『未来へのかたち』レビュー:砥部焼をモチーフに家族の絆の再生を図るヒューマン映画
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『未来へのかたち』レビュー:砥部焼をモチーフに家族の絆の再生を図るヒューマン映画
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
※『未来へのかたち』は休業中の映画館(東京都・大阪府・京都府・兵庫県の該当劇場)を除き、予定通り5月7日(金)に公開する予定です。
およそ240年の歴史を誇る愛媛県砥部(とべ)町の砥部焼に従事する主人公(伊藤淳史)とその家族、そして巌窟な父(橋爪功)や兄(吉岡秀隆)との長年にわたる確執を通じて、家族の絆の尊さをウエルメイドに描いたヒューマン・ホームドラマの佳作です。
彼らが砥部焼で挑戦するのがオリンピック聖火台ということで、一瞬タイアップ映画みたいなものかと思いましたが、そういった懸念はストーリーの流れと共にどんどん払拭されていき、いつしか家族のドラマ一色に集約されていきます。
伊藤淳史と内山理名をデビュー当時からずっとTVや映画で見続けてきた側としては、今回ふたりが思春期の娘を持つ親を演じていることに月日の流れを痛感させられましたが、その娘・萌(桜田ひより)がさりげなくも大きな鍵となって、ギクシャクしまくりの父と子、兄と弟の関係性を融和していく構成にも無理がなく、好もしいものを感じさせてくれます。
その意味でも今回特筆すべきほどに初々しく好演している桜田ひよりですが、彼女は『男はつらいよ おかえり寅さん』で満男=吉岡秀隆の娘を演じており、また橋爪功は『家族はつらいよ』シリーズなど山田洋次監督作品の常連となって久しいところからも、この作品、どこかしら山田作品と精通するヒューマニズムまで感じられてなりません。
(そういえばこの作品の吉岡秀隆は、まるで寅さんのように長年家を出たっきりだったのがひょっこり帰ってきたのでした)
前半頑固一徹だったおじいちゃんが後半、孫娘の一言一言にニヤリと反応していくあたりも、本当はずっと前からそうしたかったのだろうなあと、微笑ましい気持ちにさせられます。
大森研一監督は愛媛県砥部町の出身で、本作も地元を舞台にしたミュージカル劇を映画へ発展させたものですが、こうした地域密着型映画人としての姿勢は、日本全国同じように活動する人々の意欲を奮起させるものもあることでしょう。
P.S.主人公の工房で働くアルバイト青年を演じるのが飯島寛騎ということで、「『仮面ノリダー(チビNORIだー)』と『仮面ライダーエグゼイド』の夢の共演!」などと、映画そのものとは全然関係ないところでも勝手に盛り上がってしまった、特撮ヒーロー好きな私です……。
(文:増當竜也)
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