開いている映画館で映画を観ることでしょう。

『アーヤと魔女』や『ヒノマルソウル 〜舞台裏の英雄たち〜』など公開延期となった映画も相次ぎましたが、その直前より上映開始された『名探偵コナン 緋色の弾丸』と『るろうに剣心 最終章 The Final』は、この状況下でも健闘、いやそれ以上の大ヒットをしています。

※以下の記事もご参考にしてください。
緊急事態宣言直撃、『るろうに剣心 最終章 The Final』のこれから

また、『ビーチ・バム まじめに不真面目』は一部劇場にて4月30日より予定通り公開中、『ジェントルメン』も5月7日より公開をするべく準備が進められている(それでも延期または中止の可能性もあり)との報もあります。




そして『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』は、緊急事態宣言明け当日の5月12日に公開日が決定、初日舞台挨拶(無観客)の実施、全国生中継も決定しました。担当者さんの「これ以上、絶対に延期させない」という強い意志を強く感じます。



もちろん、感染状況が深刻であること、県外への移動は控えるべき、対策もこれまで以上にするべき、ステイホームが推奨されることに異論はありません。しかし、やはりお近くの映画館で観られる方は、観て欲しいと心から願います。

緊急事態宣言中も営業を継続しているミニシアターもあります。映画館に行けない方も、緊急事態宣言の解除後に、ぜひ足を運んでください。映画館という文化の火は、絶対に消してはなりません。

それが、この愚かしい措置に対する、せめてもの抵抗です。

緊急事態宣言により休業する映画館一覧(&営業する映画館一覧)

(文:ヒナタカ)

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