2021年06月19日

【知恵と工夫】特撮が無くとも面白いSF/ファンタジー映画は作れる!|『夏への扉ーキミのいる未来へー』『サマーフィルムにのって』『星空のむこうの国』etc…

【知恵と工夫】特撮が無くとも面白いSF/ファンタジー映画は作れる!|『夏への扉ーキミのいる未来へー』『サマーフィルムにのって』『星空のむこうの国』etc…


『夢幻紳士 人形地獄』『星空のむこうの国』1980年代の21世紀的復権


(C)高橋葉介・早川書房・ビーチウォーカーズコレクション

海上ミサコ監督の『夢幻紳士 人形地獄』(6月26日公開)は、1982年より連載開始された高橋葉介の伝説的カルト漫画、初の実写映画化となります。

回によってコミカルだったりグロテスクだったりシュールだったり、実にバラエティ豊かな原作エピソードの中、選ばれた「人形地獄」は特撮技術をほぼ必要としない内容ながらも「人形」というアイテムによって妖艶なダーク・ファンタジーとしての雰囲気が濃厚に醸し出されている優れもので、海上監督が数十年も前から映画化を切望していたものでもあります。


(C)高橋葉介・早川書房・ビーチウォーカーズコレクション

また原作では少年の設定だった主人公探偵・夢幻魔実也を、映画化に際しては青年探偵(皆木正純)に変更していますが、これは「人形地獄」が現在収められている単行本「夢幻紳士 怪奇編」の他のエピソードの魔実也が青年であることともさながら、海上監督の長年イメージしてきた魔実也がこうであったという解釈のほうが正しいのかもしれません。

インディペンデント制作の作品ではありますが、美術や小道具の用い方などで絢爛豪華ながらも幽玄な雰囲気はしっかり保たれており、また市川崑監督の金田一耕助シリーズなど70年代後半から80年代初頭にかけての猟奇ミステリ映画の味わいも感じられる作品です。



(C)2021「星空のむこうの国」製作委員会

さて、1980年代といえば、日本で特撮をさほど必要としないジャンル・ジュヴナイル映画が勃興した時期でもあります。

その始まりは大林宣彦監督の『転校生』(82)あたりかと思われますが、自主映画界の先達でもある大林監督の後輩にあたる小中和哉監督ら当時の自主映画界で活躍していた若手たちの多くは、1970年代の「NHK少年ドラマシリーズ」の洗礼を受けた世代でもありました。


(C)2021「星空のむこうの国」製作委員会

そんな小中監督が、自分たちの「NHK少年ドラマシリーズ」を、即ち自分たちが見たい映画を作ろうではないかという意気に燃えて製作したのが1986年に公開された『星空のむこうの国』で、これが当時の映画ファンから多大な支持を受けたことをきっかけに、本作関係者の多くはプロの世界へ躍り出ていきます。

そして35年の月日が経ち、小中監督ら当時のスタッフで2021年版『星空のむこうの国』が完成し、7月16日に公開されることになりました。


(C)2021「星空のむこうの国」製作委員会

自分が死んだことになっているパラレルワールドに迷い込んだ主人公の高校生・昭雄(鈴鹿央士)が、その世界の病弱な恋人・理沙(秋田汐梨)のためにシリウス座流星群を見せてあげるべく病院を抜け出すという基本ストーリーはどちらも同じですが、この後の展開が……(それは見てのお楽しみ!)。

1986年版と違って今回は流星群のシーンなどCGがふんだんに使われてはいますが、やはり基本は素朴なジュヴナイルSFファンタジー。

双方をリアルタイムで見ることのできた私のような世代としては瑞々しい印象が何ら変わることなく、その一方では今の時代を疾走する若手キャスト陣の存在感によって、また新しい『星空のむこうの国』が生まれたという嬉しき実感もあります。


(C)2021「星空のむこうの国」製作委員会

さらには1986年版でヒロイン理沙を務めた有森成実が今回は理沙の母親役で出演し、どこかしら娘を応援している風情から、双方の作品が彼女を通じてリンクしているかのような想いでもあるのでした。

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(C)2021 映画『Arc』製作委員会/ (C)2021「夏への扉」製作委員会/(C)高橋葉介・早川書房・ビーチウォーカーズコレクション/(C)2021 GENYA PRODUCTION ROBOT REPAIRBOY/ (C)2021「星空のむこうの国」製作委員会/(C) 2021「サマーフィルムにのって」製作委員会

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